昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
赤血球稀釈液としての電解質液の研究
小堀 正雄新原 信子樋口 比登実増田 豊細山田 明義
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 47 巻 4 号 p. 557-561

詳細
抄録

濃厚赤血球液を使用する際に稀釈液として使用する溶液について, どの程度の電解質濃度が適正かを検討した.20歳代男性からCPD液用採血バックに採血し, 採血当日血, 保存1週間目, 3週間目の3群に分けた.実験に先立ち, 血漿成分の影響をとり除き, 赤血球の抵抗性を調べるため洗浄赤血球液を作成した.添加する溶液はすべて血液との浸透圧比は1とした.そして溶液の各々のナトリウム濃度を変化させ, 洗浄赤血球と同量加えて室温で放置した.2, 6, 24時間後の各溶液の遊離ヘモグロビン値, カリウム値を測定した.一般に保存血の場合, 最大許容保存期間の遊離ヘモグロビン値は100mg/dl程度である.そのため, 赤血球の保存の場合, 溶血という観点から考慮しても100mg/dl以下に遊離ヘモグロビン値がとどまるべきであり, 各保存期間の血液に対して各ナトリウム濃度の溶液を加えた場合の遊離ヘモグロビン値を測定した.その結果, 2時間放置群では, 採血当日の血液では45mEq/l以下, 1週間目の血液では60mEq/l以下, 3週間目の血液では90mEq/l以下のナトリウム濃度の溶液では遊離ヘモグロビン値は100mg/dl以上となった.6時間放置群では, 採血1週間目の血液では75mEq/l以下のナトリウム濃度の溶液では遊離ヘモグロビン値は100mg/dl以上となった.24時間放置群では, 採血当日の血液でも60mEq/l以下のナトリウム濃度の溶液で遊離ヘモグロビン値は100mg/dl以上となった。また, 採血1週間, 3週間目の血液は, いずれの溶液でも遊離ヘモグロビン値は100mg/dl以上であった.一方, 洗浄赤血球液に添加した溶液のカリウム値の変化は, ほぼ遊離ヘモグロビン値と同様な傾向を示した.また, 維持輸液中に含まれている乳酸は血液の溶血に関して影響がないことが示された.以上のように濃厚赤血球を稀釈する場合の適正な溶液は, 採血後の保存期間, 稀釈後の放置期間によってかなり差があることが示唆された.

著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top