Ceruloplasmin (以下cp) は生体内では主に, 酸化型のcpとして存在しているが, 銅を含まないApo-ceruloplasmin (以下Apo-cp) も, 血清cpの10~20%存在している.今回cpとApo-cpの各種疾患時における存在様式を知る目的で, cpをoxidase活性測定法と免疫学的測定法で定量し, 比較検討した.対象および方法: 正常人, 肝硬変症, 肝炎, 鉄欠乏性貧血, 再生不良性貧血, 白血病, 悪性腫瘍, 腎疾患, 透析患者及び妊娠例の計192症例でoxidase活性による定量法と免疫学的定量法で測定した.結果: 正常人では免疫学的測定法では, oxidase活性による測定値より平均5mg/dl多い値が得られた.肝硬変症では両測定値とも正常人より低値を示し, 肝炎では両測定値の差が大きかった.鉄欠乏性貧血では一定の傾向を示さず, 再生不良性貧血では, 主に酸化型のcpが増加していた.白血病やその他の悪性腫瘍では, oxidase活性を免疫学的測定が大きく上まわり, 腎疾患ではoxidase活性は正常人より低かったが免疫学的測定値は高かった.血液透析症例では両測定値にほとんど差はなく, 妊娠例では, 両測定値共高値を示していた.
結語: 各種疾患でcpをoxidase活性と免疫学的方法により測定し, 両測定値の比較検討により, 次の結果を得た.1) oxidase活性値と免疫学的測定値では, 免疫学的測定値が大きく, その差はApo-cpと考えられた.2) 肝硬変症では, Apo-cpの産生の低下が認められた.3) 鉄欠乏性貧血では, その原因, 鉄の分布状態, estrogen量, cpの産生など症例により異っているため, 一定の傾向はみられなかった.4) 肝炎, 白血病, 悪性腫瘍, 妊娠ではApo-cpの産生の亢進が認められ, acute phase proteinとしての作用, 鉄代謝との関連, estrogenの影響などがあるものと推定された.5) 再生不良性貧血では, 酸化型のcpが増加しており, 鉄の利用障害との関連が示唆された.6) 腎疾患では, 銅とApo-cpの結合が阻害されている症例が認められた.7) 血液透析患者では, Apo-cpが少いことが特徴であった.
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