昭和医学会雑誌
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老人保健の健康診査対象者の推計式に関する研究
三浦 宜彦
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1987 年 47 巻 5 号 p. 633-648

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抄録

本研究は, 老人保健法に基づく健康診査の対象者の把握が, 疫学的研究および健康診査の評価等にきわめて重要であることに鑑みて, すでに調査し推計式を提案した研究調査に新たな調査結果を加えて, 推計式の改良とその信頼性について検討したものである.全国の4県7市町において実施した住民調査の結果をもとに, 回帰分析を用いて推計式を考案・改良した.それを実際に某県下の15市町村において応用し, その信頼性を区間推定によって確かめた.老人保健法では健康診査の対象者を40歳以上の男女 (子宮がん検診は30歳以上) とし, その中から職場等でこれらに相当する検診を受けられる本人および家族を原則として除くこととしている.そこで, 最初に本人および家族として職場等の検診を受けられる者を検診事業別・性別・年齢階級別・医療保険 (国保とその他) 別等に検討し, 検診事業問, 男女間, 医療保険問および年齢階級間で検診対象者率に差があることを示した.これを基礎として, 年齢階級別人口および国保加入数から, 人口構成をも考慮して推計できる下記の検診事業別・性別検診対象者数推計式を考案した.
T=Σ {K (A+BK/P) + (P-K) (A'+B'K/P) }
ただし, K: 年齢階級別国保加入数
P: 年齢階級別人口
A, B, A', B': 定数
次に, この式の誤差は区間推定により95%の確率をもって, 一般診査では男0.2±11.3%, 女0.5±9.1%, 胃がん検診では男0.3±13.5%, 女0.1±6.8%, 子宮がん検診では-0.1±7.2%の中にあることを示した.さらに, 現に医療を受けている者を除く場合は前記の式に (1-地域の有病率) を乗ずることによって推計できる式を考案した.この推計式の応用として, 某県下の15市町村のデータをもとに, かりにその有病率に全国値を用いての推計を試みた結果, 対象者の推計には地域の有病率の差異が反映するとはいえ, おおむね正確なものであることを証明した.これらの推計式は容易に入手できる国保加入数を, また医療中の者を除く場合にはそれと有病率を, 用いることにより, 各市町村の人口構成を補正しつつ算出でき, その誤差も約10%以内に収まることから有効な推計法であり, 疫学者研究および健康診査の評価等に役立つものである.

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