昭和医学会雑誌
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Diisopropyl 1, 3-dithiol-2-ylidene malonate (malotilate) のethionine肝障害に及ぼす影響
とくに血液凝固線溶能について
小沢 啓子
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1982 年 42 巻 3 号 p. 301-309

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抄録
蛋白生成促進作用等の肝細胞賦活作用を有すると思われるdiisopropyl 1, 3-dithiol-2-ylidene malonate (malotilate) を用い, 蛋白生成阻害, 脂肪肝等を起すethionine肝障害ウサギに及ぼす影響を血液凝固線溶能の測定により検討した.実験動物は2.5~3.5kgの成熟白色雄性ウサギを用いた.ethionineはDL-ethionineを2%水溶液とし, malotilateは溶媒にて250mg/ml懸濁液として用いた.実験群はethionine群 (100mg/kg/24hr, s.c.×2) , malotilate群 (250mg/kg, s.c.×1) , ethionine+malotilate群 (ethionine 100mg/kg/24hr, s.c.×2, malotilateはethionine2回目投与直後に250mg/kg, s.c.×1) , 溶媒群 (1ml/kg, s.c.×1) とした.検査項目は, thrombelas-tography (TEG) , hepaplastintest (HPT) , prothrombin time (PT) , partial thromboplastin time (PTT) , plasminogen (PLG) , plasmin inhibitor (PL-inhibitor) , total protein (TP) , transaminase (s-GOT, GPT) とした.ethionine群では, TEGは2日目をピークとし, r値, r+k値が延長し, blood thromboplastin形成が障害されている事を示した.HPT, PTTでは1日目, PTでは2日目に最大となり, 活性低下, 凝固時間延長を示し, 血液凝固能が低下していることを認めた.PLG値も活性の低下を示した.2日目をピークに, TPも減少し, transaminaseも上昇した.malotilate群では, TEGは1日目から14日目まで, r値, r+k値は短縮し, ma値は増大していた.HPTは3日目 (controlに対し78%) をピークとし, 14日目 (13%) まで活性値の増加を示した.PTでは1日目を最大とする凝固時間の短縮を示し, PTTでは2日日に凝固時間の短縮を示した.PLG値も活性が増加した.溶媒群では, TEG, PT, PTTでは著明な変化は示さなかったが, いずれも傾向としてはmalotilate群と同様であった.HPTにおいても, 2日目 (56%) をピークとして活性値が増加し, malotilate群と同様の傾向を示した.ethionine+malotilate群では, TEGはr値, r+k値の延長を示したが, ethionine群に比べその程度は少なかった.HPTで活性値の低下, PTで凝固時間の短縮を示したが, いずれも有意にethionineの作用を抑制した.PLG値においても同様に, 有意な抑制を示した.TP, transaminaseについても抑制傾向を示した.以上より, malotilateは血液凝固能亢進, PLG値増加により, ethionine肝障害にみられる血液凝固能, PLG値低下に対し抑制的に働き, 結果的にethionine肝障害の肝機能を改善した.これにはmalotilateの有する蛋白生成能促進作用が重要な因子として関与している事が想定された.
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