昭和医学会雑誌
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悪性疾患に対する腫瘍マーカーの診断的有用度の検討
村上 雅彦鵜沢 龍一高木 康
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1986 年 46 巻 6 号 p. 809-818

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抄録

悪性疾患を診断するにあたって, 腫瘍マーカーの有用性および限界を知り, 多種マーカー同時分析による有効性を検討するために, Carcinoembryonic antigen (CEA) , α-Fetoprotein (AFP) , Tissue polypeptide antigen (TPA) , Immunosuppressive acidic protein (IAP) , Carbohydrate antigen 19-9 (CA19-9) , Ferritin (FER) , β2-Microglobulin (BMG) の7種の腫瘍マーカーの血清中濃度を測定した.対象症例は, 胃癌146例, 大腸癌97例, 膵癌6例, 胆管癌10例, 肝細胞癌10例, 乳癌43例, 食道癌14例, 肺癌20例, 甲状腺癌6例の悪性疾患群352例, 良性消化器疾患25例, 良性肝・胆・膵疾患36例である.検討にあたっては, 各原発巣別および各種瘍マーカー別に感度と特異性を求め, さらに感度と偽陽性率の差を陽性指標 (PI) とし, その結果を特異性で割ったものを診断有用度 (DI) として用いた.
多種マーカー同時分析が有効と思われたのは, 胃癌: CEA+CA19-9+BMG (感度45%.DI値0.40) 大腸癌: CEA+IAP (感度70%.DI値0.69) 食道癌: CEA+IAP+BMG (感度64%.DI値0.54) 胆管癌: CA19-9+FER (感度100%.DI値0.57) 膵癌: CEA+TPA (感度83%.DI値0.95) 肺癌: CEA+IAP (感度70%.DI値0.54) であった.甲状腺癌・乳癌では, 今回の腫瘍マーカーでは満足すべきものはなかった.肝細胞癌は, AFP単独で十分な結果をえた.また, 再発癌においては, 同時分析の意義はないと思われた.全癌症例の検討では, CEA+TPA+BMGで感度53%, DI値0.35であり, 有用と思われた.
早期癌診断に関しては, 肺癌においてCEA+IAPの組み合わせで有用性が示唆されただけであるが, そのPI値も低く, 腫瘍マーカーによる早期癌診断の限界を再認識させられた.

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