抄録
血漿β-thrombo910bulin (β-TG) および尿中β-TGを, 血液疾患 (特に骨髄増殖性疾患: myeloproliferative disorders; MPD) 65例, 腎疾患65例の計130例で測定し, 臨床的検討を行なった.血漿および尿中β-TGの正常値は, それぞれ22.7±13.0, 0.33±0.13 (mean±S.D.) ng/mlであった.MPDでの血漿β-TG値は81.7±67.6ng/mlと高値を示し (P<0.01) , 特に本態性血小板血症, 慢性骨髄性白血病で顕著であった.また血漿β-TGは血小板数と有意の相関を示し, 特に本態性血小板血症, 真性多血症でその傾向が明らかであった.また凝集能との関連では, epine-phrine二次凝集欠如群, ristocetin凝集欠如群で血漿β-TGは増加し, 血小板自然凝集陽性例でも増加を示した.急性白血病では, 血漿β-TG値はほぼ正常範囲にあり, 悪性リンパ腫, 異常蛋白血症では一定の傾向を示さなかった.発作性夜間血色素尿症では血漿β-TGは増加傾向を示し, また特発性血小板減少性紫斑病で高い例が多かった.透析施行腎不全患者での血漿β-TG値は113.8±45.6ng/mlと高値を示し, 透析期間長期例で高く, 透析中経時的上昇を認めた.また透析患者で, 出血時間延長群, 粘着能低下群, 凝集能低下群に血漿β-TG値が高い傾向を示し, 特にADP凝集で明らかであった.非透析腎不全, 腎機能正常腎疾患での血漿β-TG値は, それぞれ83.4±39.3, 42.6±20.4ng/mlと高値を示し, 血清クレアチニン値と正の相関を認めた (r=0.743, P<0.01) .尿中β-TG値は, MDPで0.41±0.23ng/m1であり, 特に慢性骨髄性白血病, 本態性血小板血症で有意の増加を示した.腎機能低下腎疾患およびネフローゼ症候群での尿中β-TG値は, それぞれ0.94±0.96, 0.93±0.67ng/mlと高値を示したが, MDP, 腎疾患ともに, 血漿と尿中でβ-TGの値に相関は認められず, 尿中β-TGと尿中蛋白量との間にも相関はみられなかった.以上の諸点から, 血漿β-TGの増加は, MPDでは血小板数ならびに機能異常が, 腎疾患では腎でのβ-TGの異化作用の低下ならびに人工透析が関与していると思われる.尿中β-TG値は, 必ずしも血漿値を反映せず, 特に腎機能低下例では, その評価に注意を要する.