抄録
1.本実験は溶血作用を有しているSaponinを1mg/kg, 4mg/kg, 8mg/kgの各濃度で家兎に週2回皮下注射により投与, その生存期間に応じて家兎の血液学的検査および肺の病理組織学的検索を行なつた.
2.肺の病理組織学的所見, 各量投与群に認められる変化は, 肺胞の拡張, 拡張不全, 肺胞細胞の増殖, 胞隔の膨化, 水腫さらに円形細胞浸潤等低酸素に対する個体反応的変化であるが, 中等量, 大量投与群より認められる変化は循環障害性変化がさらに著明に加わる.これ等の変化は薬物の投与量および期間の増化に伴い増強しさらに質的変化を認める.すなわち血管壁の膨化, 粗化, 変性, 内腔狭窄がみられつづいて壁線維肥厚, 血管周囲線維化が認められる.
3.これ等の変化は経過時間の延長にしたがつて間質の線維性硬化に進展する傾向を示唆するものと考えられる.
4.これ等の変化はサポニンの溶血作用による貧血性低酸素性変化に基づき, その表現が肺構造の特異性から胞隔に集中するものと理解される.