昭和医学会雑誌
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培養系におけるFetal Calf Serum (FCS) によるT細胞の増殖と抗体産生の増加の誘導
大原 秀治太田 秀一田代 浩二三田 〓
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1989 年 49 巻 6 号 p. 555-563

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抄録

長い間, いろいろなin vitroの細胞培養系においてウシ胎児血清 (FCS) は培養細胞の維持に不可欠のものとされており, 種々の培養系で用いられてきている.最近免疫応答の実験系で, 培養液に対するこのFCSの添加により結果の解釈に困難の生ずることが報告され, またT細胞の増殖を誘導する可能性が示唆されるようになった.そのためか, serum-free mediumを用いる研究者達が増えてきている.そこでわれわれはFCSの細胞増殖と抗体産生に及ぼす影響を種々の条件下において検討し, 以下の結果を得た.
(1) まず最初に, ICR系マウス脾細胞のDNAに対するラジオアイソトープ (3H-thymidine) の取り込みを調べた.この細胞は無処置およびSRBC (ヒッジ赤血球) で免疫後6日目のマウスから得た.どちらの実験系でもFCS2.5-40%の添加によりdose-dependentな細胞増殖がみられた. (2) 次にこのような細胞増殖は通常用いられるFCS濃度 (5-20%) によりB細胞とT細胞 (C57Bl/6系マウス) でも誘導されることが見出された.
(3) 抗体産生に及ぼすFCS (5-20%) の影響は培養2日目にPFC assayで調べた.SRBCで免疫後4日目のICR系マウスから得た脾細胞とB細胞を用いた.いずれも抗SRBC (IgM) 抗体産生細胞の増加が認められた.
(4) しかし免疫後6日目のB細胞では, IgG抗体産生細胞に増加がみられたのみであった.この結果はFCSに対する感受性が細胞の種類あるいは分化段階によって異なっている可能性を示唆している.
(5) SRBCで免疫後4日目の脾およびT細胞 (ICR系マウス) にFCSを添加し, 培養上清を得た. SRBC-primed B細胞 (4日目) にこの培養上清を加えたとき, 抗SRBC抗体 (IgM) 産生細胞の増加がみられた.液性因子の介在している可能性がある.

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