抄録
人体の形態や姿勢の把握と表現の方法は, 家政学, 医学, 人類学等の研究調査に欠くことができないにもかかわらず, 骨格計測を主体としたMartin法によるものの他に, 適切な方法は確立されていない.本研究は, 若い女子の身体形態特性に着目し, その把握と表現法の開発を目的に実施したものである.研究方法は, Silhouetter写真を用いるSilhouetter法, Slidinggaugeによる水平横断面輪郭図を用いるSlidin ggauge法, Laserによる自動描画装置で描いた水平横断面輪郭図を用いるLaser法の3つの方法を選んで, 体型を採取し, この実験データを用いて, 体型の表現方法について検討した.研究調査対象は, Silhouetter法は205名, Sliding gauge法は7名, Laser法は20名で, いずれも18~23歳の若い女子とした.結果および考察1) 8方向のSilhouetter写真によって, 下半身 (腹部最小囲計測位置より下部) の形態特性を明らかにする中で大腿前部, 側部ないし下腹部において, 最外突出点を持つ者があることを明らかにし, 従って, 殿囲計測位置以外にも存在するこれらの突出点を考慮すべきことを明らかにした.2) Slidinggauge法による殿囲周辺の形態観察の結果は, データの因子分析から「前面」「側面」「前側後側面」「後面」のそれぞれの特徴を表わす4つの因子が抽出され, それによって殿囲周辺の形態的特徴を明らかにした一すなわち, 「前面因子」は腹部の形態特徴, 「側面因子」および「前側後側面因子」は大腿部の前後および側部の形態特徴, 「後面因子」は殿部の形態特徴を表現するものであることを明らかにした.3) Laser法によって, 乳頭位胸囲, 腹部最小囲, 殿囲のThreesizesの計測位置における水平横断面を用いて, それらの相互位置関係を検討した結果, 身体の形態を把握.表現する4つの形態因子を抽出した.これによって腹部水平面を基準にして胸部水平面, 殿部水平面のずれによる身体の形態特性の表現方法を明らかにした.また, この4つの形態因子によって, 6つの身体形態グループに分かれることが明らかとなった仏以上のように, 1) と2) の方法は, 下半身の形態を把握.表現するには適切なものといえる.3) の方法は, 身体全体の形態特性の表現法として適切なものといえる.今後は, さらに被験者の層を拡げ, 本研究によって得られた身体特性の表現方法を用いて, 性別及び年齢別の身体形態の比較研究に発展・継続させて行きたいと考えている.