昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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45 巻, 6 号
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  • 安本 和正, 稲田 豊
    1985 年 45 巻 6 号 p. 729-735
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 森 義明
    1985 年 45 巻 6 号 p. 737-738
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 栗本 忠, 市田 茂人, 佐藤 成實, 平山 八彦
    1985 年 45 巻 6 号 p. 739-749
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Thymoxamine hydrochloride (thymoxamine) の体内動態とくにpharmacokineticsとbioavailabilityについて, ラット, ビーグル犬およびウサギを用いて検討した.1) Thymoxamineの経口 (p.o.) ならびに静脈 (i.v.) 投与において未変化体thymoxamineは, 血中に認められず遊離型deacetyl-thymoxamine (DAM) とその抱合体がみられ, さらに極くわずかのdeacetyl-demethyl-thymoxamine (Met-X) が検出された.2) 遊離型DAMを指標として, そのpharmacokinetic parameterを算出した.その結果, thymoxamineのP.o.投与では, 消化管からの吸収ならびに消失が比較的速やかであることが示唆され, さらにラットおよびビーグル犬では, ヒトに比較し初回通過効果をうけやすいことが明らかにされた.3) ウサギでの「胃・小腸吸収実験標本」を作製し検討したところ, thymoxaminは小腸だけでなく一部胃からも吸収されることが確認された.4) ラットへのthymoxamine 100mg/kg p.o.投与では, 15~30分に腎や肝に高濃度の代謝物DAMが認められ, 脳へもわずかながら分布し血中濃度と平行して減少した.48時間までの尿・糞中への総排泄率は94%で, thymoxamine投与による体内蓄積性はないものと思われる.5) ビーグル犬において, thymoxamine錠120mg/body (14.4mg/kg) p.o.投与で耳部皮膚温が上昇し, その際のDAMの最小有効血中濃度は0.5μg/mlであった.6) ビーグル犬におけるthymoxamineとDAMのbioavailabilityの比較では, thymoxamineはDAMより吸収速度, 吸収率が大きく, thymoxamineの方がbioavailabilityが優れていることが示唆された.したがって, thymoxamineはDAMのbioavailabilityの改善を目的とした“prodrug”と考えることができよう.
  • 栗本 忠, 中田 博子, 平山 八彦
    1985 年 45 巻 6 号 p. 751-758
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Thymoxamine hydrochloride (thymoxamine) とその代謝物deacetyl-thymoxamine (DAM) とdeacetyl-demethyl-thymoxamine (Met-X) の薬理作用につき, 種々の摘出平滑筋標本を用いて検討した.ラット輸精管標本およびラット胸部大動脈に対するα-adrenoceptor遮断作用の強さは, phentolamine>thymoxamine≒DAM>Met-Xの順で, Met-XはthymoxamineやDAMに比べ約1/10の強さであった.さらに, ウサギ胸部大動脈標本による検索で, thymoxamineとDAMの競合的α-adrenoceptor遮断作用は, norepinephrineよりさらにα1-adrenoceptorに高い親和性を有するphenylephrineに対し, 強い拮抗作用を示すことからα1-adrenoceptorに選択的であることが推察された.モルモット回腸標本での抗ヒスタミン作用は, α-adrenoceptor遮断作用と同様, DAMとthymoxamineは同程度の強さで, diphenhydramineの約1/30であり, Met-Xのそれはさらに弱かった.Thymoxamine, DAMおよびMet-Xは, モルモット回腸標本でのacetylcholine収縮あるいはラット胃fundusstripおよび胸部大動脈標本におけるserotonin収縮に対し, 高濃度において非特異的な収縮抑制を示すのみで著明な拮抗作用は認められなかった.また, ウサギ胸部大動脈標本を用いた高K脱分極液でのCa2+収縮には, thymoxamineとその代謝物いずれにおいてもCa拮抗作用はみられなかった.さらに, K+収縮に対するthymoxamineの非特異的な抑制作用には, cyclic AMPやcyclic GMPなどの環状ヌクレオチド系の関与しないことが明らかにされた.以上の結果, DAMはthymoxamineと同様弱い抗ヒスタミン作用とα-adrenoceptor遮断作用を有し, その作用は比較的α1-adrenoceptorに強い親和性を示すことが推察された.さらにMet-Xの薬理学的性質はDAMのそれと類似しているが, その作用は弱い.この様にthymoxa-mineの主代謝物DAMが作用強度と性質の両面においてthymoxamineと差がないことは, ヒトを含めた諸種動物の体内薬物動態を勘案し, thymoxamineの臨床的効果が期待できることを実験的に裏付けたものと考えられる.
  • 栗本 忠, 平山 八彦
    1985 年 45 巻 6 号 p. 759-768
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Thymoxamine hydrochloride (thymoxamine) とその代謝物deacetyl-thymoxamine (DAM) とdeacetyl-demethyl-thymoxamine (Met-X) のα1およびα2-adrenoceptorに対する遮断作用の選択性について, 摘出ウサギ肺動脈標本を用いてprazosin, phentolamine, yohimbineならびにifenprodilと比較検討を行った.1.α-adrenoceptor agonist, norepinephrine (NE) とphenylephrine収縮に対しいずれの薬物も競合的α-adrenoceptor遮断作用を有し, その強さはNEにはprazosin>phentolamine>DAM=ifenprodil≒thymoxamine>yohimbine≒Met-Xであり, phenylephrineに対してはprazosin>phentolamine≒DAM≒thymoxamine>ifenprodil>Met-X>yohimbineの順であった.2.神経の電気刺激による内因性catecholamine収縮に対してthymoxamine, DAM, ifenprodilおよびprazosinは用量依存的にtwitch responseを抑制する.一方低濃度のyohimbineはこのtwitch responseを増強させた.3.3H-norepinephrine (3H-NE) を用いた検索において, α2-adrenoceptor antagonist, yohimbineは神経刺激による3H-NE efflux量の増加を促進し, 収縮反応には軽度な抑制であった.非選択的なphentolamineは, 3H-NE effluxの増加とともに著明な収縮抑制がみられ, 程度差こそあれifenprodilでも同様な作用が認められた.これに比較し, thymoxamine, DAMならびにMet-Xはprazosin同様, 特異的なα1-adrenoceptor遮断作用を有し, presynapse側からの3H-NE efflux量の変化に影響することなく, 著明な収縮抑制がみられ, α2-adrenoceptor agonistであるclonidineの3H-NE放出抑制作用にも何ら影響を及ぼさなかった.従って, thymoxamineとその代謝物DAMとMet-Xは, yohimbine, phentolamineおよび脳循環代謝改善薬であるifenprodilとは異なり, 降圧薬prazosinと類似し, 特異的なpostsynaptic α1-adrenoceptor遮断作用を有することが明らかにされた.また, thymoxamineがDAMのprodrugであると考えられ, in vitroの系において代謝物DAMがthymoxamineと同様, 選択的なα1-adrenoceptor遮断作用を有することは, 生体内でのthymoxamineの薬理作用発現に重要な意味をもつものである.
  • 栗本 忠, 和田 重次, 志熊 廣夫, 平山 八彦
    1985 年 45 巻 6 号 p. 769-777
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Thymoxamine hydrochloride (thymoxamine) の脳循環作用と脳代謝賦活作用について検討した.1.Thymoxamineは摘出イヌ脳底動脈標本においてα2-adrenoceptor agonist, clonidineよりもα1-adrenoceptor agonist methoxamine収縮に対しより強い抑制作用を示した.2.MethoxamineおよびK+収縮に対するthymoxamineの抑制作用は, イヌ前腸間膜動脈や大腿動脈より脳底動脈に選択的に作用し, その選択性はifenprodilやprazosinよりも優れていた.3.ウサギ耳部血管と耳部皮膚温に対しthymoxamine 120mg/kg/day 5日間連続経口投与では, 投与後直ちに耳部血管拡張作用とともに耳部皮膚温の上昇がみられそれらの作用は経日的に著しい差異はない.4. Thymoxamine (0.03-3.0mg/kg i.v.) は, 用量に対応してネコ脳軟膜pial arteryを拡張し, 50μm以下および50-100μmの微小血管に対して著明に作用し, その作用持続時間も長い.5.麻酔ネコにおいて, thymoxamine (0.1-3.0mg/kg i.v.) は, 脳底動脈だけでなく内頸動脈血流量の著しい増加を示し, その作用はpapaverineの約2~2.5倍であった.6. d-tubocurarine不動化ネコにおける脳組織血流に対しthymoxamine (0.3-3.0mg/kg i.v.) は, 扁桃核と海馬領域の組織血流が著しく増加し, 大脳皮質および視床下部領域の脳組織血流も増加傾向を示した.7.高血圧自然発症ラット (SHR) の両側頸動脈結紮による脳虚血条件下での脳ミトコンドリア呼吸能の低下に対し, thymoxamineは酸素消費量 (O2uptake) および呼吸調節率 (respiratory control rate: RCR) をともに上昇させ, ミトコンドリア呼吸能の改善作用が認められた.これらthymoxamineの脳循環改善作用と脳代謝賦活作用は, 脳血管障害治療薬として臨床的有効性を示唆するものと考えられる.
  • 大庭 忠弘, 角南 有美, 坂本 浩二, 小口 勝司, 小林 真一, 安原 一
    1985 年 45 巻 6 号 p. 779-782
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    健康成人におけるcatecholamine投与による血漿catecholamine濃度変化と心拍数, 血圧, Katz index, 心電図T波高, 血清K濃度変化との相関性について検討した.対象は健康男子医学生27名でnoradrenaline投与群8名に分けて, 単回皮下投与した.血漿noradrenaline濃度は0.4mg noradrenaline投与後5分に1.78±0.28から11.09±2.98pmol/mlと有意に上昇し, 血漿adrenaline濃度は0.3mg adrenaline投与後5分に0.28±0.06から1.37±0.26pmol/mlと有意に上昇した.noradrenalineの投与により収縮期血圧は121±3.28から133.2±4.45mmHgへと拡張期血圧は65.8±2.88から81.1±3.25mmHgへと有意に上昇し, 心拍数は66.2±3.4から55.4±2.26beat/minへと有意に減少した.Katz index・血清K濃度に変化なく, 心電図T波高は増加傾向を示した.adrenalineの投与により収縮期血圧, 心拍数は増加傾向, 拡張期血圧は減少傾向を示した.Katzindexは増加傾向を示し血清K濃度に変化なく, 心電図T波高は5.07±0.38から4.17±0.48mmに有意に減少した.adrenaline投与による心電図T波高の減少は, 血清K濃度変化や心筋虚血による二次的なものと言うよりは, 心筋細胞膜に対する直接作用と思われた.
  • 室 増男
    1985 年 45 巻 6 号 p. 783-788
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    筋の収縮力の低下は, 代謝生成物・細胞内外のイオン濃度および血流の変動などによって惹起され, 筋疲労現象の一つとされている.本研究は血流と収縮力の維持機構との関わりを筋電図学的に検討した.
    ヒトを長座位姿勢にして, 下腿三頭筋に電気刺激を与え, 足底屈方向への等尺性強縮を起させ種々の観察を行なった.強縮刺激強度は, 最大随意収縮に対する15%, 30%, 50%, 70%, 100%の強さとした.まず膝窩部の脛骨神経部位に皿刺激電極 (φ2mm) を置き, 刺激幅は300μs, 刺激頻度は80Hzと20Hzとした.誘発電位は, 腓腹筋 (MG) とヒラメ筋 (Sol.) の腹筋から表面電極 (φ4mm) によって双極誘導した.実験は, 1分間の強縮刺激期間中, 阻血を行なったときと行なわなかったとき, さらに30秒間阻血した後直ちに解除した時の3条件について行なった.その阻血条件は同側肢の大腿部を280トルのカブ圧に設定した.
    80Hzで刺激した場合の強縮力は, 約5秒間維持されるがその後急激に減少し始め, ほぼ30秒後には約20%に減少した.この強縮力の変化は阻血により顕著な変化を示さなかった.一方活動電位も阻血の有無にかかわらず急速に消失した.20Hzで刺激した場合は, 1分間連続阻血の有無にかかわらず, その強縮力の低下は現われなかった.しかし30秒間阻血した後の解除では, 強縮力は約85%から90%に減少した.MGの活動電位の振幅は, 阻血の解除により下降したが, Sol.は下降しなかった.MGの活動電位振幅は阻血: 解除により45%も減少した (P<0.001) .さらにその時の興奮伝導時間は, 時間経過とともに遅延した.
    上述の様に, 80Hz刺激により起こされた強縮力の急激な低下は, 筋の興奮性低下および細胞外K+の蓄積増加に起因する機序によるものと考えられる.これは阻血条件そのものには無関係であることが判明した.一方, 20Hzでの刺激時の場合, 阻血解除により強縮力は低下したが, 活動電位はSol.の場合は減少しなかった.この様な現象は, 両筋の筋線維タイプ構成比に関係するものと考えられる.また細胞外液量の変化が, 主に速筋線維タイプの収縮力の維持機構に重要な影響を与えることが推察された.
  • 第一報 ウサギ血中エンドトキシンの新しい高感度定量法とその実験的応用
    宇佐美 博幸
    1985 年 45 巻 6 号 p. 789-798
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    エンドトキシンの高感度測定が可能である発色合成基質を用いたLimulus testによるウサギ血中の微量エンドトキシンの定量を行なうための諸条件について検討し, 以下の結論を得た.1) 従来, LGTにおいてヒトPRP処理に汎用されてきた, クロロホルム法および希釈加熱法では, エンドトキシンの添加回収率が非常に低く, またクロロホルム法は, 非特異的アミダーゼ活性の残存が認められた.2) PRP中のLimulus test影響物質除去のために, 0.26 MPCAを試料に加え, 60℃で5分間反応を行なうことにより, その影響物質を完全に除去できることが明らかとなった.3) 本PCA法を用いてウサギのPRPに添加したE. coli0111: B4, E. coli055: B5, E. coli0127: B8, S. typhimurium, S. minnesota9700, S. typhosa, S. abortius-equi, S. enteritidis, Shigella flexneri, Pseudomonas aerugznosa由来の10種のエンドトキシンの回収率を求めると, ほぼ100%であり満足できる回収率であった.4) 本PCA法を応用して, ウサギの耳静脈内に接種したエンドトキシンの経時的な変動を測定すると, 5μg/kg接種群においては接種30分以内に98%以上が消失し, 4時間後にほぼ正常値に回復した.一方, 500μg/kg接種群では, 投与15分で平衡状態に達しており, 24時間後にも高濃度のエンドトキシンが血液中に残存することが明かとなった.5) 発熱とエンドトキシンの関係については, エンドトキシン接種後の2つの発熱ピークはいずれも, エンドトキシンによる直接の発熱ではなく, エンドトキシンにより誘発された内因性の発熱因子によるものと考えられた.6) ウサギに精製TSST-1を0.1または100μg/kg接種しても血中にはエンドトキシンが検出されなかった.また, TSST-1を前接種した後にエンドトキシンを接種すると致死感受性が亢進した.このときの血中エンドトキシン濃度は, エンドトキシン単独接種群と比較して明らかに高かった.エンドトキシンに関する実験動物として汎用されているウサギの血中エンドトキシン定量法はこれまで確立されていなかった.本法は簡便で再現性も良く, 精度も検出限界1pg/ml以下と高く, 実験動物の血液中のエンドトキシン測定に有用と思われる.
  • 藤下 悌彦, 村居 真琴, 武重 千冬
    1985 年 45 巻 6 号 p. 799-805
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
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    教室の従来の研究で, 1) 経穴にあたる前脛骨筋を低頻度刺激すると針麻酔の鎮痛が出現するが, 経穴でない部の腹筋を同じ条件で刺激しても鎮痛は出現しない.2) しかし視床正中中心核外側部 (L-CM) を局所破壊すると経穴部の刺激による鎮痛は増大し, 針鎮痛出現経路を局所破壊して出現しなくなった鎮痛が再び出現するようになり, また非経穴部の刺激で鎮痛が出現するようになる.3) 針鎮痛がナロキソンで結抗され, デキサメサゾンで拮抗されないのに反し, 非経穴部刺激による鎮痛はデキサメサゾンで拮抗され, ナロキソンで拮抗されないことなどが明らかにされている.本研究では視床下部後部にも前述のLCMの様な鎮痛抑制系が存在することを検索した.またD-フェニールアラニン (DPA) は鎮痛抑制系を破壊したのと同じ作用があることがDPA作用後の鎮痛の発現状況から示唆されているので, 視床下部後部の刺激による鎮痛抑制に対するDPAの作用を検した.ラットの尾逃避反応を痛みの閾値として検した針鎮痛と, それと同程度の鎮痛を示す腹腔内投与のモルヒネ (0.5mg/kg) で現われる鎮痛は, ともに視床下部後部の限局された部位を電極挿入によって局所破壊すると増大する例と増大しない例が現われた.増大した鎮痛は挿入電極を介して与えた電気刺激によって増大した分だけ拮抗され, またデキサメサゾンで殆んど拮抗され, 残余の鎮痛はナロキソンで拮抗された.増大しなかった鎮痛は, 挿入電極を介して与えた電気刺激によって刺激の期間中完全に拮抗され, またデキサメサゾンで大部分拮抗された.したがって増大した鎮痛は抑制系のみが, 増大しなかった鎮痛は抑制系と針鎮痛発現経路の両者が局所破壊された結果といえる.またこの状態では非経穴部の刺激で鎮痛が発現した.視床下部後部の電気刺激によって鎮痛が完全に抑制された例についてD-フェルアラニン (250mg/kg) を腹腔内に投与し, 30分後同様の刺激を与えたが鎮痛の抑制は出現しなかった.すなわち, 視床下部後部の刺激による鎮痛の抑制はDPAによって完全に拮抗された.以上により鎮痛抑制系は視床下部後部にも存在することが明らかとなった.また, DPAは鎮痛抑制系を電気刺激して現われる鎮痛抑制作用に完全に拮抗した.
  • ―血液疾患とくに慢性骨髄増殖性疾患ならびに腎疾患について―
    西山 博明
    1985 年 45 巻 6 号 p. 807-815
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    血漿β-thrombo910bulin (β-TG) および尿中β-TGを, 血液疾患 (特に骨髄増殖性疾患: myeloproliferative disorders; MPD) 65例, 腎疾患65例の計130例で測定し, 臨床的検討を行なった.血漿および尿中β-TGの正常値は, それぞれ22.7±13.0, 0.33±0.13 (mean±S.D.) ng/mlであった.MPDでの血漿β-TG値は81.7±67.6ng/mlと高値を示し (P<0.01) , 特に本態性血小板血症, 慢性骨髄性白血病で顕著であった.また血漿β-TGは血小板数と有意の相関を示し, 特に本態性血小板血症, 真性多血症でその傾向が明らかであった.また凝集能との関連では, epine-phrine二次凝集欠如群, ristocetin凝集欠如群で血漿β-TGは増加し, 血小板自然凝集陽性例でも増加を示した.急性白血病では, 血漿β-TG値はほぼ正常範囲にあり, 悪性リンパ腫, 異常蛋白血症では一定の傾向を示さなかった.発作性夜間血色素尿症では血漿β-TGは増加傾向を示し, また特発性血小板減少性紫斑病で高い例が多かった.透析施行腎不全患者での血漿β-TG値は113.8±45.6ng/mlと高値を示し, 透析期間長期例で高く, 透析中経時的上昇を認めた.また透析患者で, 出血時間延長群, 粘着能低下群, 凝集能低下群に血漿β-TG値が高い傾向を示し, 特にADP凝集で明らかであった.非透析腎不全, 腎機能正常腎疾患での血漿β-TG値は, それぞれ83.4±39.3, 42.6±20.4ng/mlと高値を示し, 血清クレアチニン値と正の相関を認めた (r=0.743, P<0.01) .尿中β-TG値は, MDPで0.41±0.23ng/m1であり, 特に慢性骨髄性白血病, 本態性血小板血症で有意の増加を示した.腎機能低下腎疾患およびネフローゼ症候群での尿中β-TG値は, それぞれ0.94±0.96, 0.93±0.67ng/mlと高値を示したが, MDP, 腎疾患ともに, 血漿と尿中でβ-TGの値に相関は認められず, 尿中β-TGと尿中蛋白量との間にも相関はみられなかった.以上の諸点から, 血漿β-TGの増加は, MPDでは血小板数ならびに機能異常が, 腎疾患では腎でのβ-TGの異化作用の低下ならびに人工透析が関与していると思われる.尿中β-TG値は, 必ずしも血漿値を反映せず, 特に腎機能低下例では, その評価に注意を要する.
  • 鈴木 博, 片岡 徹, 河村 正敏, 河村 一敏
    1985 年 45 巻 6 号 p. 817-831
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    多発胃癌は近年増加傾向にあり, 臨床的にはいかに多発病巣を確実に診断するか, あるいは外科手術に際しいかに癌遺残を回避するか, などきわめて重要な問題を抱えている.一方, 病理組織学的には癌発生の背景粘膜あるいは癌の多中心性発生ならびに多発病巣の融合, 単一化など, 胃癌の発生, 発育を考えるうえで興味が持たれる.今回, 著者らは過去26年間 (1956~1981) の初発胃癌切除例1, 116例中, Moertelらの判定規準に合致した多発癌症例49例 (4.4%) を対象とし, 臨床病理学的特徴ならびに各病巣の大きさ (面積) と病巣間距離を測定し, 各病巣の発育進展に伴ってそれらが衝突し, さらに単一の病巣へ融合する可能性, また如何なる病巣が融合しやすいかということを中心に検討した.早期多発癌例は早期癌229例中16例 (7.0%) , 進行癌多発例は進行癌887例中33例 (3.7%) と早期癌に発生頻度が高かった (P<0.05) .年齢分布は37~81歳 (平均61.6歳) , 男女比は2.3: 1と単発癌に比べて高齢者, 男性に多い傾向がみられた・病巣数は2個43例 (87.8%) , 3個5例 (10.2%) , 4個1例 (2.0%) であり, 以下の病理学的検討には2個の症例を用いた.占居部位は主・副病巣ともにA, M領域に属するものが多く, C領域には86個中5個 (5.8%) のみであった.画像解析システムで測定した病巣の大きさの平均値は主病巣1, 624.3±241.7mm2 (Mean±S.E.) , 副病巣422.8±82.7mm2, また早期癌併存例, 進行癌併存例の2群を比較すると, 主・副病巣とも進行癌併存例の方が大きかった (P<0.005) .肉眼型では早期癌併存例は15例中11例 (73.3%) と多くが主・副病巣を同一としたのに対し, 進行癌では一定の傾向がみられなかった.組織型では主・副病巣ともに分化型癌が27例 (62.8%) と多く, 副病巣によりその傾向が強く, 分化型/未分化型比は主病巣2.6, 副病巣3.8であった.背景胃粘膜は主病巣69.8%, 副病巣74.4%と多くが中間帯領域に属し, 中間帯領域と癌発生との関連性が示唆された.配列様式は斜配列53.5%, 縦配列25.6%, 横配列20.9%の順に多く, 各々の病巣間距離は46.0±6.3mm, 27.0±7.4mm, 22.9±8.5mmであり, 斜配列例が最も離れていた (P<0.05) .また, 多発病巣の融合化の可能性を検討するに当り, 病巣間距離 (X軸) と主・副病巣の大きさの和 (Y軸) との関係より, Y=59.84-0.27X, 相関係数r=-0.36 (P<0.05) という回帰直線が得られた.その結果, 主・副病巣の発育増大に伴って, 病巣間距離が漸次接近し, 最終的には単一病巣へ融合する可能性が, また横配列例に主・副病巣の近接している症例が多く (P<0.05) , 融合しやすいことが推測された.3個以上の多発癌の臨床病理学的特徴は2多発癌例と類似した傾向がみられた.遠隔成績は5年生存率 (直接粗生存率) は単発癌例63.6±2.2%であるのに対し, 多発癌例69.2±9.1%と多発癌例がやや良好であった.
  • 杉本 裕之, 武田 健, 紺野 邦夫
    1985 年 45 巻 6 号 p. 833-837
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Mitogenの刺激を受けた末梢血の白血球がヒト骨髄性白血病細胞を分化誘導する因子を産生することが知られている.本研究では, ヒト線維芽細胞が同様な分化誘導因子を産生するか否かを検討した.ヒト胎児由来の線維芽細胞WI-38の培養上清 (FCM) をヒト単球性白血病細胞株のU-937に添加し, 分化誘導活性を測定した.FCMは濃度依存的にNBT還元能を誘導し, 貪食能, 非特異型エステラーゼ活性を増加させた.Fcレセプターの誘導は弱く, 特異型エステラーゼ活性には殆んど影響を与えなかった.形態的にはマクロファージ様の細胞が認められた.FCMはU-937以外にも同じ単球性のTHP-1細胞には強い分化誘導活性を示したが, 骨髄性のML-1やHL-60にはほとんど活性を示さなかった.FCM中の分化誘導活性は, トリプシン消化でほぼ完全に失活したが, 70℃30分間の温熱処理や, pH2 24時間処理には比較的安定であった.Sephadex G-150のゲル濾過による解析では, 分子量約80, 000に著明な活性が認められ, void volumeにその活性が認められるcolony stimulating factor (CSF) とは区別された.以上より, ヒト線維芽細胞は, ヒト単球性の白血病細胞をマクロファージ方向へ分化誘導する因子を産生していることが明らかとなり, 白血球由来の分化誘導因子とは分子性状や種々の白血病細胞株に対する反応性が異なることが明らかとなった.
  • ―活性型ビタミンD3の及ぼす効果について―
    小谷 貢一
    1985 年 45 巻 6 号 p. 839-850
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨代謝調節因子としてビタミンDの骨組織に対する作用を知る目的で, ラットを用いて骨移植の実験を行った.使用したラットは生後7週齢のWistar系雄ラット87匹である.ネンブタール麻酔下で右脛骨より骨膜を剥離した約5mmの長管骨を採骨し, 左大腿骨に骨溝を作製して埋め込み, 活性型ビタミンD3 (1α-OH-D3) を連日体重pro Kgあたり0.3μg経口投与した.そして骨移植における吸収・生着・同化という生物学的過程を通して, 血清生化学的変動, X線学的変化および脱灰・非脱灰組織を作製して骨組織の変化について, 活性型ビタミンD3を服用していないコントロール群と比較検討を行った.血清カルシウム値は活性型ビタミンD3投与により有意に高値を示すものの正常域内であった.血清アルカリフオスファターゼ値は移植後早期にピーク値を示し以後低下してくる.そのピーク値は活性型ビタミンD3投与群で移植後2週目, コントロール群では3週目となり, 活性型ビタミンD3投与により早期に血清アルカリフォスファターゼ活性が亢進していた.軟X線像では, 活性型ビタミンD3投与により移植骨周囲の骨吸収が移植後早期より強く見られるものの, 仮骨形成も同様に早期に見られ, 皮質骨間の骨癒合も早く得られた.しかし, 骨癒合後は両群間に差を認めなかった.Contact microradiogramでも同様の所見が得られ, 移植後初期には移植骨と母床との接触面を中心に多数の大きな吸収窩が見られ骨吸収が強く表われていたものの, 同時に仮骨形成も旺盛で, 移植骨との間に架橋状の仮骨形成が早期に見られた.骨癒合後は両群間に差を認めなかった.テトラサイクリン骨標識では, 活性型ビタミンD3投与により移植骨周囲に1週程早く2重ラベリングが見られ, 骨形成能が亢進していたことが示唆された.移植後5日目の脱灰組織標本では, 破骨細胞の形態は両群間に差を認めてはいないものの, 骨芽細胞は分化程度に差が見られ, 骨芽細胞にある活性型ビタミンD3のリセプターを介して, その分化誘導・機能発現が高められていたことが示唆された.これらから骨移植の吸収・生着・同化という生物学的過程において, ビタミンD投与は破骨細胞, 骨芽細胞の分化誘導・機能発現を導き, これらを促進する作用を有しているため, 早く移植骨の生着を期待できる治療法として有効な方法であると考えられた.
  • 村田 升, 西田 佳昭, 熊谷 一秀, 新井田 修, 中嶋 真, 加藤 貴史, 安井 昭, 高場 利博, 舟波 誠, 宇佐美 信乃, 石井 ...
    1985 年 45 巻 6 号 p. 851-854
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    中心静脈内にcatheterを留置すると, 合併症としてcatheterが断裂し心大血管内の異物となる場合がある.今回われわれは, 胃癌術後の患者が不穏状態に陥りIVH catheterを自己抜去し, 断裂したcatheter片を肺動脈内より非観血的に摘出することに成功した, 心大血管内に迷入したcatheter片を放置すると種々の合併症を惹起し, 時にそれが死因となることもあるため可能な限り早期に摘出することが望ましい.今回摘出にはBasket catheterを使用したが, 右大腿静脈よりの挿入では摘出が困難であったため, 右鎖骨下静脈よりapproachし容易に摘出できた.肺動脈内の異物摘出にはapproach部位の工夫も必要と思われた,
  • 西村 敏郎, 水野 雅夫, 池田 千鶴, 藤巻 忠夫, 松村 堅二, 永野 聖司, 飯田 善樹, 杉山 喜彦
    1985 年 45 巻 6 号 p. 855-858
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の女性.主婦.持続性の全身倦怠感を訴えて受診した.幼少時より球結膜の黄疸を指摘され, 軽度肝機能障害で近医にて投薬, 経過観察をしていた.総ビリルビン4.5mg/dl, 直接型3.9mg/dl.γ-GTP以外の生化学検査値では異常を認めない.空腹時血糖219mg/dl, 75g OGTTにて糖尿病と診断した.腹腔鏡を施行し, 灰黒色肝を確認した.また, 生検組織像にて, Dubin-Johnson症候群に特有な濃褐色の色素沈着の他に, 活動性肝炎と糖尿病による肝細胞の変性所見, 線維化など多彩な像を示した症例であった.
  • 安井 昭, 鈴木 利之, 渋沢 三喜, 西田 佳昭, 小泉 和雄, 高場 利博, 石井 淳一, 川嶋 昭, 小泉 蓉子
    1985 年 45 巻 6 号 p. 859-864
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    深達度sm (癌の深達が粘膜下層までのもの) の早期食道未分化癌で, しかも燕麦細胞癌 (oat cell carcinoma) の1治験例を報告し, 文献的考察を行った.自験例は72歳の高齢男性で, 嚥下困難を主訴として来院し, バリウムによるX線検査にて食道の異常陰影を指摘さる.食道癌との診断のもとに開胸, 開腹術にて食道亜全別, 胸骨後, 左頸部で食道・胃管吻合術を行った.切除標本の肉眼所見では, 腫瘤はほぼ球形の3.0×3.6×1.0cmの隆起型, 明瞭型に属するもので, 組織学的には膨脹型で深達度smの食道未分化癌を主体とし, 詳細な組織検索によって一部に燕麦細胞癌 (oat cell carcinoma) が認められた.一般に食道の未分化癌とは, 細胞間橋, 角化や求心性の細胞成熟傾向, 粘液産生, 腺腔形成など, 組織学的に扁平上皮細胞への分化を示さないものを称するとされている.本例は部分的ではあるが, 小円形の癌細胞が充実性に増殖している像を呈しており, これは肺癌におけるoat cell carcinomaと同様の所見である.すなわち, 小細胞未分化癌 (small cell carcinoma) に極めて類似している.統計的には, 食道癌ではまれとされている腺癌が2.3%, 本例のような未分化癌は1.7%とその頻度は極めて低い.その性質は内分泌性腫瘍, すなわち, ACTH産生の癌Argyrophil cell carcinoma (Apudoma) などともいわれているようにホルモン産生と深い関係があるようである.予後は極めて不良とされているが, 放射線療法や有効な化学療法などの併用によって良好な成績が得られるものと思われるが, 本例は幸いなことに早期癌であったので, より良い遠隔成績が得られるものと期待される.
  • 會澤 重勝, 岡崎 雅子, 坂本 浩二, 九島 健二, 伴 良雄, 原 秀雄, 長倉 穂積, 佐藤 龍次, 向井 英之, 井上 紳, 新谷 ...
    1985 年 45 巻 6 号 p. 865-872
    発行日: 1985/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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