昭和医学会雑誌
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69 巻 , 2 号
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最終講義
総説
  • 森 知里, 山崎 謙, 三枝 超, 前田 昭彦, 相楽 光利, 関原 力, 伊藤 亮太, 村上 悠人, 扇谷 浩文
    2009 年 69 巻 2 号 p. 131-142
    発行日: 2009/04/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    藤が丘病院においては昭和60年より先天性股関節脱臼に対して超音波検査を応用してきた.超音波検査の中でも先天性股関節脱臼に対する代表的な検査法であるGraf法を従来施行して来たレントゲン・関節造影・CT検査と比較し,また治療結果との関連から従来の検査方法に換わるものと考え研究を進めてきた.そしてこれらの結果から今日では当院においては従来の検査を極力省略して殆どを超音波検査によって施行している.今回,Graf法1)に基づいた当院での検査と治療への応用について述べる.Graf法ではType I~IIa+はそのまま経過観察,Type IIa-,IIbは引き続きGraf法での経過観察とし,Type IIcの不安定型以降はRb(リーメンビューゲル,以下Rb)による治療を開始する.Type IVは一般的には手術適応となるが,当院ではまず牽引療法を行ってType IIIに移行するものはRb治療とし,Type IIIに移行しないものはしばらく牽引療法を施行したのちにRb治療を行い,それでも整復できないものに対して手術を施行する.これによりType IVの10%近くはRbで整復される.Rbによる治療過程においては前方からのアプローチにて整復状態を確認している.以上,診断と治療について当院ではプロトコールを作成し,臨床に応用している.
原著
  • 村島 一平, 神 與市, 平泉 裕, 宮岡 英世, 山本 剛, 立川 哲彦
    2009 年 69 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2009/04/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    要約:腰部脊柱管狭窄症は高齢化社会において,日常生活における活動性を低下させる大きな要因として重要な位置を占めている.その主病変の一つである変性黄色靭帯内では,炎症・骨化・血管新生・軟骨変性・石灰沈着などの変化が起こっているとされる.今回われわれは術中採取した変性黄色靭帯を用い,組織学的に比較的正常に近い部位(unaffected portion)・正中部に近く病変の強い部位(interlaminar portion)・関節包側の骨付着部に近く病変の強い部位(capsular portion)の3箇所に分け,上記変化に関連があるとされる各種遺伝子(cyclooxygenase-2(COX2)/osteocalcin/endothelin-1/angiopoietin-1/bone morphogenetic protein-2(BMP2)/interleukin-8(IL-8))につきmRNA発現量を評価し比較を行った.術中採取した黄色靭帯よりクライオスタットを用い7μmの凍結切片を作製し,HE染色を行い組織像を確認した.メンブレン凍結切片にCresylViolet染色を行った後,各部位におけるmicrodissectionを行いmRNAを抽出した.cDNAを複製し,各種遺伝子に対するプライマーと反応させrealtimePCR法を行い発現量の比較を行った.unaffected portionにおいてはどの遺伝子も発現量は少ないと予想されたが,他部位に比し血管新生に関連するIL-8の発現を高く認めた.正常に近いと思われた部位においても微細な損傷に対する修復機構が働いており,搬痕化や膠原線維の蓄積につながっていくと考えられる.またinterlaminar portion・capsular portionにおいてもIL-8の発現を認めたが,血管新生はinterlaminar portionでより強く誘導されているものと考えられた.mechanical stressに関連するendothelin-1はcapsular portionで高く発現を認め,それに伴い活動的な変化を示す事が予想されたが,軟骨変性・骨化や炎症に関連する各種遺伝子についてはinterlaminar portion・capsular portionともに種々の程度に発現が見られた.変性黄色靭帯においては,骨付着部における内軟骨性骨化のみならず,骨との連続性のない部位においても骨形成に伴う肥厚がおこっていると考えられた.
  • 諸冨 伸夫, 小野 玄, 長澤 敏恵, 吉岡 尚美, 川手 信行, 水間 正澄
    2009 年 69 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 2009/04/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    リハビリテーション(以下,リハ)医療は診療科主治医,リハ科医師,セラピスト,看護師等のチーム医療として総合的に行うものである.リハ実施の際にはリハ総合実施計画書(以下,計画書)の作成が必須であると厚生労働省から指導されているが,当院における計画書の作成状況は把握できていない.そこでまず当院における計画書の作成状況を把握し,またその作成数を向上させることを目的として介入した.対象は2007年11月から2008年5月までに当院の入院病棟・中央病棟または昭和大学附属東病院に入院中に診療科主治医よりリハ科依頼のあった患者のうち再診および嚥下障害評価を除いた424件である.これを2007年12月20日に開催された病院連絡会で,計画書の作成依頼を行った前後で2つ(介入前群,介入後群)に分類した.さらに介入の効果を短期的・長期的に評価するため,介入後群を介入後—前期群,介入後—後期群に分類し,3群とした((1)介入前群:調査期間2007年10月29日~2007年12月28日,総依頼件数155件,(2)(1)介入後—前期群:調査期間2008年1月4日~2008年2月25日,総依頼件数121件,(2)介入後—後期群:調査期間2008年2月26日~2008年4月30日,総依頼件数148件).評価項目は(1)3群内の病棟内訳,(2)計画書の作成数,(3)診療科主治医名の記載数とした.(1)3群内の病棟内訳には有意差を認めなかった.(2)計画書の作成数は,介入後—前期群では介入前群と比較して有意に増加した(92/155 件(59.4%) vs 93/121件 (76.9%))(P=0.002).介入後—前期群と介入後—後期群の間には差を認めなかった.(3)診療科主治医名の記載数は,介入後—前期群では介入前群と比較して,有意ではないが増加した(40/92件(43.5%)vs 51/93件(54.8%)).介入後—前期群と介入後—後期群の間には差を認めなかった.当院における計画書作成数は不足しており診療科主治医の理解も不十分であった.また介入により短期的に計画書の作成状況は改善したが,長期的に改善することはなく当院におけるリハへの意識は低いことが示唆された.今後は当院の状況に合った計画書の使用方法を検討し,リハに対する理解が深まるようにしたい.
  • 市川 麻樹子, 佐々木 勝己, 森川 賢一, 石井 誠, 井廻 道夫, 川内 章裕
    2009 年 69 巻 2 号 p. 156-165
    発行日: 2009/04/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    超音波診断装置下の穿刺手技は消化器領域で重要な役割を果たしてきた.近年,4Dプローブのアプリケーションが増え,診断・治療への応用の可能性が出てきた.2D 観察下での穿刺針と標的の位置関係は,2D画面の厚み方向ではわかりづらい.穿刺加療時に,穿刺針と周囲臓器の位置関係や,標的腫瘍での穿刺針挿入部位を知る事は大切である.通常の3D-MPR表示上では,穿刺施行時に深部方向で穿刺針の位置確認が不十分な為,4Dプローブのアプリケーションでの穿刺支援における有用性を検討した.超音波診断装置は,GE横河メディカルシステム株式会社Logiq 7 BT 07,プローブは4D3CLを使用した.穿刺針は展開型RFA針を用い,実験にてリアルタイム4D下の穿刺シミュレーション施行後,治療に用いた.穿刺時は,tomographic ultrasound imaging(TUI)を使用した.擬似腫瘍焼灼をTUIを用い,C-planeを観察しながら行ったところ,深さ方向での焼灼の領域が観察可能であった.次に臨床例にて,HCCに対し4D下でRFAを行った.穿刺針が到達した面,肝内での展開された針の位置,HCC全体が展開された針でカバーされているかをリアルタイムに観察することができた.また,腫瘍焼灼後には焼灼された高エコー域が元の腫瘍全体をカバーしているかどうかの確認も可能であった.リファレンス画面のA面と,穿刺針と直交する多断面C面をリアルタイムに観察し,より安全性・治療の確実性を高めることが可能となった.今回,われわれは,GE横河メディカルシステム(株)のLogiq 7 BT 07で,4Dプローブを用い,TUI表示を使用してリアルタイム3D(4D)下の穿刺手技のプロトコールを作成した.これにより,これまで以上に穿刺手技の安全性と確実性を高めることが可能であると考えられた.
  • 油井 健史, 大嶋 健三郎, 洲崎 春海, 門倉 義幸
    2009 年 69 巻 2 号 p. 166-173
    発行日: 2009/04/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    内科的治療に抵抗する高度な二次性副甲状腺機能亢進症(secondary hyperparathyroidism,以下SHPT)に対して行われる副甲状腺摘出術(以下PTx)は透析患者のQOLを改善させるばかりでなく,生命予後の改善に寄与する.今回われわれは,2001年4月から2008年11月迄にSHPTに対する外科治療を行った220例の手術成績と問題点について検討した.内訳は初回手術症例205例,初回手術後の再発に対して救済手術を行った症例16例であった.この救済手術症例16例のうち15例は他院で初回手術が行われていた.初回手術例205例の男女比は107:98であり,年齢は18~82歳(平均56.2±11.3歳)であった.術前透析期間は1~33年(平均13.7±6.6年)であり,術前のintact-parathyroid hormone(以下i-PTH)値は233~2616pg/ml(平均836±354.4pg/ml),術直後のi-PTH値は2~622pg/ml(平均36.1±76.9pg/ml)であった.初回手術例の術後成績をi-PTHで評価すると,副甲状腺全摘群(術直後i-PTH≦60pg/ml)177例86%,持続性SHPT群(i-PTH>60pg/ml)28例14%であり,5年生存率は96.7%であった.一方,問題点は初回手術後に生じる持続性SHPT症例,頸部や縦隔に再発した症例,前腕移植腺再発症例の取り扱いであった.持続性SHPT症例28例のうち1例に対して再手術を行い,27例に対しては内科的治療を行って全例とも制御した.頸部や縦隔に再発した7例に対して頸部再開創手術を行い,全例でi-PTHの制御が可能であった.前腕移植腺再発症例9例に対して移植腺切除術を行った.複数回の手術を7例に行ったが,二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドラインのi-PTH推奨値180pg/ml以下に低下しない症例を7例認めた.以上より,全220例中7例が制御困難となった.制御困難となった症例はいずれも移植副甲状腺が生体内で播種し,全摘出が困難になったことに起因すると考えられた.二次性副甲状腺機能亢進症を制御するためには初回手術時に過剰腺を念頭に置き,副甲状腺を確実に全摘することに加え,初回手術時の移植方法を再考する必要がある.
  • 加藤 徳介, 渡辺 誠, 黒木 亜紀, 小椋 陽介, 杉崎 徹三, 秋澤 忠男
    2009 年 69 巻 2 号 p. 174-181
    発行日: 2009/04/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者における最大の死因は心血管系合併症であり,その機序として動脈石灰化が注目されている.また近年,ビタミンK(VitK)の血管石灰化予防効果が報告されている.しかし,尿毒症下での血管石灰化機序とVitKの役割はいまだ不明な点が多い.そこで活性型ビタミンD3(VitD3)誘導血管石灰化腎不全モデルを作成し,腎不全病態下におけるVitK2の血管石灰化抑制作用をin vivoで検討した.方法として,8週齡SD rat(雄)にadriamycin(ADR)により腎障害を作成,週3回のVitD3 1.0μg/kg i.pにより大動脈中膜石灰化を誘導した.実験群は:ADR単独投与群(n=11),ADR+VitD3投与群(n=13),ADR+VitD3+VitK2(100mg/kg/day混餌)投与群(n=11),ADR+VitK2投与群(n=5)とした.第23週にsacrificeし,血液生化学検査と大動脈石灰化を組織学的に評価した.さらにreal time RT-PCRにより大動脈のosteopontin(OPN),matrix gla-protein(MGP)mRNAの発現を検討した.結果は,VitD3投与によりADR投与ratに石灰化が誘導されたが,VitK2による血管石灰化の組織学的な抑制効果は認められなかった.ADR投与群において血清CaおよびCr値はVitD3を投与した群で上昇,VitK2はCa,Cr値に影響しなかった.VitD3によりOPN mRNAの発現が増加し,MGP mRNA の発現が抑制される一方,VitK2によりMGP mRNAの発現が増加すると同時にOPN mRNAの発現が抑制された.よって,腎障害ratの動脈石灰化において,VitK2はOPNおよびMGP mRNAの発現に影響を与え,石灰化を抑制する方向に作用する可能性が示唆された.
  • 小久保 羊介, 山縣 文, 太田 晴久, 富岡 大, 峯岸 玄心, 三村 將
    2009 年 69 巻 2 号 p. 182-189
    発行日: 2009/04/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    うつ病患者の3割程度は薬物治療抵抗性を示すといわれており,うつ病における薬物療法の治療効果と関連するさまざまな要因が知られている.本研究では,未治療の大うつ病患者の薬物治療反応性を初診時の近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)により予測しうるかを検討した.対象は初診時に大うつ病性障害と診断された患者32名(男性12名,平均年齢48.1±17.8歳).初診時(治療前),全例に52チャンネルのNIRSを用い,語流暢課題を遂行中の前頭葉の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)値の測定を行った.また,初診時と抗うつ薬による薬物療法開始後8週~12週の2時点で,ハミルトンうつ病評価尺度(HRS-D)による症状評価を行い,2時点目のHRS-D得点が7点以下となった例を反応良好例,2時点目のHRS-D得点が初回の半分以下にならなかった例を反応不良例とした.反応良好例と反応不良例について,治療前のoxy-Hbの変化をチャンネルごとに比較した.32名中,4名が2時点目で診断変更となり,除外した.2時点目の症状評価において13名が反応良好群,9名が反応不良群となった.治療前における両群のNIRS所見の比較では,反応良好群では標的課題遂行中の前頭領域におけるoxy-Hb値の増大がむしろ反応不良群と比較して小さく(hypofrontality),一部のチャンネルで有意な差を認めた.さらに,長期経過において,反応不良群においてのみ,さらに3名が診断変更となった.治療反応良好群では,うつ病患者に典型的なNIRS所見として従来報告されているhypofrontalityを認めたが,反応不良群のNIRS所見はむしろ健常者と類似していた.初診時に操作的診断基準で大うつ病性障害と診断されても,NIRS所見で明らかな前頭前野のoxy-Hbの減衰を認めない場合,薬物療法の効果が限定的であり,病像も非典型的である場合があると推測された.治療前のNIRS反応性がうつ病の治療予測に有用である可能性が示唆された.
臨床報告
  • 綾木 雅彦, 谷口 重雄, 小出 良平
    2009 年 69 巻 2 号 p. 190-193
    発行日: 2009/04/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    点眼薬による副作用にはアレルギー反応や角膜障害などがある.われわれはトスフロキサシン点眼の使用直後に角膜沈着物や虹彩炎を生じた症例を3例経験したので報告する.症例1は88歳女性で,角膜上皮剥離に対しトスフロキサシン点眼1日3回処方した.翌日角膜に白濁が出現したとのことで受診し,角膜上皮剥離部分に白色沈着物を認めた.病変の掻破によって軽快した.症例2は78歳男性で,ヘルペス性角膜潰瘍でトスフロキサシン,アトロピン,ヒアルロン酸を処方したところ,1か月後の再診時,白色沈着物を認めた.点眼中止によって軽快した.症例3は75歳女性で結膜炎に対しトスフロキサシンを処方したところ,翌日より強い充血が生じ,10日後再診した際,フィブリン析出を伴う虹彩炎を発症していた.点眼中止とステロイド薬の点眼と内服で軽快した.以上,点眼薬によって重篤な副作用が生じ,点眼中止と対症療法によって軽快した症例を報告した.
症例報告
  • 片桐 聡, 熊本 久大, 助崎 文雄, 中村 正則, 宮岡 英世
    2009 年 69 巻 2 号 p. 194-197
    発行日: 2009/04/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    McCune-Albright症候群は,Fibrous dysplasiaによる骨脆弱性のために骨折を繰り返し,大腿骨に羊飼いの杖状変形と呼ばれる内反股変形を引き起こす.今回,McCune-Albright症候群の小児に,転倒による骨折を契機に発症した内反股の一例を経験したので,報告する.症例はMcCune-Albright症候群の診断をされた6歳女児で,転倒による大腿骨転子部骨折に対して,介達牽引による保存加療を行った.治療経過中,骨癒合,骨折を繰り返したが,約8か月の経過のうちに骨癒合は完了した.しかし,その後も疼痛を認めないにも関わらず,股関節の内反変形が進行し,健常側についても同様に内反変形を認めた.本症例では年齢を考慮して保存加療を選択しているが,今後は骨成熟を待ち外科的処置を検討している.しかし,文献的には外科的処置を行っても,治療に難渋することが多い.McCune-Albright症候群の症例報告は少なく,今後も多くの報告が望まれる.McCune-Albright症候群は,Fibrous dysplasia,Café-au-lait spot,内分泌機能障害を合併する先天性疾患である.Fibrous dysplasiaはその骨脆弱性のために骨折を繰り返し,大腿骨に羊飼いの杖状変形と呼ばれる内反股変形を引き起こす.今回われわれは,McCune-Albright症候群の小児に発症した大腿骨転子部骨折後に進行した内反股の一例を経験したので,若干の文献的考察を加え,報告する.
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