昭和医学会雑誌
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脳組織内Chlorpromazineの推移, 特に之に及ぼす電撃痙攣の影響について
吉田 富三
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1961 年 21 巻 6 号 p. 721-730

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抄録
1) 脳組織と結合するC.p.量の経時的変動について観察したが, 現時の化学の進歩の段階で定量し得る量 (実験動物に対しC.p.100mg/kg) では, 臨床的の意義からみてその急性期に属する数時間以内の変動こそ重要であるという見解のもとに, これに重点を置いて検索を行なつた.
2) 脳内C.p.量は30分値を最高とし10時間30分までは多少の動揺を示しつつも概して下降の途をたどるが, 1時間30分における上昇はかなり特異的に見え, この時期には実験動物の死亡例も多く脳髄の病理学的所見も強度であつた.
3) 上記の意味において1時間30分後と, 一応危険期を脱したと思われる3時間30分後とに電気衝撃を加えてC.p.量の変動に及ぼす影響を調べたところ, 前者の場合は対照に比べて電気衝撃直後はやや減少するが, 30分後及び1時間後には増加の傾向を示し, 2時間後にはかなりの減少を見た.後者の場合は1・2時間値共に対照に比して著しい減少を示した.
4) 電気衝撃による脳内C.p.量の減少は, 痙攣が脳髄に親和性を有する毒物の排出を促進するものと意味づけることが可能であるが, 電気衝撃による増加については, C.p.の中毒による脳髄の病変が, 電気衝撃によるそれとの間にReciprocalな関係が存在することを示唆するものの如くである.
5) 以上の事実を説明するに足ると思われる脳髄の病.理学的変化を観察し, これに基づいて理論的な考察を行なつた.
6) Phenobarbital注射後電気衝撃の脳内C.p.量に及ぼす響影を通じて, 中枢性の痙攣の減弱は, 痙攣の脳内よりのC.p.排泄促進作用をも減殺するものと推定される.
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