昭和医学会雑誌
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47 巻, 4 号
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  • 副島 和彦, 神田 実喜男
    1987 年 47 巻 4 号 p. 459-462
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 坂本 道男
    1987 年 47 巻 4 号 p. 463-472
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和53年から昭和58年までの5年間に昭和大学藤が丘病院で経験した大腸癌症例106例 (結腸癌, 直腸癌) について, 臨床統計並びに腫瘍マーカーであるCEA, AFP, TPA, IAP, CA19-9について検討を行った.平均年齢59.9歳で男性平均62.5歳, 女性57.3歳でやや女性に低年齢の傾向がみられた.しかし, 男女差はみられなかった.占居部位ではS状結腸が最も多く, 次いでRbが多くS状結腸以下で全体の76.3%を占めていた.リンパ節転移をみると結腸癌, 直腸癌ともにn0が多く, S因子とn因子を比べてみると, S0ではn1まででn2症例はみられなかった.S1症例ではn2まででn3症例はみられなかった.このことはS0ではR2の手術で絶対治癒切除が可能であることを示した.癌の壁深達度をみると結腸癌, 直腸癌ともにs, a2が最も多く, si, aiは結腸で16%, 直腸では6%にみられた.肛転移は全体の14.2%15例に見られ結腸癌, 直腸癌との問には有意の差は見られなかった.腹膜播腫は10例9.4%にみられた.Stage分類別にみると結腸癌ではstage IIが19例35.8%と最も多く, 直腸癌でも同様にstage IIが15例28.3%と高かった.Dukes分類では結腸癌ではDukes Bが21例50%と多く, 直腸ではDukes Cが23例48.9%と多かった.術後の5年生存率を見てみると結腸, 直腸はそれぞれ63%, 55%で, やや結腸症例が高かったが有意差はなかった.Dukes分類別にみるとDukes A, B, Cは結腸では100%, 71%, 58%で有意の差がみられ, 直腸では80%, 64%, 60%であり, 有意差がみられた.次に術前の血中CEA, AFP, TPA, IAP, CA19-9値について検討を行ったが, CEA値が癌の進行度と一番良く平行関係にあったのでここではCEA値のみについて検討した.n factorとCEAには有意な関係は見られず結腸癌, 直腸癌との問にCEAの陽性率には有意差がみられなかった.壁深達度とCEA値の関係をみると, 癌浸潤がss, a1以上になるとCEA値の上昇がみられた.しかしsi, aiであってもs, a2との間にはCEA値の有意差は見られなかった.肝転移群のCEA値は非肝転移群に比べ, 明らかに上昇がみられ, 術前に肝転移の可能性が推測できた.以上から術前のCEA値は癌のsecreeningとしては不適当であるが, 治癒切除, 非治癒切除あるいは非切除の予測がある程度可能であり, 癌の進行程度や予後の予測を行うには有意義な検査方法であると思われた.
  • ―臨床例, 屍体標本および三次元光弾性実験からみた発症機序の検討―
    山上 繁雄
    1987 年 47 巻 4 号 p. 473-480
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    過去10年間に当科手の外科診を受診した母指CM関節症患者31例45関節の臨床像およびX線所見を検討するとともに, 屍体標本の母指CM関節 (19体30関節, 平均年齢68.8歳) の単純X線評価, 関節軟骨の肉眼的観察およびこれらを樹脂包埋後連続切片として関節面の形態の観察を行ない, あわせて三次元光弾性実験を行なって, 次の結果を得た。臨床的には, (1) 性別は2: 1で女性に多く, 年齢は中年以降で, 左右差はなかった。 (2) 痛みの強さと, X線上の関節症変化の程度とは相関はなかった。屍体標本では, (1) 単純X線上, 21関節 (70%) に関節症変化を認めた。 (2) 肉眼的に, 25関節 (83%) に関節軟骨の変性を認めた。 (3) 軟骨変性の好発部位は, 第一中手骨の関節面では背側と掌側で, 大菱形骨の関節面では中央と橈側および尺側であった。 (4) 単純X線上関節症変化が強いほど軟骨変性の出現頻度が高かった。 (5) CM関節の内外転に対応する関節面では, 第一中手骨, 大菱形骨とも関節面の曲率は均一ではなく, 第一中手骨の凸の頂点と, 大菱形骨の陥凹の中心はともに尺側にあり, 橈側の曲率は尺側より大きい。従って母指の外転時には, 第一中手骨の凸の頂点は大菱形骨の陥凹の中心に対応し, 関節は骨性に安定した状態になる。 (6) CM関節の屈伸面に対応する関節面では, 第一中手骨の関節面は陥凹し, 大菱形骨の関節面は凸となり, その曲率は第一中手骨のほうが大きいため, 第一中手骨は大菱形骨の関節面上をかなり自由に動くことができる。 (7) またこの関節面は, 第一中手骨の長軸に対して, 尺側の切片ほど掌側に傾斜するため, 母指が対立位をとって第一中手骨に軸圧が加わると, 第一中手骨は回旋する。三次元光弾性実験では, 軸荷重で第一中手骨基部の背橈側に圧迫応力の集中を認めた。母指CM関節は, 極めて合理的な形態を有するが, ひとたび周囲の靱帯や関節包の支持を失うと, 第一中手骨に軸圧が加わったとき, 第一中手骨は対立位をとると同時に背橈側へ亜脱臼すると考えられ, 三次元光弾性実験結果はその裏づけとなった。従って, 前述の形態的特徴をもった母指CM関節に, 日常生活で頻回のストレスが加わって関節支持機構の弛緩が惹起され, 関節は安定性を失い, 母指CM関節症が発症すると推論した。
  • 山崎 富士雄
    1987 年 47 巻 4 号 p. 481-494
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    変形性関節症の発生機序の一端を解明する目的で, 屍体膝関節を用いて脛骨関節軟骨面の肉眼的変化を観察すると共に, 半月板の形態と変性, 関節軟骨の厚さ, 軟骨下骨梁構造について検討した. (1) 対象は49~85歳 (平均69.2歳) の28体52関節で, まず関節軟骨面, 半月板の肉眼的観察をを行った後, ほとんど変化のみられない20関節の硬組織標本を作製これらから関節軟骨の厚さと軟骨下骨梁構造を調査した. (2) 関節軟骨面の変性は内外側顆共に露呈部および半月板下部後方に多く認められた。質的に前者には軽度の変性が, 後者 (とくに外側顆) では高度の変性が多くの例でみられた. (3) 半月板の変性度と関節軟骨面の変性度とは必ずしも一致しなかった.しかし円板状半月板やそれに類する半月板では関節軟骨面の変性が明らかに多いため, 正常の形態を逸脱した半月板は関節の不適合性をきたし, 骨関節軟骨面や半月板自身の変性を惹起しやすいと考えられた. (4) 関節軟骨の厚さは内外側顆共に露呈部が半月板下部よりも厚く, とりわけ外側顆の露呈plateau部は最大の厚みを有する.半月板下部では前方から後方へと次第に厚さを増す傾向がみられた. (5) 内側顆の骨梁と軟骨下骨皮質は露呈部で厚く密であるのに対し, 半月板下部では骨梁は粗で骨皮質も薄い.外側顆にも同様の傾向がみられたが, その差は内側顆ほど顕著ではない.また外側顆には関節面に直交する骨梁群が露呈部の後方から半月板下部の後方にかけて密に存在していた. (6) 内側顆の半月板下部は関節軟骨の厚さや骨梁構造に乏しく, また変性も軽度であることから内側半月板の大いなる負荷緩衝機能が示唆された.一方, 外側顆では骨梁密度は粗であるものの関節軟骨は厚く, これは移動性の大きい半月板, 関節面の凸状形態という荷重分担面の不利を代償するためのものと考えられた. (7) 外側顆後方にみられた関節軟骨面の欠損などの高度の変性はhypopressureではなく, hyperpressureによるものと考えられた.
  • 鈴木 尚志
    1987 年 47 巻 4 号 p. 495-507
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    雑種成犬51頭を対象としてATP及びSodium nitroprusside (SNP) を用いた低血圧麻酔 (低血圧開始前値の80%または50%に平均動脈圧を減少した) における, 水素ガスクリアランス法を用いた腹腔内臓器血流 (腎皮質, 腎髄質, 肝, 脾) 及び循環動態の推移について観察し, 以下の結果を得た。1) 腎皮質, 腎髄質, 肝, 脾の4臓器における組織血流は, 肝以外では減少したが, そこには血圧低下の手段として用いたATP, SNPの2薬剤による差はなかった。2) 低血圧時の臓器血流の変化は, 灌流圧のレベルだけでなく低血圧時間の多寡によっても影響された。3) 2薬剤の呼吸, 循環に及ぼす影響は, これまでの諸家の報告と類似した。4) Dipyridamoleを前処置したATP低血圧麻酔では, ATP単独による低血圧麻酔に比べて, ATPの投与量ははるかに少なく, かつ低血圧麻酔中に発生する過剰塩基の低下が軽度であった。このATP低血圧麻酔時における過剰塩基の低下には, 臓器血流以外の因子が関与していることが示唆された。
  • 田中 弦, 渋沢 三喜
    1987 年 47 巻 4 号 p. 509-514
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    組織型の異なるヒト胃癌由来の腫瘍3株の増殖に対する消化管ホルモンの影響について抗癌剤感受性試験として最近利用されているmicroplate labeling assay (M.L.A.) とHuman tumor clonogenic cell assay (H.T.C.A.) の2法を応用し, 検討した.ヒト胃癌由来の株細胞としてMKN-28 (高分化型腺癌) , MKN-45 (低分化型腺癌) , KATO III (印環細胞癌) を用い, ガストリン, セクレチン, G.I.P., 3種の消化管ホルモンの株細胞増殖に対する影響を, M.L.A.では3H-TdR取り込み率を, H.T.C.A.ではコロニー形成率を指標として示した.ガストリン投与においてMKN-45, KATO IIIで著明な3H-TdR取り込み率の増加を認めたが, コロニー形成率では有意な増加は認められなかった.これに対し, MKN-28では3H-TdR取り込み率, コロニー形成率ともに有意な変化はみられなかった.セクレチン投与においてMKN-28, MKN-45では3H-TdR取り込み率, コロニー形成率ともに変化しなかった.しかしKATO IIIにおいては, セクレパン濃度10.0U/mlで3H-TdR取り込み率が15%まで, またセクレパン濃度1.0U/mlでコロニー形成率も20%まで減少した.今回の実験で, 2つの異なるassayで双方とも株細胞増殖抑制傾向を示したのは, KATO IIIに対するセクレチン投与のみであった.G.I.P.投与において程度の差はあるがKATO III, MKN-28, MKN-45すべてに3H-TdR取り込み率の減少が認められた.しかし3株ともコロニー形成率では有意な減少はみられなかった.以上より, セクレチン投与によりKATO IIIで細胞増殖の抑制がみられたことは消化管ホルモンによる消化器癌の治療法としての可能性を示唆するものと思われた.
  • 石井 一彦, 荒川 文雄, 藤元 ますみ, 大岩 恭子
    1987 年 47 巻 4 号 p. 515-524
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    最近, わが国においてもアルコールの消費量が増加し, アルコール依存症者は220万人にも達しているとの報告がある.これらの中から著者は単身者のアルコール依存症者に注目し, 特に生活保護法による医療扶助を受給中の単身者を対象に調査研究した.資料は東京都福祉局福祉部保護課に1984年10月より11月までの2か月間に提出された「精神障害者入院要否意見書」から抽出したものを基に, 都内および近県の精神病院の協力を得て改めて病歴を作成した.全症例143例のうち有効調査例 (対象例) は88例で, その概要は以下の通りであった.まず平均年齢は49.2歳であり, 従来に比しアルコール依存症者の高齢化がみられた.入院回数別年齢別分類は1~2回の入院と7回以上の入院が多く, 年齢が増すに従い, 入院回数が増加する傾向にあった.学歴は義務教育範囲の症例が62.5%を占めており, 教育程度は概して低かった.出身地別では東京都出身者が31.8%, それ以外の出身者が50.0% (不明18.2%) であり, 大多数が定職を持たず, その日暮らしには環境が良い東京に集まったものと思われた.結婚歴では結婚および同棲の経験者が46.6% (不明9.1%) であった.1984年3月, 東京都で常設の精神衛生対策委員会から「アルコール精神疾患医療体制整備に関する報告書」が発表され, 次いで厚生省も「アルコール関連問題対策に関する意見」を発表した.これらは特に都内の精神病院整備の一環として審議を継続中であった救急医療対策および身体合併症対策に次ぐ重要な策定であるが, 単身生活者に直接当てはめるにはなお困難な面が多い現状である.本研究の対象者は策定計画に見るようなデイ・ケア, 更生施設, 婦人保護施設, 老人施設などの利用および救急医療, 病院医療に繋ぐだけでは終わらず, 強力な社会内訓練を経験させることが極めて重要である.そのためには, 相談や指導にあたる有資格者を多数養成する必要があり, このための教育要員の養成もまた当面する甚だ重要な課題となるが, 著者は本研究で, アルコール依存症者の環境は, 高齢社会の到来と相まって, 複雑かつ多様性を帯び, その処遇に近い将来必要になると考ええられるいわゆる中間施設を中心とする具体的対策が迫られていることを指摘した.
  • 築野 和男
    1987 年 47 巻 4 号 p. 525-533
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒト乳癌株 (MRK) 並びにヒト胃癌株 (KATO-III) が骨吸収を起こすか否か, またこれら株細胞の骨吸収機構に違いがあるか否かを調べる為に実験をおこなった.Messerらの方法を用いてマウスの前頭頂骨を腫瘍細胞群などと培養した.本研究では骨吸収機構を調べるために, 骨吸収の組織化学的検索としてはVon Kossa's testでおこない, 定量的検索としては45Caの骨からの遊離率を求めておこなった.さらに, 骨中cAMP含有量, 培養液中PGE2濃度, 骨中酸性ホスファターゼ活性, 骨中アルカリ性ホスファターゼ活性を測定した.Von Kossa's testの結果からPGE2群の骨吸収は縫合部の外側より連続的に起こり蝶形様を示した.MRK群やKATO-III群では多数の小孔と幅広い骨欠損が不規則にみられた.MRK-LYO群やKATO-III-LYO群では骨吸収は縫合部に起こったがPGE2群とは骨吸収像が異なっていた.45Caの遊離率の結果から, 骨吸収はPGE2群, MRK群, MRK-LYO群, KATO-III群, KATO-III-LYO群, で認められた.KATO-III群の骨吸収の程度はMRK群よりも高かった.KATO-III群ではMRK群よりも培養液中のPGE2濃度は高かった.骨吸収が起こった群では, 骨中cAMPの増加と培養液中のPGE2濃度の増加が認められた.とりわけ腫瘍細胞群でのcAMPの増加は著明であった.インドメタシンが腫瘍細胞群の骨吸収を抑制したことから, これらの骨吸収刺激因子の一つはPGE2と思われた.しかしこの抑制は完全ではなくPGE2を含まないLYO群にも骨吸収が認められたので, PGE2以外の骨吸収刺激因子のあることが推測された.さらに, 骨吸収を示した群では培養4日目には骨中酸性ホスファターゼ活性の上昇を認めた.一方骨中アルカリ性ホスファターゼ活性はPGE2群, MRK群, KATO-III群では上昇したが, LYO群では上昇しなかった.細胞内酸性ホスファターゼ活性には大きな差を認めなかったが, 両者とも高く骨吸収に深く関与していると思われた.以上の結果よりMRKとKA-TO-IIIの骨吸収機構は類似していることが示唆された.
  • 別所 知彦
    1987 年 47 巻 4 号 p. 535-546
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    高血圧状態の発症, 持続ならびに加齢に伴って生じる心の病理形態学的変化を知る目的で, 高血圧自然発症ラット (Spontaneously hypertensive rat: SHR) を使用し, 同週齢の正常コントロールラット (Wistarrat: WR) との心臓組織形態変化の差異を, 心の部位別 (基底, 中央, 心尖部) に比較検討した.方法は6, 16, 30, 40週齢のSHR及びWR計63匹を対象とし, 血圧, 心拍数を測定後, 開胸し心臓を拡張期固定を行った後に摘出した.摘出心より, 左室の部位別 (基底, 中央, 心尖部) に水平断により病理標本を作製し, 左室側壁及び中隔の壁厚, 左室外周及び内腔の面積, 単位面積あたりの細胞数, 心筋変性の有無を検討した. (1) SHRの血圧は6週齢で138.2±21.2mmHgと同週齢のWR (113.8±11.6) に比し有意差を認めなかったが, 16~30週齢にて175.5±21.0mmHgに上昇, 40週齢は30週齢とほぼ同じであった.WRでは全期間を通じて110前後であった. (2) 心重量/体重比は16週齢以後はSHRはWRに比べ有意に大きかった. (3) SHRの左室側壁及び中隔厚は, 16週齢以後血圧の上昇に対応してWRに比し有意に増加した. (4) SHRの心肥大は対称性かっ求心性肥厚の型を示した. (5) SHRの単位面積当たりの心筋細胞数は6~40週齢のいずれの時期でもWRに比し減少していた. (6) 壁厚, 左室横断面面積, 細胞数の変化は, 心臓の各部位別の差を認めなかった. (7) 高血圧持続に伴う心の組織変性として, 30週齢以後のSHRに線維化, 脂肪変性がみられたが, WRでは40週齢の心に軽度の変性を認めたに過ぎなかった.以上の結果より, SHRの週齢に伴う左室壁厚の増加, 30週齢より生じる組織変性には, 慢性の高血圧負荷の関与が考えられた.また, 圧負荷に伴う心形態変化は, ほぼ対称性かつ求心性の肥厚であり, 人にみられる非対称性, 拡張性, 心尖部肥厚等は認めなかった.一方, 高血圧発症以前 (6週齢) のSHRの左室内腔面積や単位面積当たりの細胞数が, 既に同週齢のWRとの間に有意差を認めたことより, SHRの心形態変化には, 圧負荷以外の先天的因子等が関与している可能性が示唆される.
  • 矢嶋 輝久, 渡辺 公博, 尾町 秀樹, 舩冨 等, 田口 進, 八田 善夫
    1987 年 47 巻 4 号 p. 547-555
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Phcspholipase A2 (PLA2) 活性を, Shakirらの方法に準じ, 均一な基質を得るためultrasonicationを加えて測定した.本測定法により検量線は良好な直線性を示したにもかかわらず, 血清を検体とした場合には急性膵炎例においても低値を示す例が多く, 血清中におけるPLA2活性阻害物質の存在が推定された.ヒト血清の硫安分画添加によるPLA2活性阻害効果およびその蛋白組成の検討から, 阻害物質の主体はアルブミンであると考えられた.Porcine pancreas PLA2 (p-PLA2) を用いた検討においても, ヒト精製アルブミン添加濃度の増大に伴いp-PLA2活性阻害効果も上昇した.以上よりアルブミンはendogenous PLA2inhibitorと考えられた.生食水によりヒト血清を15倍希釈した場合, PLA2活性は希釈前より増加し, 特に急性膵炎血清では希釈後, 活性は2~3倍に上昇し, 本測定法は臨床的にも有用と考えられた.アルブミンのPLA2活性阻害の機序は不明であり, 今後さらに検討が必要である.
  • 小堀 正雄, 新原 信子, 樋口 比登実, 増田 豊, 細山田 明義
    1987 年 47 巻 4 号 p. 557-561
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    濃厚赤血球液を使用する際に稀釈液として使用する溶液について, どの程度の電解質濃度が適正かを検討した.20歳代男性からCPD液用採血バックに採血し, 採血当日血, 保存1週間目, 3週間目の3群に分けた.実験に先立ち, 血漿成分の影響をとり除き, 赤血球の抵抗性を調べるため洗浄赤血球液を作成した.添加する溶液はすべて血液との浸透圧比は1とした.そして溶液の各々のナトリウム濃度を変化させ, 洗浄赤血球と同量加えて室温で放置した.2, 6, 24時間後の各溶液の遊離ヘモグロビン値, カリウム値を測定した.一般に保存血の場合, 最大許容保存期間の遊離ヘモグロビン値は100mg/dl程度である.そのため, 赤血球の保存の場合, 溶血という観点から考慮しても100mg/dl以下に遊離ヘモグロビン値がとどまるべきであり, 各保存期間の血液に対して各ナトリウム濃度の溶液を加えた場合の遊離ヘモグロビン値を測定した.その結果, 2時間放置群では, 採血当日の血液では45mEq/l以下, 1週間目の血液では60mEq/l以下, 3週間目の血液では90mEq/l以下のナトリウム濃度の溶液では遊離ヘモグロビン値は100mg/dl以上となった.6時間放置群では, 採血1週間目の血液では75mEq/l以下のナトリウム濃度の溶液では遊離ヘモグロビン値は100mg/dl以上となった.24時間放置群では, 採血当日の血液でも60mEq/l以下のナトリウム濃度の溶液で遊離ヘモグロビン値は100mg/dl以上となった。また, 採血1週間, 3週間目の血液は, いずれの溶液でも遊離ヘモグロビン値は100mg/dl以上であった.一方, 洗浄赤血球液に添加した溶液のカリウム値の変化は, ほぼ遊離ヘモグロビン値と同様な傾向を示した.また, 維持輸液中に含まれている乳酸は血液の溶血に関して影響がないことが示された.以上のように濃厚赤血球を稀釈する場合の適正な溶液は, 採血後の保存期間, 稀釈後の放置期間によってかなり差があることが示唆された.
  • 小堀 正雄, 高橋 厳太郎, 岡本 健一郎, 増田 豊, 細山田 明義
    1987 年 47 巻 4 号 p. 563-567
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    濃厚赤血球液を使用する場合, 稀釈する溶液として一般に生理食塩水が用いられる.しかし, 大量輸血の場合には稀釈液による電解質の負荷が増す.そのため, 稀釈液に電解質を含まない糖質を使用した場合の赤血球の溶血度および溶液中のカリウム値の変化を測定した.20歳代男性からCPD液用採血バックに採血し, 採血当日血, 保存1週間目, 3週間目の3群に分けた.実験に先立ち, 血漿成分の影響をとり除き, 赤血球の抵抗性を調べるため洗浄赤血球液を作成した.添加する溶液は生理食塩水をコントロールとし, 10%マルトース液, 5%キシリトール液, 5%, 10%グルコース液とした.10%グルコース液以外は血液との浸透圧比は1である.これらの溶液を洗浄赤血球液と同量加え, 室温で2, 6, 24時間放置し, 各溶液の遊離ヘモグロビン値, カリウム値を測定した.その結果, 10%マルトース液, 5%キシリトール液は保存期間, 放置時間をとわず, 遊離ヘモグロビン値, カリウム値は生理食塩水とほぼ同様の傾向を示した.しかし, 5%グルコース液では, 血液の保存期間をとわず, 2時間後にはすでに高度な溶血を示した.一方, 10%グルコース液は比較的溶血が少なく, 溶質の赤血球内への流入により添加溶液の低張化がある程度抑えられたことが示唆された.また, キシリトール液, グルコース液でpHの異った溶液を作成し, 遊離ヘモグロビン値の差を測定した.その結果, 溶液中のpH5~9の範囲内では, 血液の溶血度には何ら影響がないことが示唆された.
  • 池田 忠明, 中山 壽朗
    1987 年 47 巻 4 号 p. 569-575
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    肝内結石症は, 診断ならびに治療の困難な疾患の一つである.最近10年間 (昭和50年8月~昭和60年6月) に教室で経験した肝内結石症は, 16例 (全胆石症584例) 2.7%である.肝切除例を除く11例に胆道鏡を用いた内視鏡的截石術を施行した.内視鏡的截石経路としては, 1) 術中胆道鏡的截石術 (operative cholangioscopy; OC) 1例, 2) 術後胆道鏡的截石術 (postoperative cholangioscopy; POC) 7例, 3) 経皮経肝胆道鏡的截石術 (percutaneus transhepatic cholangioscopy; PTCS) 3例であった.いずれの方法に於ても常に截石後の取残しが問題となる.今回, 我々は従来の胆道造影では胆管内ガス像 (pneumobilia) の存在や末梢胆管の塞栓状態などより不十分な造影所見に対して, 経胆道鏡的にベビースコープによる直視的観察を行ったが, 機構上の面で観察は不十分であった.そこで, バルーンカテーテルを用いた選択的胆管充満造影をPOC例7例に試みたところ, 良好な結果を得た.この造影は, バルーンカテーテルを用い, 末梢の胆管胆汁と造影剤を置換し, 気泡の混入の無い鮮明な結石像が得られ, この方法により従来のカテーテルのみの造影では見逃されていた遺残結石症例を3例診断しえた.POC経路のTチューブ瘻孔よりの胆汁培養では, グラム陰性菌が54株 (91.5%, n=60) と高率であった.造影時バルーンカテーテル使用に伴い, 胆管は幾分加圧状態となる.このため細菌の血中への逆行性感染, ひいてはcholangiovenous refluxの発生が危惧されたが, バルーンを用いた本法 (n=15) の検査施行前後の体温, WBC, S-GOT, S-GPT, LDH, AL-Pの変化を対照群のERC (n=20) と比べたが有意の差は認められなかった.胆道鏡下バルーンカテーテル使用による選択的胆管充満造影法は, 肝内結石の胆道鏡的截石術中, 直接内視鏡観察のできない末梢胆管の結石遺残の確認に有用且つ, 安全な検査法である.
  • 林 良彦
    1987 年 47 巻 4 号 p. 577-586
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症の脊柱管狭窄に及ぼす椎間関節の態度について検索するために, 腰椎椎間関節の骨梁構造について病理組織学, 形態計測学的研究をおこなった。Control群として新鮮剖検屍体腰椎を, Patient群として変性性腰部脊柱管狭窄症例の手術摘出椎間関節を用いた.非脱灰研磨標本及びそのContact microradiogram (CMR) による硬組織学的検索と塩化シアヌル処理脱灰標本の観察と骨組織学的パラメーダーを算出し, 水平断による各部位の骨梁構造の対比とControl群とPatient群の比較を行ない, 次の結果を得た.1) Control群のCMR像の観察から, 切断高位や関節高位, 骨粗鬆化, 関節角度, 関節形態などによりあまり影響されず, 上下関節突起ともに脊柱管側のほうが脊柱管外側より石灰化骨梁が密であり, 椎間関節の内側部では力学的負荷に機能的対応をしていると考えられた。2) 脱灰標本では, Control群での脊柱管側の骨組織は脊柱管外側よりも骨梁や類骨が多く観察されるが, 骨梁の太さはほぼ一定であった.3) Control群とPatient群の脊柱管側骨組織の定量的形態計測の結果, Patient群では単位骨量, 単位類骨量共にControl群より有意に高値を示したが相対類骨量には有意差が認められなかった.平均骨梁幅はPatient群が上下関節突起共に有意に高値を示した.分画形成面ではPatient群の下関節突起が有意に高値を示した.これらPatient群の結果は高度変性をきたした骨梁構造の特徴と考えられた.4) Patient群の脊柱管側のテトラサイクリン骨標識標本で2重骨標識像が観察され, 類骨形成にひきつづく石灰化という骨の動的Remodelingが認められ, 同部での活発な骨増殖が示唆された.以上から腰椎椎間関節は脊柱管側に力学的負荷を受けており, Patient群では, さらに骨Remodelingにより脊柱管側への骨増殖のため, 脊柱管は同部において後側方より骨性狭窄を受けていることが示唆され, 変性性腰部脊柱管狭窄症の椎間関節のもつ意義は重要であると思われた.
  • 西島 久雄, 奥羽 徹, 平井 慎二, 河合 正登志, 坂西 信彦, 金 英雄, 井上 道雄
    1987 年 47 巻 4 号 p. 587-596
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    (当科外来を受診した, ) DSM-IIIによる大うつ病の診断基準をみたす130例を, 自己評価尺度である昭和大学式うつ病症状評価尺度1978年度版 (DRS-S78) の総得点 (score) の推移により, 8週以内にscoreが低下して20点以下に収束する軽快群 (93例) と, 20点以下に収束するのに8週以上かかる遷延群 (37例) とに分け, 遷延化の予測の可能性の有無, 遷延化の要因, その背景にある因子について検討した.両群ともに初診時のscoreに有意の差はなかったが, 1, 2週後には, 軽快群のscoreのほうが有意に低くなり, 遷延群では2週後のscoreに有意の減少がなく, その後もscoreの減少傾向がみられなかった.遷延群と軽快群とを病型, 性別, 遺伝負因, 病前性格, 初発年齢, 発病年齢, 発病後受診までの期間, 誘因, 自殺について比較すると, 第1度近親者 (親, 同胞, 子) における躁うつ病の遺伝負因が, 遷延群で有意に高く, 病前性格は, 執着気質あるいはメランコリー親和型の占める割合が, 遷延群で有意に多かった.また, 自殺は, 躁うつ病の遺伝負因が有意に高く, 遷延群に有意に多かった.遷延化には, 生物学的要因一抗うつ剤にたいする抵抗性と遺伝負因はその表現と推測される一と, 病前性格が大きく関与していると推定され, 遷延化の徴候は1~2週後のscoreの推移に反映される.躁うつ病の遺伝負因をもち, 執着気質あるいはメランコリー親和型の症例のscoreが, 1~2週後に低下しない時は, 遷延化の可能性があり, 自殺の危険性を考慮して, 治療計画を建てることが重要である.
  • 古川 誠一, 野口 久, 太田 舜二, 柴田 興一, 亀井 英一, 山根 清美, 武中 泰樹
    1987 年 47 巻 4 号 p. 597-600
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例: 57歳女性, 主訴: 頭痛, 歩行障害.現病歴: 昭和60年5月より, 右上下肢の脱力感が出現.頭痛, 歩行障害も悪化.昭和61年3月に頭部CTを施行し, 2個の腫瘤を有する多発性髄膜腫が疑われ, 脳神経外科にて腫瘍摘出術が行なわれた.腫瘍の病理学的検索ではmeningothelial meningiomaと診断された.なお, 臨床上からは, Von Recklinghausen病の症候は認められなかった.本邦で多発性髄膜腫の報告例は自験例も含め25例しか報告されていない.特にVon Recklinghausen病に合併していない症例は15例しかみられず, 稀なものと考え報告した.
  • 小嶋 信博, 岡 壽士, 宮山 信三, 浜井 直人, 岩井 裕子, 木村 一雄
    1987 年 47 巻 4 号 p. 601-604
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    経肛門的直腸異物を2例経験したので報告する, 症例1: 25歳, 男性。自慰行為にてウイスキーのミニボトルを経肛門的に挿入.腰椎麻酔下にて非観血的に異物を抜去したが, 術後2日目になって腹膜刺激症状, 腹腔内遊離ガス像が出現開腹手術を施行し, 直腸前壁に穿孔を認めた, 症例2: 36歳, 男性自慰行為にてシャンプー瓶を経肛門的に挿入, 腰椎麻酔下にて非観血的に異物を抜去し, 術後経過は順調であった.本邦においては経肛門的異物の報告は少いが, 今後は増加することが予想され, その治療には苦慮する点も多い.われわれの経験した2症例に若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 新村 和平, 浅川 義夫, 佐野 元春, 舩冨 等, 八田 善夫, 浜本 鉄也, 神田 実喜男
    1987 年 47 巻 4 号 p. 605-609
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
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    74歳, 女性の胆のう扁平上皮癌の1例を報告する。易出血性の十二指腸潰瘍性病変を初発症状としたまれな症例であり, 同部からの生検では, 腺癌が主体であったが, 剖検では大部分が扁平上皮癌で占められていた。胆のう扁平上皮癌の場合, 遠隔転移が末期まで少なく, 周囲臓器へ浸潤する傾向が強く, 従ってかなり大きな腫瘤を形成しても手術可能なことが多いとされている。先進部の一部にでも扁平上皮癌が認められた場合, 本例のように, その主体が扁平上皮癌である可能性を考慮し, 手術的切除を念頭におき, 積極的に検索をすすめる必要があると考えられた。
  • 范 広宇, 阪本 桂造, 藤巻 悦夫, 小川 剛司, 扇内 幹夫, 永田 善之, 小林 直人, 中山 泰成, 藤巻 悦夫, 武井 直樹, 園 ...
    1987 年 47 巻 4 号 p. 611-615
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/09/09
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