人工透析研究会会誌
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透析患者における動脈硬化 特に大動脈脈波速度よりの検討
高瀬 弘行大橋 富美代徳岡 多加志笹倉 良一福永 秀行天野 昌彦生野 哲雄大西 清史
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1984 年 17 巻 4 号 p. 283-286

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抄録
血液透析患者における動脈硬化, 特に脳血管障害や虚血性心疾患はその予後を考える上で重要な問題である. そこで我々は動脈硬化の非観血的診断法の1つである大動脈脈波速度 (PWV) の測定を血液透析患者に試みた.
対象は透析群 (HD群) としては血液透析施行中の患者23名 (男15名, 女8名, 平均49歳) で, 糖尿病合併例は除外した. コントロール群 (C群) としては外来通院中の患者43名 (男28名, 女15名, 平均51歳) である. なお明らかに脳血管障害, 虚血性心疾患, 糖尿病を認めるものは除外した.
方法は両群についてPWV, 総コレステロール (TC), 中性脂肪 (TG), 高比重リポ蛋白コレステロール (HDL-C) を測定して, HD群とC群の比較を行い, 併せて両群についてPWVと脂質, 年齢, 透析期間との関係についても検討を加えた.
その結果, HD群はTC 181±38mg/dl (mean±SD), TG 153±85mg/dl, HDL-C 44±13mg/dlでC群はそれぞれTC 201±42mg/dl (NS), TG 112±54mg/dl (p<0.05), HDL-C 51±14mg/dl (p<0.05) であった. PWVはHD群, C群ともに年齢とは有意の正相関を認めたが, 両群の比較ではHD群8.4±2.0m/s, C群8.1±1.2m/sと有意差を認めなかった. また両群においてPWVとTC, TG, HDL-C, 透析期間との関係を検討したがいずれも有意な相関はみられなかった.
以上の検討結果よりPWVを指標とした血液透析患者の動脈硬化度はC群と同様に年齢的変化が大きいものと考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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