抄録
酵母細胞壁より抽出したzymosan粒子は, 農夫肺の吸入性抗原であるmouldy hay dust (Micropolyspora faeni) と同様にマクロファージを漕性化し加水分解酵素の遊離を促進したり, alternative pathwayを介して補体系を活性化する働きがある.そのzymosanを経気道的にラットの肺内に注入し肺組織障害を惹起させ, 6時間, 24時間, 5日, 14日にて光顕的に観察した.さらにその病変がgold sodium thiomalate (以下GST) , prednisolone, ketoprofenおよびCuchlorophyllinの各薬剤処置によってどの様に変化するかを注入後5日の時点で観察した.zymosan注入後6時間で多核白血球の浸潤が肺胞壁, 血管周囲および細気管支周囲に認められる様になり, 24時間で多核白血球の浸潤は全例に認められた.5日では, 肺胞壁には多核白血球の浸潤はほとんど認められなかったが, むしろリンパ球の浸潤が著明となり, マクロファージの浸潤も認められた.また肉芽腫様変化が全例で認められた.14日における変化は根本的には5日と同様であったが, 5日では認めなかった肉芽腫が認められる例があった.以上の様な肺病変は, zymosanのalternative pathwayを介する補体漕性化とともに, zymosanが異物粒子としてマクロファージなどに食食されて生ずる一連の非特異的貧食反応を介して生ずるものと考えられる.Zymosan注入後5日目の組織変化に対する薬剤の効果は, GSTの処置群では, リンパ球, マクロファージの浸潤・集積および肉芽腫様変化は, いずれも全例で抑制された.prednisolone処置群では, リンパ球の浸潤はやや抑制されており, 肉芽腫様の変化部位にもマクロファージの集積は認められず, リンパ球の集積の程度も弱かった.prednisoloneによるマクロファージの浸潤・集積に対する抑制がみられた.ketoprofen処置群では, 抑制は認められなかった.Cuchlorophyllin処置群では, 多核白血球の浸潤およびリンパ球の浸潤はほとんど認められなかった.これに反しマクロファージの浸潤がめだち, 少数ながらほとんどマクロファージからなる肉芽腫像も認められた.4種の薬剤のうちzymosanにより惹起される肺病変に対し最も抑制が強く認められたものは, GSTであった.