昭和医学会雑誌
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腰椎椎間関節の骨梁構造の病理組織学的並びに形態計測学的研究
林 良彦
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1987 年 47 巻 4 号 p. 577-586

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抄録
腰部脊柱管狭窄症の脊柱管狭窄に及ぼす椎間関節の態度について検索するために, 腰椎椎間関節の骨梁構造について病理組織学, 形態計測学的研究をおこなった。Control群として新鮮剖検屍体腰椎を, Patient群として変性性腰部脊柱管狭窄症例の手術摘出椎間関節を用いた.非脱灰研磨標本及びそのContact microradiogram (CMR) による硬組織学的検索と塩化シアヌル処理脱灰標本の観察と骨組織学的パラメーダーを算出し, 水平断による各部位の骨梁構造の対比とControl群とPatient群の比較を行ない, 次の結果を得た.1) Control群のCMR像の観察から, 切断高位や関節高位, 骨粗鬆化, 関節角度, 関節形態などによりあまり影響されず, 上下関節突起ともに脊柱管側のほうが脊柱管外側より石灰化骨梁が密であり, 椎間関節の内側部では力学的負荷に機能的対応をしていると考えられた。2) 脱灰標本では, Control群での脊柱管側の骨組織は脊柱管外側よりも骨梁や類骨が多く観察されるが, 骨梁の太さはほぼ一定であった.3) Control群とPatient群の脊柱管側骨組織の定量的形態計測の結果, Patient群では単位骨量, 単位類骨量共にControl群より有意に高値を示したが相対類骨量には有意差が認められなかった.平均骨梁幅はPatient群が上下関節突起共に有意に高値を示した.分画形成面ではPatient群の下関節突起が有意に高値を示した.これらPatient群の結果は高度変性をきたした骨梁構造の特徴と考えられた.4) Patient群の脊柱管側のテトラサイクリン骨標識標本で2重骨標識像が観察され, 類骨形成にひきつづく石灰化という骨の動的Remodelingが認められ, 同部での活発な骨増殖が示唆された.以上から腰椎椎間関節は脊柱管側に力学的負荷を受けており, Patient群では, さらに骨Remodelingにより脊柱管側への骨増殖のため, 脊柱管は同部において後側方より骨性狭窄を受けていることが示唆され, 変性性腰部脊柱管狭窄症の椎間関節のもつ意義は重要であると思われた.
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