抄録
1.ラットの尾逃避反応の潜伏期を痛覚の閾値とした針麻酔式刺激によって現われるいわゆる針鎮痛は, 個体によって差異があり, 5%の危険率で有意の差のある鎮痛の出現の有無によって, 針鎮痛有効群と針鎮痛無効群に分けることが出来る.
2.0.5mg/kgのモルヒネの投与によって現われる鎮痛は, ほぼ針鎮痛と同程度であるが, この濃度によって現われるモルヒネ鎮痛にも個体差があり, しかも針鎮痛有効群はモルヒネ鎮痛も有効で, 針鎮痛無効群はモルヒネ鎮痛も無効であった.針鎮痛の表示である尾逃避反応の潜伏期の増加率と, モルヒネ鎮痛のそれとの間には, 相関係数0.75の相関関係がみられた.
3.PAGのほぼ定位置に一定電流を与え現われる鎮痛にも個体差がみられ, やはり, 針鎮痛有効群では鎮痛がよく現われるのに反し, 針鎮痛無効群では鎮痛が現われ難かった.
4.針鎮痛の有効性の個体差には脳内のMLFの含有量のみならず, その他の要因も関与することが示唆された.