1980 年 40 巻 6 号 p. 695-700
ラットの尾逃避反応の潜伏期を痛覚閾として, 針麻酔の刺激 (針刺激) を与えて鎮痛が発現する動物を選び, モルヒネの特異的拮抗剤のnaloxone 1mg/kgを投与すると, 針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) は完全に拮抗された.この拮抗には典型的な用量―拮抗作用 (dose-response) 関係がみられた.
セロニン及びカテコールアミン澗渇剤であるtetrabenazine 25mg/kgの投与によっても針鎮痛は完全に拮抗され, この場合にも典型的なdose-response関係がみられた.これらの量のnaloxone, tetrabenazineは痛覚閾に何の変化も示さなかった.この拮抗の持続時間はnaloxneに比して短く, 針刺激を与えている状況下で, 約75分で消失した.
セロトニンの拮抗剤であるmethysergideは2mg/kgで最大の拮抗を示したが, 針鎮痛に拮抗する値は約80%であった.この場合にも典型的なdose-response関係がみられた.
以上の結果から針鎮痛には内因性モルヒネ様物質 (MLF) により誘起され, MLFとセロトニン及びカテコールアミン系とは直列的に配列して鎮痛を発現させ, セロトニン系とカテコールアミン系の比は4: 1であった.