抄録
Multidetector CT(以下,MDCT)にて出血部位を診断し得た小腸出血の1手術例を経験したので報告する.症例は85歳の男性.下血を主訴に緊急入院となった.輸血等,保存的治療を行うも循環動態は不安定となった.上下部消化管内視鏡検査で出血部位を同定できなかったが,2回目のMDCTにて小腸出血部とその責任血管を同定し得たので小腸出血と診断し,緊急手術を施行した.手術所見では回盲部より70cm口側回腸に動脈性出血部位を認め,小腸部分切除を行った.病理検査ではAngiodysplasia(以下,AGD)と診断された.本例の如く小腸出血の診断にMDCTが有用であった報告は本邦6例のみであるが,320列MDCTによる鮮明な術前画像診断による報告はみられない.今後,診断機器,画像処理の進歩に伴いより確実な検査になり得ると思われる.