昭和医学会雑誌
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糖尿病における血清過酸化脂質の血小板凝集能に及ぼす影響
陳 聰明平野 勉稲葉 昌久永野 聖司高橋 昭三
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1988 年 48 巻 1 号 p. 51-55

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抄録
糖尿病では動脈硬化の発症, 進展が一般人に比して高く, 血栓症の発症頻度も高い.血栓症の発症に関して血小板凝集能の亢進が重視されているが, われわれは血小板凝集惹起に対して血清過酸化脂質 (以下LPO) が促進因子となっていると考え以下の研究を行った.1) インスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 患者46名の血清LPOと血小板凝集能を測定した.2) アラキドン酸 (AA) およびリノール酸 (LA) の過酸化物arachidonic acid hydroperoxide (AAHPO) , linoleic acid hydroperoxide (LAHPO) を健常者の多血小板血漿 (PRP) にin vitroで添加しadenosine diphosphate (ADP) 凝集を測定した.3) ストレプトゾトシン (STZ) 糖尿病ラットにLAHPOを静注しADP凝集を測定した.そして以下の結果を得た.1) 糖尿病患者の血清LPOとADPによる血小板の最大凝集率 (ADPmax%) は弱い正相関を示した (P<0.05) .2) AAHPO, LAHPOは共に健常人血小板のADP凝集を亢進させた.3) 糖尿病ラットにLAHPOを静注した群では, 正常ラットにLAを静注した群, 正常ラットにLAHPOを静注した群, 糖尿病ラットにLAを静注した群に対しそれぞれ有意の血小板凝集能の亢進をみた (おのおのP<0.01, P<0.01, P<0.05) .以上の成績より, 糖尿病患者ではしばしば血清LPOの上昇を伴うが, LPOの上昇は血小板凝集に対し促進的に働き血栓症発症の誘因の一つとなっていると考えられた.
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