抄録
家兎肝homogenateを酵素材料とし, これに対する保存, 熱処理, 薬物処理のMAO活性に対する影響を, 各種基質, 阻害剤を使用しMAOによる酸素消費量を測定して検討した.基質としてはtyramine, benzylamine, serotonin, β-phenylethylamine, tryptamineを用い, 阻害剤としてはpargyline, harmaline, tranylcypromineを使用し反応中に消費される酸素量の変化をWarburg検圧計により測定した.新鮮酵素および冷凍保存した場合の酵素の活性を経時的に比較した結果, 前者の場合tyramine, serotonin, tryptamineを基質とした際のMAO活性は直線的に増大したが, benzylamineまたはβ-phenylethylamineでは反応開始30分経過後に活性の減弱がみられた.一方, 冷凍保存酵素ではいずれの基質の場合も活性は低く, 両者では相違がみられた.本臓器中MAOの複数性を検討するため基質tyramineまたはbenzylamineを使用して, 新鮮酵素と保存処理した酵素における活性の経時的変化および各阻害剤による影響を検討し以下の結果を得た.
1) 家兎肝homogenateを室温 (22℃) に放置しtyramineまたはbenzylamineを基質としてその安定性を検討した結果, 放置後24時間まではMAO活性は変化せず, 26時間後では両基質ともその活性は約50%失活し, 29時間後ではほぼ完全に消失した.
2) 冷蔵庫 (4℃) に保存した場合, 日数の経過とともにMAO活性は低下したが, benzylamineを基質とした場合の活性の低下はtyramineを基質とした場合のそれよりも著明であつた.
3) さらに冷凍庫 (-20℃) に保存した場合, 4週間まではMAO活性に変化は認められなかつたが, その後その活性は急激に低下し, 12週間後のMAO活性の減少率は基質tyramineの場合25%, benzylamineでは約51%であつた.
4) 新鮮な酵素材料と, 1週間冷蔵庫に保存したhomogenateのMAOに対するharmaline, tranylcypromine, pargylineの影響を検討した.阻害剤としてtranylcypromineおよびpargylineを用いた場合, 酵素の保存条件間ないし両基質問におけるMAO活性の阻害作用には差は認められなかつた.Harmalineを阻害剤として新鮮酵素材料を使用した場合, tyramineを基質とした方がbenzylamineを基質とした場合よりも強いMAO阻害作用を示したが, 保存日数の経過した酵素材料では両基質におけるMAO活性阻害度には相違は認められなくなつた.
5) 家兎肝MAOは熱処理に対して, 基質benzylamineの場合よりも, tyramineを基質とした場合の方が安定であつた.
6) 家兎肝MAO活性はtrypsin処理によつて著明に減少した.しかし両基質におけるMAO活性の阻害度に相違は認められなかつた.
以上の結果から, 家兎肝homogenate中には酵素化学的に性質の異なる複数のMAOが存在するものと考えられる