1989 年 49 巻 6 号 p. 602-605
長期透析患者に発生した腎癌の1例を経験したので報告する.症例は, 49歳男性.8年5カ月におよぶ血液透析の既往を持つ.不明熱精査目的にて当科入院となり腹部エコー, CT等により左腎腫瘍と診断, 左腎摘出術を行った.摘出左腎は腎門部を中心とした多発性, 充実性腫瘍が膨脹性に発育しており, 乳頭型, 顆粒細胞亜型, 異型度2で, pT3, pV1b, pN1, pM0と診断された.非腫瘍部では, 多数の嚢胞形成を認め, acquired cystic disease of the kidney (以下ACDK) と考えられた.長期透析患者における腎悪性腫瘍の合併率は高く, また, 高率にACDKの合併を認めることより, 腎癌とACDKとの関連が問題であると考えられた.