抄録
高温環境が人体の血清中クエン酸に及ぼす影響を見る為に, 昭和28年12月から昭和29年1月に至る厳冬期に4名の成年男子を29℃の常温室から更に30℃, 34℃37℃の高温室に180分間, 40℃, 44℃の高温室に90分間臥床安静の状態で滞室させその前後に採血して血清中のクエン酸の変動を観察した.
血清中クエン酸量は既に常温室に臥床安静にしていた場合に時間の経過に従つて軽度の低下を示したが, 高温室に入つた場合にも此の傾向は変らず, 従つて高温環境ば血清中のクエン酸量に顕著な影響を及ぼさぬ様である.
稿を終るに臨み御指導を頂いた小池教授, 公衆衞生院の人工気候室で実験の機会を与えて下さつた公衆衞生院労働衞生学部長鈴木武夫博士に感謝致します.