慢性腎不全患者における最大の死因は心血管系合併症であり,その機序として動脈石灰化が注目されている.また近年,ビタミンK(VitK)の血管石灰化予防効果が報告されている.しかし,尿毒症下での血管石灰化機序とVitKの役割はいまだ不明な点が多い.そこで活性型ビタミンD3(VitD
3)誘導血管石灰化腎不全モデルを作成し,腎不全病態下におけるVitK
2の血管石灰化抑制作用を
in vivoで検討した.方法として,8週齡SD rat(雄)にadriamycin(ADR)により腎障害を作成,週3回のVitD
3 1.0μg/kg i.pにより大動脈中膜石灰化を誘導した.実験群は:ADR単独投与群(n=11),ADR+VitD
3投与群(n=13),ADR+VitD
3+VitK
2(100mg/kg/day混餌)投与群(n=11),ADR+VitK
2投与群(n=5)とした.第23週にsacrificeし,血液生化学検査と大動脈石灰化を組織学的に評価した.さらにreal time RT-PCRにより大動脈のosteopontin(OPN),matrix gla-protein(MGP)mRNAの発現を検討した.結果は,VitD
3投与によりADR投与ratに石灰化が誘導されたが,VitK
2による血管石灰化の組織学的な抑制効果は認められなかった.ADR投与群において血清CaおよびCr値はVitD
3を投与した群で上昇,VitK
2はCa,Cr値に影響しなかった.VitD
3によりOPN mRNAの発現が増加し,MGP mRNA の発現が抑制される一方,VitK
2によりMGP mRNAの発現が増加すると同時にOPN mRNAの発現が抑制された.よって,腎障害ratの動脈石灰化において,VitK
2はOPNおよびMGP mRNAの発現に影響を与え,石灰化を抑制する方向に作用する可能性が示唆された.
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