抄録
我々の教室で昭和39年来質問紙法としての昭大式Depression-Rating-Scaleを用いて来たが, 今回その改訂版D.R.S-S78を試作し, その信頼性, 妥当性, 質問項目の相関を検討し客観的評定法であるHamilton-Rating-Scaleの邦訳版 (以下H.R.S) についても同様な検討をし比較考察した.1) .信頼性は再検査法による総得点問の相関係数はD.R.S-S78でかなり高い.2) .総得点平均値は両テストとも正常対照群<神経症群<うつ病群と云う結果であり, 妥当性検討のため, この3群間の各々の平均値の差についてt-検定を行ないH.R.Sで神経症群くうつ病群が5%水準であるほかは, いつれも1%水準で有意に高得点を示した.3) , D.R.S-S78, H.R.Sを同時に使用した152例を対象に病名別, 年齢別に分類し得点平均によってD.R.S-S78の総得点と各群ならびに各群間の相関, H.R.Sの総得点と各項目及び各項目間, 両テストの対応項目間と総得点間の相関をOver-ALL, 病名別に求め, その特長について比較検討した.4) .その結果D.R.S-S78のOver-ALLにおける総得点との相関から, 躁転改善, 離人症状群を除いて全群が総得点に良く反映されており, 特に相関の高い総合項目, 不安焦燥抑うつ, 思考抑制, 嫌人傾向, 心気症状群は抑うつ状態の指標と云えよう.5) .従来のD.R.S同様総得点で抑うつ状態の程度判定が可能であることはもち論であるが, 加うるにD.R.S-S78は総合項目群の得点のみで抑うつ状態の程度を概観出来, さらに他の9群の得点により抑うつ状態を構成している各症状についての経過の比較も可能である.しかし各病名について云うと, H.R.Sで反映されていない部分をD.R.S-S78が補っていたり, その逆もあったりして, 併せ用いることで抑うつ状態をより的確に把握しうることもある.こういう点で, D.R.S-S78はうつ病の病名鑑別や確定診断には, まだ充分なScaleとは云い切れないが, 従来のD.R.Sに比してはるかに臨床上簡便かつ有用なものであると結論した.