昭和医学会雑誌
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軸圧負荷が骨折治癒過程に及ぼす影響について
西山 嘉信
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キーワード: 骨折治癒, 軸圧負荷
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1991 年 51 巻 4 号 p. 409-418

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抄録

骨折治癒過程において, 軸圧負荷が及ぼす影響を明らかにするために, 雑種成犬の大腿骨に作製した横骨折モデルを用いて, 組織学的並びに生体力学的立場から治癒状況の比較検討を行った.骨折モデルは, 創外固定器 (Orthofix, Dynamic Axial Fixator) を用いて, 比較的強固な初期固定を得た後, 骨切り後21日目に固定器本体部のtelescoping mechanismを利用して, 軸圧負荷 (axial dynamization) を加えた群 (D群) と, 実験終了まで初期固定を維持したコントロール群 (C群) に分けた.観察期間は, 骨切り後7週, 10週, 13週までとし, 屠殺3週前と4週前に, それぞれtetracyclineとCalSeinを投与した.摘出した資料を二分割して, 一方から脱灰標本を作製して, HE標本, Van Gieson標本, 骨切り部の皮質骨間部を対象とした骨形態計測を行って単位骨量 (tVsp) と分画形成面 (FrFS) を算出し, 残りの資料から非脱灰標本を作製して, 100μmでcontact microradiogram撮影, 20μmで螢光顕微鏡観察を行った.また, Orientec社製Tensilon捻り試験機を用いて, 単純捻り試験を行い, 負荷一変形曲線から各種パラメーターを算出した.組織学的観察によると, 7週から10週にかけて, D群の方が新生骨の形成が旺盛であった.tVspは, 経過とともに増加してゆき, 常にD群が上回っていた.7週では, C群32.8%, D群68.4%であり, 両群間に有意差がみられた (p<0.01) .また, 10週から13週にかけて, D群の新生骨の走行は骨軸方向に沿う傾向がみられ, 骨切り端と新生骨の境界は13週で不明瞭になった.この所見はCMRでより明かで, C群は骨軸と垂直方向の新生骨からなり石灰化も進んでいた.D群はハバース系の再造形が盛んで骨軸方向に沿った新生骨の添加がみられていた.FrFSは経過と供に減少していたが, D群では13週でもなお27.7%の高値を示していて, 再造形による骨添加を反映していた.7週と10週の捻り破断試験では, 最大トルク, 剛性ともにD群のほうがC群を上回っていて, 7週では正常骨に対し各々D群は46.0%, 50.3%, C群は17.6%, 32.6%であった.13週になると正常骨に類似した破断曲線を示したが, biomechanical stageは, C群はstageII, D群はstageIIIであった.つまり, 軸圧負荷は, 早期に新生骨の形成を促進し, さらに, ババース系による再造形を活発にして骨癒合を導き, 骨折治癒過程を促進することが明らかとなった.

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