抄録
先に確立した電気化学的検出器付高速液体クロマトグラフィーを用いて, 血漿中クロルプロマジン (CPZ) , レボメプロマジン (LPZ) の同時定量を行い, 併用向精神薬の臨床薬動態の一面を明らかにした.対象者はCPZ, LPZを同量同時に服用し, ほぼ安定した病状を示す入院中の精神分裂病者で, 併用薬は原則としてビペリデンのみの者とした.結果は以下の如くであった. (1) 血漿中濃度の日内変動は, 午前10時から午後2時にかけて最高値となり, 後, 下降する傾向を示し, しかも, 常にLPZ濃度がCPZ濃度より高い値であった.又, CPZ, LPZ各200mg服用群は, 各採血時間で, 100mg服用群より高い血漿中濃度を示した. (2) 2週間以上服用を継続した患者 (バルビタール系催眠剤, 胃腸消化剤併用者も含む) の, 早朝空腹時の血漿中CPZ, LPZ濃度を調べた所, 100mg群, 200mg群共に有意にLPZ濃度がCPZ濃度を上回った. (3) CPZ服用中の患者が, LPZの併用を開始するとCPZ血漿中濃度は低下し, LPZ服用中の患者が, CPZを併用すると, LPZ血漿中濃度は上昇する.又, 両者を同量とし, 長期間服用し続けると, 両者の血漿中濃度の差はLPZが大のまま, 大きくなって行く傾向を示した. (4) LPZとCPZ併用者では, 血漿中濃度はLPZが高く, 尿中排泄量はCPZが高い傾向を示した.以上の結果から, CPZとLPZの併用下では, CPZ代謝の促進と, LPZ代謝の抑制と言う相互作用の存在が推論された.かつ, 従来から, 経口投与によって得られた向精神薬の血漿中濃度は, 個体問の差が大きく, しかも, 服用量に応じた血漿中濃度が得られない, と言われていたが, LPZとCPZの併用は, この個体間のばらつきを改善し, 服用量に応じた血漿中濃度が得られやすくする事を示している.この事を踏えて血漿中濃度モニタリングを行えば, 臨床場面において, 内服による精神科薬物治療管理を, 一層有効なものとしうる可能性を示している.