抄録
Ceruloplasmin (以下CPと略す) は1948年Holmbergらによって発見された銅蛋白でα2-globulin分画に属している.その生理作用は二価鉄を三価鉄に酸化させるferroxidase作用, 銅をcytochrome oxidaseなどの細胞内酵素に運搬する作用, super oxide処理作用, 造血促進作用である. Apoceruloplasmin (以下apo-cpと略す) はcpの前駆物質でα1-globulin分画に属しoxi-dase作用を有さず, その生理作用は不明である.銅欠乏ラットを作成すると低CP血症となり小球性低色素性貧血が発症することがしられており, この発症機序にcpのferroxidase作用, 銅運搬作用が関係していることが近年明らかにされた.一方, 各種疾患で血清cp値が変動することが知られている.われわれは血清cp値と血色素量, 赤血球数, ヘマトクリット値, 血清鉄などとの関連を調べcpの臨床的意義について検討した.Apo-cpの血清濃度はcpの10~20%であるが, 正常人血清を抗cp血清を用いて免疫電気泳動するとapo-cpは検出されず, その量が一定量を越えるとapo-cpの沈降線が出現する.この事実を利用して, 各種疾患血清を抗cp血清を用いて免疫電気泳動し, apo-cpの沈降線の有無と血清cp値, 血色素量, 赤血球数, ヘマトクリット値などとの関連を調べ, cp, apo-cpの臨床的意義について検討し下記の結論をえた.1.cpとapo-cpは一部共通の抗原を有していた.2.検索しえたほとんどの疾患において血清cp値と血清銅とはよく相関した.3.再生不良性貧血では血清cp値と血色素量, 赤血球数, ヘマトクリット値, 血清鉄, 血清銅の間に強い相関が認められた.鉄欠乏性貧血と急性白血病においても血清cp値と血色素量, 赤血球数, ヘマトクリット値, 血清銅の間に相関がみられた.4.免疫電気泳動を行なうと正常人ではapo-cpは検出されず, 再生不良性貧血, 肝硬変, 妊娠, 鉄欠乏性貧血, 急性白血病, 悪性腫瘍, 腎疾患でapo-cp陽性例が認められた.5.再生不良性貧血では貧血が高度で, 血清銅, 血清鉄, 血清cp高値例でapo-cpは陽性となった.肝硬変では貧血が強く, 血清鉄, 血清cp値が低く, ICG試験で血漿消失係数が小さな症例でapo-cpが検出された.妊婦では血清cp値, 血清銅の高値例でapo-cpが陽性であった.