昭和医学会雑誌
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モルモットの各種臓器ミトコンドリア中に含まれるMAOの複数性の検討
小畑 俊男桜井 靖宏片山 雅子庄 貞行安原 一
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1984 年 44 巻 4 号 p. 493-499

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抄録

雄性モルモットの脳, 肝臓, 腎臓および腸ミトコンドリア中に含まれるMAOの複数性について検討した.基質はtyramine, serotonin (5-HT) およびβ-phenylethylamine (β-PEA) を用いてclorgyline, deprenylおよびpargylineを阻害剤として検討した.tyramineを基質とした場合MAOのKm値は各臓器とも同じで約100μMであった.そこで基質濃度をすべてこの2倍の200μMとし, 各臓器中のMAOの複数性についてそれぞれの阻害曲線から検討した.脳についてはtyramineを基質とした場合clorgylineとdepreny1でdouble-sigmoid型を示したことより両type MAOを含むことが認められた.肝臓, 腎臓および腸ではdeprenylによるtyramineおよびβ-PEAに対する阻害曲線がdouble-sigmoid型を示したことより両type MAOを含むことが認められた.次に各臓器中に含まれるそれぞれのtypeのMAOの割合について比較検討した.基質濃度が一定であることよりdeprenylによるtyramineに対する阻害曲線のプラトー部分の活性から各臓器中におけるtype A MAOを含む割合を比べたところ腸がいちばん多く次に腎臓, 脳, 肝臓の順であった.また脳と肝臓では50%前後type B MAOが含まれるものと思われる.脳を除きclorgylineおよびpargylineのtyramineに対する阻害曲線はすべてsingle-sigmoid型を示した.三種阻害剤で各臓器MAOに対し異なった阻害曲線を示したことは, 両type MAOに対するselectivityの相違によると思われる.すなわちclorgyline, depreny1, pargylineの順にselectivityが悪くなるためと思われる.以上の実験結果より雄性モルモットの各臓器ミトコンドリア中には両type MAOが存在し, その割合は臓器によりかなり異なることが示唆された.

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