昭和医学会雑誌
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X線コンピューター断層撮影法による人体皮下脂肪層の研究 I上腹部高断面について
加藤 至
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1983 年 43 巻 1 号 p. 31-41

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抄録
X線コンピューター断層撮影法 (CT) によって得られた上腹部高断面のフィルム, 77個体分 (男性48, 女性29) について, 皮下脂肪層の面積および厚さの計測を行ない, 皮下脂肪層の推移を検討するとともに, 他の方法による脂肪厚値と比較した.上腹部断面はErdheimの第6~7と7~8横線高に相当する頭側および尾側の2つの断面高に分け, 各断面をA~F縦線に相当する6点に分けて観察した.1) 上腹部断面における皮下脂肪層の断面積比の平均は, 男性では頭側断面で7.1%, 尾側断面で10.2%, 女性では頭側断面で11.1%, 尾側断面で15.4%であった.男女両断面とも10歳代が最も低く, 加齢的に増加して40歳代, 50歳代で最高に達し, その後, 減少する傾向がみられた.2) 頭側および尾側両断面の, それぞれにおけるA~F点の皮下脂肪厚を比較すると, 尾側断面では男女ともA点 (前正中線) が最も厚く, D点 (腰線) , E点 (殿線) の順にこれについだが, 頭側断面ではF点 (後正中線) が厚くなり, 男性はF点, A点, B点 (乳頭線) の順に, 女性ではA点, F点, B点の順にそれぞれ厚かった.さらに, F点が最も厚い例は断面積比の大きな例で多くなる傾向がみられた.3) 年齢的には, 頭側断面では各点とも50歳代までは加齢的に増厚したが, 男性は20・30歳代で, 女性は20歳代で著明であり, 男性ではF点が最も著しくてA点がこれにつぎ, 女性では逆にA点, B点の順であった.尾側断面では男性はA点とB点は30歳代まで, その他の点はその後も増厚し, A点が増厚は最も著明で全年代を通して最も厚かったが, 女性では各点とも20歳代に著明に増厚し, 特にA点が著しく, B点がこれにつぎ, 全年代を通してA点, B点の順に厚い傾向を示した.4) 他の方法との比較では, 筆者の値は皺襞法値に比べて, その1/2値に近い値であり, 直接計測値に比べても, その範囲内に含まれた.ただし, A点とB点については, 比較例よりも筆者の値の方が著しく大であった.以上のことから, CT写真による皮下脂肪計測で, その面積比と各部の厚さを, 比較的, 精密に知ることができたが, 従来は計測が困難とされた, 前後正中線部の皮下脂肪厚を知ることもでき, それらが大きな性差, 部位差, 年齢差を示していることを明らかにすることができた.
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