昭和医学会雑誌
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67Gaシンチグラフィにおける肝不描出についての実験的研究
廣野 良定
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1986 年 46 巻 5 号 p. 599-605

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抄録
67Gaの血中動態は鉄のそれと類似しており, 血中に投与された67Gaは直ちにTfと結合し運搬されて組織内に取り込まれる.67Gaシンチグラフィでは肝, 骨に強い集積が認められる.しかし, まれに肝が描出されない症例を経験することがある.UIBCの著明な低下が肝不描出の主たる原因と言われており, 今回それを確認するため動物実験を行なった.実験方法はウイスター系ラットを用いて67Gaシンチグラフイを施行し, 全身のシンチグラフイ (前面像) を撮影した.同時にデータプロセッサに画像を収集した.その後, 心臓より採血してから解剖し, 肺, 肝, 脾, 腎, 大腿骨および大腿部筋肉を摘出した.ウエル型シンチレーションカウンタにて各臓器のカウント数を測定し, 単位重量当りのカウント数を求めた.RI法にてTIBCおよびUIBCを測定し血清鉄を算出した.実験は対照群, Fe投与群, VCR投与群, Fe+VCR投与群に分けて行なった.Fe投与群では肝は描出され, 67Ga分布も対照群と比べ差異はなかった.血清鉄とTIBCは著明に上昇し, UIBCの低下が認められたが, Tfの飽和には至らなかった.VCR投与群では肝は描出され, 67Ga分布も画像上対照群と比べ差異はなかった.しかし, 腎のカウント数が増加していた.血清鉄とTIBCの上昇が認められたが, UIBCの低下は, 認められなかった.Fe+VCR投与群では肝不描出が認められ, 腎と骨への集積が著明に増加し, 67Ga分布に変化がみられた.カウント数は対照群に比べ肝は約1/2に減少し, 腎と骨は約2倍に増加していた.UIBCは著明な低下を示した.Tfは飽和状態に近かった.以上より, 肝不描出にはUIBCの著明な低下, 言い換れば, Tfが飽和状態に近いことが必要であると考えられる.Tfの飽和のために67GaはTfと結合できず, 肝へ運搬される67Gaは減少し, 逆に, freeの67Gaが増加する.このため, 肝への集積は減少し, 一方骨や軟部組織への集積が増加し, また, 67Gaの血中クリアランスが亢進し, 腎への集積が増加すると考えられる.そして, このような67Gaの体内分布の変化が画像上で肝不描出を引き起こすと考えられる.
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