昭和医学会雑誌
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胃線状潰瘍の変遷
安井 昭西田 佳昭渋沢 三喜石井 淳一藤本 宗平李 中仁角田 明良築野 和男石橋 幸夫
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1983 年 43 巻 1 号 p. 25-30

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抄録
村上, 鈴木は線状潰瘍とは小彎を軸としてそれに直角の方向にまたがる (伸びる) 線状の潰瘍で, その長さは一応3.0cm以上とする, と定義した.しかしこの概念または定義については時代とともに多くの説 (考え方) がだされるようになった.またその病因, 成因についても各方面からの考察がなされ, 多様な意見も見うけられるようになったが, 今回われわれは外科的に切除した線状潰瘍症例に限って検索した.
線状潰瘍, なかでも線状瘢痕の率が今まではわずか3%にすぎなかったのが, 20年を経た今日では28%と高頻度を呈したことは大きな変化である.しかし線状潰瘍の特徴の一つである小彎の短縮については全く異論はないが, 昨今臨床上典型的な症例になかなかめぐりあえない.また線状潰瘍の長さそのものには特に変化は見られないが, ただ病巣の存在部位が幽門輪から見て昔よりも平均1.8cm程度高くなっているのが目立っている.
また年齢別では昔は40歳台にピークがあったようであるが, 昨今では40歳台~60歳台までほぼ同程度のピークとなっており, このへんにも変化がうかがわれる.また今回の検索では20歳未満の男女, および70歳以上の女性には1例の線状潰瘍例も認められなかった.なお, 線状潰瘍に合併せる早期胃癌についても言及した.
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