昭和医学会雑誌
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緘黙症状を主徴とする前頭型Pick病の1例
―いわゆる“Running away” Behaviorと関連して―
梶田 修明石田 浩純高橋 正典延山 雅彦井上 道雄
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1989 年 49 巻 6 号 p. 597-601

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抄録

症例68歳女性, 発病初期より緘黙状態を呈し言語的疎通性が全く困難であったPick病の1例である.Pick病は従来より, その主たる病巣部位により側頭・前頭型, 側頭型, 前頭型に3分類されている.本例の臨床特徴としては前頭葉症状とされる発動性減退, 緘黙, 立ち去り行動が挙げられ, 側頭葉症状とされるPick病第1期に目立つ欲動的脱制止, 第II期の滞続言語は認められなかった.更に頭部X線CT, MRI, 123I-IMPSPECTの放射線学的画像所見に於ても, その病変部位は前頭葉が中心であり本例が前頭型Pick病と診断され得ると考えられた.本邦においては前頭型Pick病は稀であるといわれ, さらに発病初期より緘黙状態を呈した例も少なく, 前述した立ち去り行動“Running-away”Behaviorの発現機序に関する文献的考察も混え報告した.

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