昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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43 巻, 5 号
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  • 山本 龍二
    1983 年43 巻5 号 p. 561-567
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 成田 章, 山本 香代子, 山田 重男
    1983 年43 巻5 号 p. 569-583
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    摘出モルモット気管筋標本を用いて抗喘息薬アドレナリン作働薬の作用に及ぼすアミノ配糖体抗生剤の影響を検討した.体重250~300gのHartley系モルモットを用い, 摘出気管鎖状標本を作成し気管筋の収縮および弛緩作用をヘーベルを介してKymograph煤煙紙上に描記した.agonistとしてacethylcholine1×10-6, histamine 3×10-6, BaCl2 1×【10-3】を用い, 抗生剤はアミノ配糖体gentamicin, amikacin, kanamycin, streptomycin, tobramycinの五種, マクロライド系erythromycin, spiramycin, leucomycinの三種, ポリペプタイド系colistin, colistin methansulfonateの二種とchloramphenicol, ampicillin, cefazolinを用いた.抗喘息薬はアドレナリン作働薬であるisoproterenol, adrenaline, noradrenaline, ephedrine, salbutamolの五種, ステロイド剤はhydrocortisoneを用いた.三種agonistによるED50%はacethylcholine 3×10-8>histamine 3×10-6>BaCl23×10-4であった.抗生剤の緩解作用はアミノ配糖体が最も強くマクロライド系とポリペプタイド系では大差はみられなかった.アミノ配糖体の中ではgentamicinが最も強かった.マクロライド系ので中はleucomycinが強くchloramphenicolなどでも認められた.五種アドレナリン作働薬のED30%を求め作用強度を比較するとacethylchaline収縮ではisoproterenol 2×10-8>salbutamol 5×10-8>adrenaline 6×10-8>noradrenaline 2×10-6>ephedrine 1×10-4の順であったがBaCl2の場合はsalbutamolが最も強く, histamineの場合はsalbutamolとisoproterenolが同程度であった.アドレナリン作働薬と抗生剤の併用ではagonistとしてacethylcholineを用いた場合の増強効果はephedrineを除き20%以下で, histamineを用いた場合salbutamolで11~40%, 他は47~87%増強された.またBaCl2を用いた場合はephedrineとの併用が60~82%, 他は56~81%を示した.hydrocortisoneはagonistに対し後処置は遅効的で顕著な作用は認められなかった.抗生剤との併用した前処置の場合は緩解が増強された.作用強度はKanamycin>ampicillin>cefazolinの順だった.
  • 長尾 正明, 石川 自然
    1983 年43 巻5 号 p. 585-596
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    小児期に高率の死亡及び罹患率を有する先天性心疾患 (以下CHD) の成因解明にいろいろな実験研究が行われ, CHDの発生予防に寄与しようとしている.その中には催奇形因子としてウイルス, 薬物, 化学物質, 機械的物理的なものを作用させる実験がある.実験目的: 近年科学の発達に伴い, 我々の環境因子として多少なりとも増加していると思われる催奇形因子のうち, 機械的物理的因子である遠心力が鶏胚にいかなる催奇形作用を及ぼすか, 主に心奇形について検討した.実験対象と方法: 心ループ形成~心房心室中隔を形成する時期に相当する孵卵後3~4日 (22~40 somites) の白色レグホン受精卵を用い, 日立高速冷却遠心器20PR-52型内の500PPチューブに入れ, 器内温30℃にてRPRS3-3スイングローターで500回転 (約40G) 5分, 10分, 及び1, 000回転 (約170G) を5分, 10分の重力負荷群, そして対照群の5群に分け, 死亡率, 奇形発生率, 奇形内容とくに心奇形について検討した.実験成績: 負荷群は対照群に比して死亡率, 奇形発生率ともに高値を示した.心臓以外の外表奇形としては躯幹の捻転, 頭蓋左右非対称, 頭部形成不全, 単眼等の眼球異常, 四肢の欠損, 下顎形成不全等が認められた.心奇形としてはDORV, VSD, hypoplastic RVの発生頻度が高値であった.心臓脱の発生頻度も高値であり, 特にStage 16~19 (孵卵後60~75時間) の時期に重力負荷をかけたものに高率に発生した.心臓脱における合併心奇形も多数認められた.まとめ: 本実験により, 短時間の遠心力 (重力) 負荷が高頻度に奇形症候群を作成し得ることが判明した.今回, 胚に対する他の侵襲因子を取り除くために透光法を使用して胚の発育を観察したが, 今後重力負荷直後より有窓法を用いての検討も必要になると思われる.本実験でみられた心奇形及びEctopia cordisは, 環境因子の一つである遠心力が, 鶏胚心の心大血管系, 特に血流に影響を及ぼし, 心形態形成の正常発生を妨げ, 心奇形を生じさせさらに心膜及び横隔膜の異常発生にも関連したものと考える.
  • 小松 信彦, 鍵谷 昌男, 木村 賀津子, 阿部 志津子, 小松 安彦, 岡崎 満, 岡崎 智子, 三浦 春夫, 有泉 雅博, 森 扶美代, ...
    1983 年43 巻5 号 p. 597-601
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    放線菌の1新菌種であるStreptomyces spadicogriseusの培養液から分離したanthramycinの抗菌活性, マウスの可移植性腫瘍に対する抗腫瘍活性, 及び抗体産生細胞と遅延型過敏症反応に及ぼす影響について検討した. (1) Anthramycinのグラム陽性菌に対する最小発育阻止濃度は0.78~3.12μg/mlであったが, グラム陰性桿菌に対しては25~50μg/mlまたは100μg/ml以上であった. (2) マウスのleukemia P388の腹水型に対してはanthram ycin 0.075及び0.15mg/kg/dayの連日4回腹腔内投与によって著明な延命効果が見られた.Sarcoma 37及びsarcoma 180に対しては0.008及び0.04mg/kg/dayの腹腔内投与で延命効果を示した. (3) 抗原 (ヒツジ赤血球) 注射の前 (―7~―2日) にマウスをanthramycin (0.25mg/kgを1回腹腔内投与) で処理すると脾臓のプラク形成細胞数 (PFC) が著しく減少したが, 抗原投与と同時または1日後 (+1日) にanthramycinで処理した場合はPFCが逆に増加した.そこで+1日におけるanthramycinの投与量の影響について調べたところ, 0.125または0.25mg/kgの腹腔内投与ではPFC数の増加が見られたが, 0.5mg/kgでは減少した.したがって投与タイミングと投与量がPFCに大きく影響することが明らかになった.一方においてanthramycinの投与ルートを変えて静脈内に注射した場合は, 前処置 (-4日) でもPFCの増加が認められたので, 投与ルートもPFCに影響を与えることが見いだされた. (4) 塩化ピクリルによって誘発されるマウスの遅延型皮膚反応に対するanthramycinの影響を調べた結果, 前処置 (0.1mg/kgを連日5回腹腔内投与) でも後処置 (0.2mg/kgを連日5回腹腔内投与) でも遅延型過敏症反応をある程度抑制することがわかった.
  • 高橋 厳太郎, 米良 仁志, 小堀 正雄
    1983 年43 巻5 号 p. 603-608
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    鎮痛の抑制系である視床正中中心核外側部 (ICM) を破壊すると, 非経穴部の刺激で鎮痛が出現するが, D-フェニルアラニン (DPA) にはICMを破壊したのと同じような作用があることを検索した.また経穴部を刺激して針麻酔の鎮痛 (AA) を発現する下垂体に到る中枢経路 (R2) と, R2系とICMを破壊した後経穴部の刺激で出現する鎮痛 (NAA) を発現する経路に存在するナロキソンで拮抗される鎮痛に対するDPAの鎮痛増大作用をICMを破壊した状態で検索した.ラットの尾逃避反応を痛みの閾値とし, 経穴部, 非経穴部刺激はそれぞれ前脛骨筋, 腹筋に与える刺激とした.DPAは実験開始30分前に250mg/kgの濃度で腹腔内に投与した.ICM及びR2系にあたっている中隔核外側部 (ISP) の局所破壊は電極の挿入破壊によった.1SPの局所破壊で一たん出現しなくなった経穴部の刺激による鎮痛は, DPAの前投与で対照の鎮痛より大きな値で再び出現した.ICMを局所破壊すると, 非経穴部の刺激で鎮痛が出現するが, この鎮痛に対しDPAは何の作用も示さなかった.ISPを破壊しておいても同じであった.ICM破壊後, 経穴部の刺激で現われる鎮痛はDPAによってかなり増大した.この場合ISPを破壊しておくと鎮痛の増大は僅かとなった.あらかじめ検しておいた針麻酔の鎮痛の有効性の個体差 (経穴の刺激開始45分後の鎮痛値) とDPA作用後の前記実験の有効性の個体差とを検討した結果, DPAには抑制系を抑制する作用以外にナロキソンで拮抗される鎮痛に存在する有効性の個体差を消失させる作用があることが判明した.以上から, DPAには鎮痛抑制系を破壊したのと同じような効果, すなわち鎮痛抑制系を抑制する作用があること及びナロキソンで拮抗される鎮痛にある有効性の個体差を消失させる作用とがあることが判明した.
  • 羅 昌平, 菱田 不美, 楠本 盛一, 武重 千冬
    1983 年43 巻5 号 p. 609-613
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    経穴を刺激して現われる針麻酔の鎮痛 (AA) と鎮痛抑制系を破壊して現われる非経穴部の刺激による鎮痛 (NAA) とは中枢経路を異にし, 中脳中心灰白質 (PAG) でも背側部と外側部とにわかれた部位を通過する.鎮痛抑制系の抑制はNAAのみに加わっているので, PAGの背側部と外側部の刺激によって現われる鎮痛に対する鎮痛抑制系の視床正中中心核外側部 (ICM) の破壊, 刺激効果及び経穴部非経穴部の刺激でPAGの外側部に現われる誘発電位に対するICMの刺激の効果などから, 抑制系からの抑制が加わっている部位の同定を実験的に検討した.痛みの閾値はラットの尾逃避反応の潜伏期とした.中脳中心灰白質背側部 (dPAG) , 外側部 (IPAG) , ICMの電気刺激には600msecの間に漸増する80Hzの2相性波を用い, この刺激を毎秒1回の頻度で与えた.定電流装置によって, PAG刺激の最高値は50μAとし, ICM刺激のそれは200μAとした・経穴部, 非経穴部の刺激でIPAGに現われる誘発電位は30回加算して記録した.電極の挿入位置の確認は脳の冷凍切片によった.ICMを破壊するとdPAG及びIPAGの刺激によって現われる鎮痛 (dPAG-SPA, IPAG-SPA) のうち, dPAG-SPAには変化は現われなかったが, IPAG-SPAは有意の差 (P<0.05) をもって増大した.ICMに刺激を加えるとdPAG-SPAには何の変化も現われなかったが, IPAG-SPAはICMの刺激期間中完全に抑制された.経穴部及び非経穴部の刺激でIPAGに現われた誘発電位はICMの刺激によって21例中13例は完全に抑制され, 4例は不完全に抑制され, 4例には変化は現われなかった.ICMの破壊や刺激の影響をうけたIPAG-SPAを発現したIPAGの刺激部位と, ICMの刺激で抑制されたIPAGの誘発電位の記録部位とは, 脳の組織切片の検索でほぼ同一部位にあったので, ICMからNAA発現系に対する抑制部位はIPAGにあることが結論された.
  • 高橋 厳太郎, 宇佐美 信乃, 楠本 盛一
    1983 年43 巻5 号 p. 615-618
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) は尾逃避反応あるいは発声法を痛みの閾値とした時は下垂体の除去で出現しなくなることが本教室の研究で明らかにされているが, その後, Fuらはphenylquinoneによるマウスのwrithing testを痛みの指標とすると, 下垂体の除去は針鎮痛に影響しないと報した.そこでラットを用いてwrithing testを指標として鎮痛に対する下垂体除去の影響を検した.Wistar系ラットの針鎮痛有効群, 無効群を尾逃避反応を指標として足三里に相当する前脛骨筋に針麻酔の刺激を与えて区分し, 針鎮痛有効群のラットにphenylquinone 2.5mg/kgを腹腔内投与してwrithing testを行い, 投与後5分間隔で各5分間に現われるwrithingの数を数え, その時間的経過を観察した.針刺激を与えるとwrithingは殆んど完全に抑制され, writhing testを痛みの指標とした時にも針鎮痛の効果が出現した.下垂体を周咽頭法で除去し, 3日以上経過した後再び針鎮痛を検すると, writhingは対照と同じように出現し, 針鎮痛の効果は出現しなくなった.Fuらの結果と著者らの結果との相違は, Fuらの針刺激の方法に問題があると推論された.すなわち著者らの針鎮痛はナロキソンで完全に拮抗されるのに反し彼らの針鎮痛はナロキソンで完全に拮抗されない鎮痛であり, また下垂体除去の効果も著者らの結果では完全に針鎮痛の出現が阻止されるのに反し, 彼らの鎮痛は部分的に出現が阻止されている.以上から, Fuらは著者らと異なった鎮痛を指標としていると考えられ, ナロキソンで完全に拮抗される鎮痛がいわゆる針鎮痛であるとすれば, Fuらの結果は充分否定出来ることが判明した.
  • 佐藤 孝雄, 宇佐美 信乃, 武重 千冬
    1983 年43 巻5 号 p. 619-627
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    視床下部の弓状核が針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) の発現に関与するか否か, 関与すれば, 針鎮痛発現の求心路 (経穴から下垂体に至る経路) にあたるのか遠心路 (下垂体から下行性疼痛抑制系に至る経路) にあたるのかを, ラットの尾逃避反応の潜伏期を痛みの閾値として検索した.弓状核尾側部の局所破壊で針鎮痛は出現しなくなり, また腹腔内投与の0.5mg/kgモルヒネ鎮痛も出現しなくなった.弓状核尾側部を刺激すると鎮痛 (ARN-SPA) が出現し, ARN-SPAは刺激中にのみ出現し, 有効性の個体差を示さず, ナロキソン (1mg/kg腹腔内投与) で拮抗されず, また下垂体除去の影響をうけなかったので, 弓状核尾側部は針鎮痛発現の遠心路にあたっていることが判明した.またARN-SPAはデキサメサゾンでは影響されなかったがドーパミンの拮抗剤のピモジドで完全に拮抗された.またARN-SPAの発現には, 針鎮痛の発現に関与するセロトニン系およびカテコールアミン系の下行性抑制系が働くことが明らかとなった.すなわちセロトニン系の下行性抑制系の起始核の中脳中心灰白質腹側部の局所破壊, あるいはセロトニンの拮抗剤のメチセルジドでARN-SPAは部分的に拮抗され, さらにカテコールアミン系の拮抗剤のフェントラミンの脊髄クモ膜下腔投与で部分的に拮抗され, メチセルジドとフェントラミンの同時投与, あるいは下行性抑制系の通路の脊髄後側索の切断で完全に出現しなくなった.また弓状核の刺激で中脳中心灰白質腹側部からは誘発電位が出現した.鎮痛抑制系である視床正中中心核外側部を局所破壊した後, 経穴でない部 (非経穴部) の刺激で現われる鎮痛は弓状核の破壊あるいはピモジドで出現しなくなった.以上の結果から弓状核は針鎮痛および非経穴部の刺激で現われる鎮痛の遠心路にあたっていることが判明した.また弓状核を起源とする下行性疼痛抑制系はセロトニン系とカテコールアミン系の下行性抑制を介して鎮痛を発現し, 弓状核からこれらの系に至るまでにはドーパミンニューロンが介在することが明らかとなった.
  • 宇佐美 信乃, 武重 千冬
    1983 年43 巻5 号 p. 629-638
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ストレス鎮痛発現の中枢経路を, すでに本教室の研究で明らかにされている経穴を刺激して現われる針麻酔の鎮痛 (AA) の中枢経路, 及び鎮痛抑制系を破壊した後現われる非経穴部の刺激で出現する鎮痛 (NAA) の中枢経路と比較して検討した.実験にはWistar系ラットを用い, 痛覚閾は尾逃避反応の潜伏期とした.大腿上部と背部に付着した脳波用電極を介して, 5秒に1回の頻度で持続1秒の直流電撃ショックのストレスを最初の10分間に1.5mAから3mAになるように順次強めて与えた.比較のための経穴部, 非経穴部の刺激は, それぞれ前脛骨筋及び腹筋に軽い筋収縮がおこる程度の強さで与えた.中脳中心灰白質背側部 (dP AG) , 同外側部 (IPAG) , 視床正中中心核外側部 (ICM) の局所破壊は電極の挿入によった.本研究の電撃ストレスで現われた鎮痛は, 刺激開始後30分で最大となり順次減少を示し, 後効果もみられた.このようにして現われたストレス鎮痛 (SIA) は下垂体の除去, ナロキソン (1mg/kg腹腔内投与) , あるいはデキサメサゾン (24時間前0.4mg/kg, 1時間前0.2mg/kg腹腔内投与) で完全に出現しなくなった.SIAにも有効性の個体差がみられたが, これはAAのそれとは全く関係がなかった.AAを発現する下垂体に至る求心路にあるdPAGを破壊しても, またAAの発現を阻止するクモ膜下腔へのナロキソンの投与によっても, SIAには何の影響もみられなかった.またSIAは一たん出現すると対照と同じSIAが現われるまでに4日を要したが, その間AAには全く影響が現われなかった.NAAと同じようにSIAはIPAGの局所破壊で出現しなくなったが, NAAを発現させるlCMを破壊しても, SIAの発現しなかった動物にはSIAは出現しなかった.ICM破壊後はSIAを出現させない程度の弱い刺激でNAAと同じ性質の鎮痛が出現するようになり, SIAを出現する強さの刺激ではナロキソンで拮抗されないNAAが出現し, その結果この場合のSIAはナロキソンで部分的にしか拮抗されなかった.SIA発現後4日間NAAを検したがSIAの影響はみられなかった.AAやNAAの発現の下行性抑制路である弓状核の破壊でSIAは出現しなくなった.以上のようにSIAはAAやNAAと性質を異にするので, SIAの中枢経路は, AAやNAAのそれとは異なることが結論された.
  • 毛利 博
    1983 年43 巻5 号 p. 639-649
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    諸種血液疾患123例につき血小板容積を検討し, 血小板機能との関連性をみた.容積は, EDTA-2K加血より多血小板血漿をとり, Isotoneにて3000倍に希釈し, Coulter Counter ZBIとChanalyzerを接続して測定し, mode, mean volume, megathrombocyte index (MI) で表現した.健康成人50例の正常値は, mode 6.71±0.83μ3, meanvolume 9.77±0.95μ3, M.I.21.07±2.87μ3であった.ITPでは, mode, mean volume, M.I.ともに高値で, 骨髄巨核球数は増加し, 大型血小板の増加は, 骨髄巨核球の増加に伴う幼若血小板の産生と関連があると思われた.また, 粒子容積の小さな部位に異常ピークがみられ, この由来はその大部分が血小板破砕物と思われる.容積は治療後血小板数の増加に伴い正常化した.再生不良性貧血では, 容積は低値で, 骨髄巨核球は減少しており, 本疾患における容積の減少は骨髄での血小板産生低下に伴う血小板供給の減少のためと思われる.急性白血病では, 全病型で容積は低値を示し, 特にDICを合併したAPLで著しく, 寛解到達後寛解前に比べ容積は増加した.異常蛋白血症では容積は低値を示し, 治療によりM蛋白量が減少すると凝集能は改善したが, 容積は不変であった.本疾患の機能低下の原因は環境の異常と思われる.悪性貧血でも容積は低値で, ビタミンB12投与により出血時間, 凝集能は正常化したが容積は不変であり, 血小板が大きいほど機能がよいという結論は得られなかった.悪性リンパ腫では容積は正常で, 白血化すると低値を示した.PNHでは, 容積は正常かやや低値であり, 凝集能は低下した.MPDの容積は正常であったが, 凝集能は多くの例で低下を示した.CMLの急性転化例, PVおよびETの血栓症合併例で容積は減少した.以上の諸点から, 種々の血液疾患により血小板容積は異なり, 大型血小板が必ずしも機能がよいという結論は得られず, 血小板機能の異常は, 血小板容積以外に各種疾串に伴う種々の病態に由来する要因が関与して生じるものと思われる.
  • 中神 和清, 和田 育穂, 木村 一成, 田中 一正, 吉尾 卓, 金重 博司, 周東 寛, 刑部 義美, 国枝 武文, 鈴木 一, 里見 ...
    1983 年43 巻5 号 p. 651-655
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    気管支喘息の病因の主体といわれる気道過敏性の検査として, 定在正弦波を用いるOscillation法により連続して呼吸抵抗の測定が可能な, アストグラフが広く用いられるようになってきている.このアストグラフ施行中の酸素分圧を, 気管支喘息33例, 非喘息性呼吸器疾患7例, 正常対照4例の計44例に, 非観血的な方法である経皮酸素分圧測定装置を用い連続的に測定し, その酸素分圧の変動を検討した.アストグラフ上, 反応閾値 (Cmin) を示す時点と酸素分圧の最高値を示す時点は同時に生じていた.気管支拡張剤投与後, 酸素分圧が前値に回復するのは, 呼吸低抗が低下開始する時点, 終了時抵抗を示す時点及び酸素分圧の最低値を示す時点の3点よりはるかに遅延していた.この遅延の程度は, 年齢, 及び, 喘息の型と特に関係は認められなかった.又, ほぼ同時期に行った他の呼吸機能のParameter (%VC, FEV1.0%, V50/V25, Rrs) とも相関関係が認められなかった.酸素分圧の低下率と呼吸抵抗の増加率との間に相関関係は認められなかった.酸素分圧の最低値と前値とは0.5%以下の危険率で有意の正の相関関係が認められた.以上の結果より, 通常より低酸素血症を示す様な症例に対しアストグラフ等呼吸機能検査を施行する時には, 通常考慮される以上に酸素分圧の低下を来たす可能性があり, 十分な注意観察が必要であると思われた.
  • 佐藤 巌, 神津 正明, 恩田 聰, 猪口 清一郎
    1983 年43 巻5 号 p. 657-668
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒトの舌骨筋群の機能を形態学的に解析するために, 最大筋腹横断面における筋線維の数, 太さおよび密度を計測し, ヒトの他筋と比較検討した.材料はホルマリン・アルコール注入屍14体 (♂: 10, ♀: 4) から得られたもので, 組織標本はツェロイジン包埋, H・E染色によった.結果は次のごとくである.1.舌骨筋の筋腹の横断面積, 1mm2中の筋線維数, これらを元にした断面の筋線維総数, 筋線維の太さの平均値 (μ2) , および密度はいずれも手の筋のそれに最も近かった.
    2.以上の筋線維総数, 筋線維の太さおよび密度によって舌骨筋群を分類すると最もよく発達した顎二腹筋前腹とオトガイ舌骨筋, 中等度の顎舌骨筋, 甲状舌骨筋, および胸骨舌骨筋, これよりもやや劣る胸骨甲状筋と肩甲舌骨筋の上・下腹, 最も劣っていた茎突舌骨筋に分けることができた.
    3.以上のことから舌骨筋の筋線維構成は喉頭の挙上と前方移動に関与する筋ではよく発達し, 後方移動に関与する筋はやや劣り, 舌骨の固定維持のみに関与する筋ではさらに弱いと考えることができた.
    4.筋線維の太さの大小は必ずしも年齢とは一致しなかったが, 筋線維の太さの分布型から見て, 正規分布型が基本で, 筋線維の減少に伴って代償性の筋線維肥大を起こし, 低分布型となり最後にすべての筋線維が小さくなって急峻型を示すという退縮過程が考えられた.
  • 沼尻 康男
    1983 年43 巻5 号 p. 669-676
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    Adenosine triphosphate (ATP) は, 強力な末梢血管拡張作用により血圧低下をもたらし調節性, 再現性, 確実性などの点で低血圧麻酔に有用であると考えられるが, 今回, 犬を用いて平均動脈圧50%降圧時における循環動態に及ぼす影響を具体的に検討した.その結果, 降圧はATP投与により瞬時に得られ, 降圧中, 心拍数の減少を認めたが, 動脈圧, 心拍数ともほぼ薬量依存的に効果が発現した.全末梢血管抵抗は, 動脈圧の低下率を上まわって著明に減少し, 同時に心拍出量の増加を認めた.この際, 心拍数減少を考慮すると著明な一回拍出量の増加が推測された.またPao2の上昇とPaco2の低下を認め, Base Excessはアシドーシスを示したが, pHの低下はPaco2の影響をうけて軽度であった.a-vDO2は減少を示したが, vO2は有意な変化を認めなかった.こうした作用を持つATPが, 同時に抗ショック作用を有し, 更に低血圧麻酔には禁忌とされている心疾患や, 肝障害, 腎障害の治療にも有用とされている点に注目し, 低血圧状態でも臓器血流の面で有利に働くのではないかと考え, 家兎を用いて平均動脈圧50%降圧下における心筋, 肝, 腎, 脾, 胃, 小腸, 大腸の各臓器における血流量の変化を水素クリアランス法により測定した.この際, 今日広く用いられているTrimetaphan (TMP) と比較検討したが, その結果, 血流増加を示したものはATPにおける心筋と肝であり, 逆に減少をみたものはTMPにおける心筋, 胃, 小腸, 大腸で, その他は有意な変化を認めなかった.以上によりATPは強力な末稍血管拡張により血圧下降を得ながら, 心拍出量を増加させ, 腎, 脾, 消化管で血流減少をみないばかりか, 心筋, 肝では増加を示し, 低血圧麻酔に使用した際の安全性が示唆された.
  • 瀬戸 明, 和田 裕子, 菊池 良知, 斉藤 吉人, 大場 文夫, 増野 純, 浅沼 勝美
    1983 年43 巻5 号 p. 677-686
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    サソリ毒による実験的慢性膵炎モデル作成において, 長期投与中に生じる毒の活性の低下の原因が, サソリ毒がタンパク毒素であるための抗毒素産生によるものと考えられ, これを実験的に検討し, 抗毒素に対処するための実験方法を考案した.結果は次の通りである. (1) 抗毒素中和反応を行い, その結果, 家兎に明らかな抗毒素の産生を認めた. (2) 毒+血清混合液を中和操作後, 正常家兎に投与し, 血中アミラーゼの変動を測定した結果, 正常血清を用いたものでは, 直線的増加になるのに対し, 抗血清 (抗毒素の産生が認められた家兎血清) の場合には, 横ばい状態となり, 抗毒素による毒の生理活性の抑制が明らかに認められた. (3) また膵及び唾液腺のヘマトキシリン・エオジン染色によるマウスの病理組織学的検索を行なったが, 抗血清を混和したものでは, 全域にわたり基本構造の乱れは全くなく, 抗毒素による影響が組織学的にも認められた. (4) そこで, 抗毒素による毒の活性の低下を毒の増加によって復活させるため, 最初にSalivationが認められるまで毒量を増加させたところ, 血中抗体価と毒の増量係数との間に, 対数的な直線関係が認められた. (5) 補正された毒量を抗毒素産生下の家兎に投与すると, 再び血中アミラーゼの著明な上昇をうながし, また, マウスに増量毒+抗毒素混合液を投与した結果, サソリ毒投与初期にみられる膵及び唾液腺での一連の強い組織反応 (腺房細胞の変性・空胞化, 間質の水腫等) が得られた.本実験的検討により, サソリ毒投与中における抗毒素の産生は, 毒の増量によって相殺されることが結論づけられ, これにより, サソリ毒を長期投与して, 恒常的膵過分泌状態を継続させることによる実験的膵炎の慢性モデル作成が, より具体的に形づけられたと考えられる.
  • 松本 博光
    1983 年43 巻5 号 p. 687-697
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ストレスによる血圧, 心拍数反応及び血中カテコラミン (CA) の変動を経時的に追跡し, 更にこのストレス下の血圧, 心拍数反応に対する交感神経α遮断薬, β遮断薬による抑制効果を検討することにより, 交感神経機能の関与の一端をうかがわんとし, 16週のSHRとWRを用い, 爽圧固定ストレス負荷法により, ストレス下における血圧, 心拍数反応及び薬剤の影響を検討した.1) 薬剤未処置群では, ストレス負荷後SHRの血圧は15分迄, WRは30分迄変化を認めなかったが, その後上昇し, SHRではストレス開始後58.1±4.4分に最大108±10.2mmHgの昇圧をみたのに比し, WRは72.5±4.6分後に最大76.2±5.1mmHgの昇圧をみたにすぎず, 両者に有意差を認めた.またSHRはWRに比し, 最大昇圧到達時間は有意に短かかった.心拍数の最大増加度およびその到達時間は, SHRとWRに有意差を認めなかった.2) ストレス負荷前, 負荷後15分, 60分において断頭採血し, 血中ノルエピネフリン (NE) , エヒ.ネフリン (E) を測定した所, SHR, WRともにNEは負荷前に比し負荷60分後に減少傾向を認め, Eは負荷15分で増加傾向を, 負荷60分で減少するもなおストレス負荷前に比し増加傾向を認めた.3) プロプラノロール (P) 1mg/kg, 10mg/kg, プラゾシン (pz) 0.1mg/Kg, 0.5mg/kg, ラベタロール (L) 1mglkg, 10mg/kgの腹腔内投与によるストレス下の血圧, 心拍数変化に対する影響をみた.PはSHR, WRの非ストレス下の血圧を変化させず, またストレス昇圧を有意には抑制しなかった.しかし心拍数の上昇を有意に抑制し, その抑制度はSHRが大であった.4) Pzは非ストレス時のSHRの血圧を有意に下降させ, またストレス負荷によるWR, SHRの昇圧を, 大量使用時においてのみ有意に抑制した.5) L投与下のストレスによる心拍数変動はPに近く, 血圧変動はPzに近い効果を示したが, 検討した用量では変化の程度は小であった.6) 今回のストレス負荷法によれば, ストレス負荷の初期に血圧上昇, 心拍数増加を示さない無反応期があること, β-receptorの阻害は, 非ストレス下の血圧のみならず, ストレス昇圧の抑制に対しても効果を示さないこと, α1-receptorの阻害は, SHRの非ストレス時の血圧を降下させるのみならず, WR, SHRのストレス昇圧の抑制をもたらすことが明らかにされ, ストレス負荷による血中CAの変動は, 血圧の変化と時相的には必ずしも平行しないことが示唆された.
  • 高木 康, 安井 辰夫, 新谷 和夫, 千住 紀, 五味 邦英, 石井 暢, 水上 忠弘, 日野 研一郎, 小笠原 寛, 森川 昭洋, 鶴岡 ...
    1983 年43 巻5 号 p. 699-703
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    末血の超生体染色で赤血球がゴルフボール様に染色される症例に遭遇し, 異常ヘモグロビンの存在を疑い種々の検索を行なった.デンプンゲルによる電気泳動で通常のヘモグロビンAよりfast位に易動する異常ヘモグロビンが観察された.更にイオン交換カラムクロマトグラフィにより異常分画を抽出し, PCMB (p-chloromercuribenzoic acid) 処理後のヘモグロビン電気泳動で, この異常分画はβ鎖と未解裂のヘモグロビンのみであることが確かめられた.以上の検索結果より本症例の異常ヘモグロビンはβ鎖のみからなるHbHである可能性が極めて強い.
  • 田中 源一, 田中 洋子, 村田 譲治, 藤澤 龍一, 平泉 隆, 美田 俊一, 会田 秀介
    1983 年43 巻5 号 p. 705-710
    発行日: 1983/10/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    結節型の皮疹を伴う35歳, 男子例と皮下型の皮疹を伴う26歳, 男子例の2例のサルコイドーシスを報告した.ステロイド療法開始後, 約1週間で皮疹は消失した.最近, 本症との関連が注目されている血清アンギオテンシン転換酵素 (ACE) は2例とも初診時に高値を示し, 治療経過とともに正常化した.
    Here, we report on two cases of sarcoidosis in a 35-year-old man with cutaneous lesions of the nodular-type and in a 26-year-old man with cutaneous lesions of the subcutaneoustype, respectively. In both cases, the serum angiotensin converting enzyme (S-ACE) had inrceased when the patients were first examined, and had returned to normal three weeks later with the administration of corticosteroids, and cutaneous lesions had disappeared one week later. The clinical significance of S-ACE in sarcoidosis is discussed.
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