抄録
Dinitrophenyl-Ficoll (DNP-Ficoll) はThymus Independent type 2 (TI-2) 抗原として知られているが, Mosierらにより, この抗原はnormalおよびT cell-depleted spleen cellsにmitogenesisを誘導しないと報告されている.しかし, NordinらはT cellsあるいはT cell-derived soluble factorが, このTI抗原のハプテン部分に対する抗DNP反応の誘導に強く関与していることを見出し, また最近では細胞間相互作用における, 種々の細胞由来液性因子の重要性が明らかにされつつある.そこで著者らは, DNP-Ficollのmitogenic activityを上記の観点から検討を加えた.すなわち, ヒツジ赤血球 (SRBC) で免疫されたC57BL/6とICR系マウス (8~12週令) の脾細胞を用い, DNP-Ficollと共に48時間培養した時のDNA合成を3H-thymidineの細胞内への取込量 (cpm) で調べた.SRBCの免疫量は4×108cells/マウスであり, 静脈内に投与された.培養された脾細胞の細胞濃度は2×106~5×106cells/mlの割合であり, 添加されたアイソトープ量は10μCi/mlの割合であった.尚, 培養液にはFetal Bovine Serum (FBS) を添加しなかった.得られた結果は以下のようであった. (1) SRBCで免疫後6日目のC57BL/6系マウスの脾細胞を用いた時, DNP-Ficoll (0.0002, 0.002および0.02μg/ml) の添加群では, 対照群と較べ, DNA合成の増加していることが見出された.すなわち, 対照群の8269±360.8cpmに対し, それぞれ9229±418.2, 9477±427.2および9519±462.5cpmであった. (2) 2, 4および8日目の脾細胞では対照群のcpmと変らなかった. (3) 上記6日目のDNA合成の増加は, ICR系マウスの脾細胞でも同様に認められた.すなわち対照群の24500±1986.7cpmに対し, 32062±1009.9, 32618±1215.4および30876±1077.6cpmで, その差は顕著であった. (4) 更に, このICR系マウスでは4日目の脾細胞でもC57BL/6系マウスの6日目と同程度のcpmの増加が見出された. (5) しかし, 脾細胞の代りにnylonwoolcolumnで分離したTあるいはB細胞を用いた実験では, DNP-Ficollの添加によりDNA合成は全く影響されないことが判った.更に著者らは, FBSのmitogenic activityを調べた結果, (6) 1×106cells/mlの細胞濃度ですら5%FBSで2636±55.3, 10%FBSで4084±80.0, 20%FBSで5280±63.5cpmを得た.FBSの代りにsalineを用いた対照群では1073±73.1cpmであった.従って, もし培養液にFBSを加えていたならばDNP-Ficollのmitogenic activityは見出し得なかったであろう.cpmの増加が認められた4~6日目の時期がIgMからIgG抗体産生へのclassswitchの時期に該当していることは興味深く思われた.