昭和医学会雑誌
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膀胱癌における腫瘍マーカーの診断的意義の検討
芝木 国雄大田 桂一深貝 隆志柴崎 裕杉村 芳文檜垣 昌夫今村 一男
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キーワード: 膀胱癌, 腫瘍マーカー
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1989 年 49 巻 6 号 p. 564-572

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抄録

膀胱腫瘍の診断に血中腫瘍マーカーが有用であるか否かにつき検討を行った.対象は1978年から1988年までに当科を受診した初発膀胱癌患者で, 組織学的に深達度が明らかな93例で, その内訳はpTa12例, pT150例, pT213例, pT310例, pT48例である.また同時期に受診した前立腺肥大症患者22名を対照として比較検討した.検討項目はcarcinoembryonic antigen (CEA) , ferritin, β2-microglobulin (β2Mg) , α-fetoprotein (AFP) , immunosuppressive acid protein (IAP) , tissue polypeptide antigen (TPA) の6項目である.その結果ferritin, AFPは前立腺肥大症群および膀胱癌の各深達度間に差を認めず, 腫瘍マーカーにはなりにくいと考えられた.CEAは前立腺肥大症群とpTa, pT4との間に有意差を認め, 診断効率から1.0ng/mlをcut off値とすると敏感度, 正診率は今回検討した項目中最も高かった.β2Mgは前立腺肥大症, pTa~pT3の各群とpT4との間に有意差を認めた.またβ2Mgは腎機能と相関することから, 血清クレアチニンとの相関を求めたが, 閉塞性腎障害を来たしやすいpT4においては相関を認めず, 腎機能による影響はうけていなかったと考えられた.IAPは前立腺肥大症群とpT2~pT4, pT4と前立腺肥大症群, pTa, pT1との間に有意差を認め, 深達度を増すごとに高値となる傾向がうかがえた.TPAは前立腺肥大症群とpT4の間に有意差を認めた.以上より今回の検討から膀胱腫瘍における治療前の血中腫瘍マーカーについて以下の結論を得た. (1) CEAのcut off値を1.0ng/mlとすると敏感度, 正診率が最も高く1.0ng/mlを越える場合には膀胱腫瘍も念頭におく必要がある. (2) IAPが異常値であればhigh stageの可能性が考えられる. (3) β2Mg, TPAが異常高値を示した場合にはpT4の可能性が考えられる.

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