抄録
中脳中心灰白質背側部 (d-PAG) の電気刺激によって誘起される鎮痛 (SPA) は刺激終了後も長く持続し, 鎮痛の有効性に個体差があり, ナロキソン (1mg/kg) の腹腔内投与 (i.p.) で完全に拮抗され, メチセルジド (2mg/kgi.p., 20μg脊髄クモ膜下腔投与i.th.) , フェントラミン (20μgi.th.) の投与, 及び中脳中心灰白質腹側部 (vPAG) , 大縫線核 (RM) , 巨大神経細胞網様核 (NRGC) の破壊で部分的に拮抗され, RMとNRGCの破壊で出現しなくなる.これに反し, vPAG-SPA, RM-SPA, NRGC-SPAは刺激時にのみ出現し, 有効性の個体差がなく, vPAG-SPA及び針鎮痛無効群のRM-SPAはメチセルジド (2mg/kgi.p.) で, NRGC-SPAはフェントラミン (20μgi.th.) で完全に拮抗されるが, 針鎮痛有効群ではナロキソンで拮抗される鎮痛が加算されて出現する.以上からdPAG-SPAはdPAGに由来する内因性モルヒネ様物質がセロトニン系とカテコールアミン系の下行性抑制を活動させ鎮痛が出現していることが判明した.