昭和医学会雑誌
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原著
食道表在癌の発育進展―逆追跡可能であった食道扁平上皮癌症例の臨床病理学的検討
小田 丈二高橋 寛
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2012 年 72 巻 6 号 p. 637-648

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抄録

病理組織学的に食道SM癌と診断された53例を対象に,食道表在癌の発育進展について検討を行った.はじめに,過去2年以内に検査歴を有する食道扁平上皮癌11例について,過去のX線像または内視鏡像を見直し,粘膜癌から粘膜下層癌への発育進展形式および発育速度について検討を行い,それらを推定したところ,大きく3型(パターンA,B,C)に分類することが出来た.パターンAは上皮内進展を伴わずに深部浸潤するタイプ,パターンBは上皮内進展を有し,側方への発育を伴うタイプ,パターンCは0-IIb型から0-I型の隆起型SM癌となるタイプである.パターンBの中でも,0-IIc型病変内で深部浸潤よりも側方発育傾向が強く,発育速度も比較的緩徐であった症例をパターンB-1,0-IIc型陥凹内部でSM浸潤による0-I型隆起を形成した症例をパターンB-2,0-IIc型陥凹内部でさらに深い陥凹を形成しながらSM浸潤した症例をパターンB-3として細分類したところ,パターンB-2はより深部浸潤傾向が強く,短期間でSMに塊状浸潤を伴い,深部方向への発育進展速度が速くなっていた.発育速度を比較した場合,パターンA,Cの発育進展速度は速く,パターンB-1は最も遅いと推測され,パターンB-2はその中間に位置するものと思われた.パターンB-3は概ねパターンB-2に準ずるものと推定した.その発育進展形式や速度に影響する要因として,浸潤部位における中~低分化型扁平上皮癌という組織型が関連している可能性が考えられた.さらに,残りの42例のSM癌をこのパターンに当てはめて検討したところ,パターンB-2が最も多く,次いでパターンAという結果であった.

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© 2012 昭和大学学士会
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