昭和医学会雑誌
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原著
ラット大腿動脈におけるボツリヌストキシンA型による血行動態変化について
佐藤 雅秀清水 祐紀林 稔横山 才也吉本 信也
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2012 年 72 巻 3 号 p. 336-341

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抄録

ボツリヌストキシンA型(以下,BTX-A)は神経接合部においてアセチルコリンの放出を抑制し,筋の収縮力を弱め,痙攣を抑制する.こうした働きを利用し本邦では,眼瞼痙攣,片側顔面痙攣,痙性斜頚などの治療や表情じわ治療などの美容治療の応用がされている.また,BTX-Aの投与による周囲組織の血流増加作用が指摘されており,末梢血管障害の治療の可能性を示唆している.今回われわれは,ラットの大腿動脈にBTX-Aの投与を行い,レーザードップラー血流計(PERIMED社,PeriFluxSystem5000)を用いて血行動態の変化について計測を行った.ラットの大腿動脈の中心部に10-0針付きナイロン糸で1針かけて結紮し,部分的に血管を狭窄させ,血流を減少させた血管狭窄モデルラットを作成した.BTX-A薬剤としてXeomin(Merz Pharaceuticals, Greensborough, North Carolina)を使用した.試薬として生理食塩水0.02mlにXeominをそれぞれ0.5U,1U,2U,4U,8U溶かした溶液を作成し,血管狭窄モデルラットの結紮部の血管周膜内にそれぞれの試薬を投与した.また同部位に生理食塩水0.02mlを投与したものをコントロールとした.結紮部より約10mm末梢の大腿動脈の血流を結紮前,結紮後,投与3日目にレーザードップラー血流計を使用し計測した.1U群,2U群,4U群,8U群において投与3日目で著しく血流の増加を認めた.0.5U群,コントロール群においては血流の明らかな変化を認めなかった.ラットにおいて血管周膜内に1U以上のBTX-Aの投与が有意に血流を改善させる効果があるということが示唆された.BTX-Aを血流改善を目的とした薬剤として使用するにあたり,その効果として作用時間や拡散の程度などの更なる研究による解明が必要であると考える.

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© 2012 昭和大学学士会
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