抄録
放線菌の1新菌種であるStreptomyces spadicogriseusの培養液から分離したanthramycinの抗菌活性, マウスの可移植性腫瘍に対する抗腫瘍活性, 及び抗体産生細胞と遅延型過敏症反応に及ぼす影響について検討した. (1) Anthramycinのグラム陽性菌に対する最小発育阻止濃度は0.78~3.12μg/mlであったが, グラム陰性桿菌に対しては25~50μg/mlまたは100μg/ml以上であった. (2) マウスのleukemia P388の腹水型に対してはanthram ycin 0.075及び0.15mg/kg/dayの連日4回腹腔内投与によって著明な延命効果が見られた.Sarcoma 37及びsarcoma 180に対しては0.008及び0.04mg/kg/dayの腹腔内投与で延命効果を示した. (3) 抗原 (ヒツジ赤血球) 注射の前 (―7~―2日) にマウスをanthramycin (0.25mg/kgを1回腹腔内投与) で処理すると脾臓のプラク形成細胞数 (PFC) が著しく減少したが, 抗原投与と同時または1日後 (+1日) にanthramycinで処理した場合はPFCが逆に増加した.そこで+1日におけるanthramycinの投与量の影響について調べたところ, 0.125または0.25mg/kgの腹腔内投与ではPFC数の増加が見られたが, 0.5mg/kgでは減少した.したがって投与タイミングと投与量がPFCに大きく影響することが明らかになった.一方においてanthramycinの投与ルートを変えて静脈内に注射した場合は, 前処置 (-4日) でもPFCの増加が認められたので, 投与ルートもPFCに影響を与えることが見いだされた. (4) 塩化ピクリルによって誘発されるマウスの遅延型皮膚反応に対するanthramycinの影響を調べた結果, 前処置 (0.1mg/kgを連日5回腹腔内投与) でも後処置 (0.2mg/kgを連日5回腹腔内投与) でも遅延型過敏症反応をある程度抑制することがわかった.