昭和医学会雑誌
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下垂体の除去によるwrithing testで検した針麻酔の鎮痛の消失
高橋 厳太郎宇佐美 信乃楠本 盛一
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1983 年 43 巻 5 号 p. 615-618

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抄録
針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) は尾逃避反応あるいは発声法を痛みの閾値とした時は下垂体の除去で出現しなくなることが本教室の研究で明らかにされているが, その後, Fuらはphenylquinoneによるマウスのwrithing testを痛みの指標とすると, 下垂体の除去は針鎮痛に影響しないと報した.そこでラットを用いてwrithing testを指標として鎮痛に対する下垂体除去の影響を検した.Wistar系ラットの針鎮痛有効群, 無効群を尾逃避反応を指標として足三里に相当する前脛骨筋に針麻酔の刺激を与えて区分し, 針鎮痛有効群のラットにphenylquinone 2.5mg/kgを腹腔内投与してwrithing testを行い, 投与後5分間隔で各5分間に現われるwrithingの数を数え, その時間的経過を観察した.針刺激を与えるとwrithingは殆んど完全に抑制され, writhing testを痛みの指標とした時にも針鎮痛の効果が出現した.下垂体を周咽頭法で除去し, 3日以上経過した後再び針鎮痛を検すると, writhingは対照と同じように出現し, 針鎮痛の効果は出現しなくなった.Fuらの結果と著者らの結果との相違は, Fuらの針刺激の方法に問題があると推論された.すなわち著者らの針鎮痛はナロキソンで完全に拮抗されるのに反し彼らの針鎮痛はナロキソンで完全に拮抗されない鎮痛であり, また下垂体除去の効果も著者らの結果では完全に針鎮痛の出現が阻止されるのに反し, 彼らの鎮痛は部分的に出現が阻止されている.以上から, Fuらは著者らと異なった鎮痛を指標としていると考えられ, ナロキソンで完全に拮抗される鎮痛がいわゆる針鎮痛であるとすれば, Fuらの結果は充分否定出来ることが判明した.
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