抄録
カエルの骨格筋 (縫工筋, 腹直筋) の活動電位の陰性後電位 (NAP) は, 環境液からCaを除去すると持続時間が延長し, 振幅も僅かに上昇した.一方spike電位は次第に減少したが, 収縮の大きさには殆んど変化がみられなかった.この効果は, EDTAを加えると更に増加した.
CdCl2もNAPの持続を延長し, 無Ca環境液ではこの延長は更に増加した.環境液のNaイオンをTEAに置き換えると, NAPの著しい増大延長がみられたが, Caを除去すると更に延長した.上記の変化は縫工筋よりも緊張筋である腹直筋の方に著しく現われた.筋のT管系をglycerolで破壊した後には, NAPは消失するが, Caの欠損効果も出現しなかった.以上の結果からCa欠損環境液によるNAPの持続の延長はT管系に由来し, T管系の膜は筋細胞表面膜とは性質を異にし, T管系ではCa除去によるNaの透過性の増大がより著しく, その結果NAPの延長増大が出現すると推定した.