抄録
pentazocineの循環器系に対する増強効果は血管平滑筋の交感神経系を介しての作用と考えられている.著者は筋層内に交感神経終末の分布の濃厚なマウスの摘出輸精管を用いてpentazocineの交感神経・平滑筋伝達について検討した. (1) 経壁電気刺激 (10Hz) でpentazocine (10-7M~3×10-5M) は交感神経の興奮によるといわれるtetanus様収縮を濃度依存的に増強した. (2) pentazocineの投与ではシナプス後膜における感受性の上昇は観察されなかった. (3) 交感神経終末に取り込ませた3H-norepinephrineの流出量の測定で, 非刺激時の流出はpentazocineの濃度 (10-7M~10-5M) に依存して著しく増加したが, 刺激時の流出は増加しなかった.以上の結果から, 輸精管の交感神経の緊張はpentazocineによって増強されたが, その作用機序として非刺激時のnorepinephrineの遊離を増し, これと刺激時に遊離するnorepinephrineとが累加されて収縮の増大をきたしたものと推察できる