昭和医学会雑誌
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担癌動物における脾臓内T細胞と胸腺細胞の変動について
砂田 英二
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1980 年 40 巻 5 号 p. 571-579

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抄録

皮内に移植腫瘍 ( (A) ) を作っておいた動物に, 再度他の部位に移植腫瘍 ( (B) ) を作ると, ある時期に (B) の生着が拒否される.これは随伴免疫として以前から知られていた. (A) 移植後外科的切除, 又は放射線を用い消失させた後に (B) の発育を観察し, 同時に脾臓の重量, 細胞数, 脾臓内T細胞数, 胸腺重量及び細胞数を測定した.更に脾臓及び腫瘍周辺の組織像も観察した. (A) 移植後21日以後には (B) の発育は認められなく, (A) を外科的切除より放射線にて消失させた方が (B) の発育を拒否する期間の延長が認められた.再移植拒否の時期と脾内T細胞数の増加にはある程度の関連性がみられ, また腫瘍細胞の存在期間と脾腫及び胸腺の萎縮との間にも相関が認められた.組織像では脾臓はリンパ濾胞の腫大とうっ血があり, 腫瘍周辺にはリンパ球浸潤が認められる事から, 腫瘍抗原により刺激されたlymphoreticular systemから動員されたリンパ球が再移植拒否の主役を果たすものと思われ, 放射線照射を行なうと, 腫瘍が消失しても抗原刺激は残る事が示唆された.

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