昭和医学会雑誌
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原著
安定狭心症患者におけるEPA/AA比の短期間での変動
岡部 俊孝山本 明和山下 賢之介荏原 誠太郎斎藤 重男星本 剛一薬師寺 忠幸磯村 直栄荒木 浩小原 千明落合 正彦
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2012 年 72 巻 5 号 p. 539-546

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抄録
背景:虚血性心疾患の危険因子として血液中のエイコサペンタエン酸(Eicosapentaenoic Acid:EPA),アラキドン酸(Arachidonic Acid:AA)の比であるEPA/AA比の低値が知られているが,その短期間における変動に関しての研究はほとんど報告されていない.目的:安定狭心症患者においてEPA/AA比の適切な測定時期を明確にするため,EPA/AA比が短期間での変動や日内変動を示すかを検証した.方法:冠動脈造影検査にて冠動脈に血行再建の必要性を認めた75%以上狭窄の病変を1つ以上有する安定狭心症38症例を対象とした.EPA/AA比の測定は以下に示す通りの3ポイントで測定した.(1)入院時EPA/AA比 初回経皮的冠動脈インターベンション(Percutaneous coronary intervention:PCI)施行のための入院日の夕食後に随時採血として測定した.(2)PCI当日早朝EPA/AA比 PCI当日の早朝空腹時採血であり,前日から12時間以上の絶食期間をもうけて測定した.(3)PCI翌朝EPA/AA比 PCI翌朝の早朝空腹時採血であり,12時間以上の絶食期間をもうけて測定した.結果:平均年齢は68.7±9.7歳であった.73.7%が男性であり,高血圧症が73.7%,脂質代謝異常症は71.1%,糖尿病症例は31.6%に合併していた.入院時EPA/AA比,PCI当日早朝EPA/AA比,PCI翌朝EPA/AA比はそれぞれ0.47±0.34,0.46±0.34,0.44±0.31であった.3群間に有意差を認めた(P < 0.01).結語:EPA/AA比は短期間で変動する可能性がある.そのため,より正確に虚血性心疾患の危険因子として評価する際には測定時期を統一する必要が示された.
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© 2012 昭和大学学士会
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