昭和医学会雑誌
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抗ハプテン細胞障害性T細胞の誘導に対する放射線の影響
伊藤 真一, 蜂須 玲子
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1987 年 47 巻 3 号 p. 343-349

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抄録
放射線が免疫系におよぼす影響として, 一般には免疫能の抑制が知られている。しかし, 近年, 免疫系が解明されるのに従って, 免疫担当細胞のsubpopulationにより放射線感受性に差があることが解ってきた腫瘍内には抗腫瘍性の免疫細胞の浸潤が認められ, これらの細胞に細胞障害性T細胞 (cytotoxic T lymphocyte: CTL) の活性を示す例がある。CTLへの放射線の影響に関する研究は, アロ抗原に対するCTLでなされている。一方, syngeneicな抗原細胞を破壊するCTL, すなわち「修飾された自己細胞」に対するCTLへの放射線の影響に関しては未だ明らかではない。本実験では, syngeneicな抗原細胞に対するCTLのin vitroにおける誘導過程に及ぼす放射線の影響, 並びに成熟したCTLの放射線感受性を検討した。ハプテンとしてTrinitrophenyl基 (TNP) を用いて, 抗TNP細胞障害性T細胞 (TNP-CTL) を誘導した。C3Hマウスの正常脾臓細胞を応答細胞として用い, これに対する刺激細胞としてTNP化した同系マウスの脾臓細胞を加えて, 炭酸ガス培養器内で5日間培養した。TNP-CTLの細胞障害活性は51Cr release assayで測定した。標的細胞として同系腫瘍であるX5563骨髄腫細胞を用い, 51Crを取り込ませた後にTNP化してassayに加えた。5日間培養開始直前, 培養開始後1日目, 2日目, 3日目および4日目に0.5, 1, 2 Gyの照射を行った。培養開始後2日目までに照射を行うと, 線量依存性にTNP-CTL活性の低下がみられた。一方, 培養開始後3日目以降に照射をすると, TNP-CTLの活性はあまり低下しなかった。すなわち, 培養中に照射をすると, 各線量において2日目までと3日目以降では, 放射線によるCTL活性の抑制に差がみられ, 特に2Gyでは, その差が著しかった。また, 5日間培養後に最大42Gyまでの照射を行っても, CTL活性は低下せず, 成熟したTNP-CTLは放射線抵抗性であった。以上のことより, syngeneicな系においても, アロ抗原に対するCTLの放射線感受性と同様に, CTLが成熟するのに従って放射線抵抗性を獲得すると考えられる。本実験の結果から, 通常の放射線療法に用いられる線量では, CTL活性を障害しないことが期待された。さらに, 抗原刺激の後, 早期にCTLが放射線抵抗性を獲得することも, 免疫系に対する放射線の影響を考える場合, 有利であると思われる。
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