昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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51 巻, 4 号
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  • 関水 正之
    1991 年 51 巻 4 号 p. 369-384
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    変形性股関節症における大腿骨頭骨嚢胞の修復機転を解明するために, 骨嚢胞の周囲の骨梁の状態を観察した.臨床的に変形性股関節症の診断にて人工股関節置換術を行い, その際に摘出した大腿骨頭33個を用いた.骨嚢胞の周囲の骨組織を病理組織学的に観察し, Contact micro-radiogramにて石灰化の状態を観察した.さらに, 骨嚢胞の周囲での病態像を定量的に観察するために, 骨嚢胞の周囲の骨梁の骨形態計測を行い, 比較検討した.また, 動的変動を知るために, Tetracycline二重標識法を組み合わせて観察した.骨嚢胞を存在部位によって, 関節面直下に存在する「表層嚢胞」と, 骨頭の内部深層に存在する「深層嚢胞」とに分類し, 深層嚢胞をさらに, 「内側非荷重部」「荷重部」「境界部」「外側非荷重部」に分類した.表層嚢胞の周囲の骨梁では, 類骨層が著明に増加し, 骨芽細胞も多数存在し, 活発な骨新生が行われていた.深層嚢胞の荷重部に存在する骨嚢胞の周囲の骨梁では, 骨形成面の増加とともに, 骨吸収面の増加がみられ, 骨改造が特に活発に行われていた.外側非荷重部に存在する骨嚢胞の周囲の骨梁では, 類骨はほとんどみられず, 骨改造が非常に遅延していた.骨形態計測でも表層嚢胞の周囲の骨梁では, 単位類骨量と分画形成面が, Control群の同一部位の骨梁に比べて有意に高値を示し, 分画標識面, 石灰化速度も深層嚢胞に比べて有意に高値を示した.表層嚢胞の周囲で骨新生が最も活発に行われていることが定量的に認められた.深層嚢胞の周囲の骨梁では, 骨嚢胞の存在部位によって骨新生の程度が異なり, 荷重部に存在する骨嚢胞の周囲で最も骨新生が活発に行われ, 境界部から外側非荷重部に向かうにつれて骨新生は減少していることが定量的に認められた.骨吸収面は骨嚢胞の存在部位にかかわらず増加の傾向をみるが, 荷重部と境界部に存在する骨嚢胞の周囲の骨梁では特に増加を示し, 骨の吸収が活発に行われていることが定量的に認められた.臼蓋形成術や骨切り術を行うことにより, 骨頭にかかる単位荷重量や, 荷重方向が変化し, その結果, 骨嚢胞の周囲の骨梁の骨新生が活発となり, 骨嚢胞が修復の方向へと向かうものと考えた.
  • ―アレルゲンエキス中のヒスタミン, コリン濃度について―
    尾登 誠
    1991 年 51 巻 4 号 p. 385-394
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    小児アレルギー性疾患におけるプリックテストは現在においてもアレルゲン検索のために有用な検査法であるが, アレルゲンエキス中に含まれるヒスタミン, コリン, モノアミンなどの血管作動性物質による非特異的な反応がみられることが指摘されている.また, 食物過敏症の中には, 免疫機序を介した本来の食物アレルギーだけでなく, 食物中に含有あるいは合成されるヒスタミン, コリンなどの血管作動性物質 (仮性アレルゲン) による過敏症状も少なくない.しかし, 現時点においては食物摂取による過敏症状をアレルギー機序, 非アレルギー機序にはっきりと区別することは容易でない.そこで, 今回, プリックテストにおける非特異的反応の除去と, 食物中に含まれる仮性アレルゲンを確認する目的で, 49種のアレルゲンエキス中のヒスタミンとコリン濃度および26品目の生の食物中のヒスタミン濃度と33品目の生の食物中のコリン濃度を測定した.さらに, これら品目のアレルゲンエキスを用いてアトピー性疾患患者30名を対象としてプリックテストを実施した.日本アレルギー学会スクラッチテスト研究班の基準で判定した場合と, 同時に1mg/ml, 10mg/mlのヒスタミン溶液を対照液に置いて判定した場合とで, 血清中の特異IgE抗体 (RAST) および誘発歴・過敏食物除去負荷試験にどの程度の一致率が得られるかについて検討を加えた.その結果, H.D., ダニ, 卵白, 牛乳などのアレルゲンエキス中のヒスタミン濃度は低く, これらのアレルゲンによるプリックテストで陽性を示す例では該当食物摂取による誘発歴とRAST陽性を示すものが多かった.一方, 果物, 野菜, 魚類などではヒスタミン値は高値のものが認められ, 日本アレルギー学会スクラッチテスト研究班の判定基準で判定したものより, ヒスタミン溶液を対照液に置いた基準で判定した方がいずれも誘発歴やRASTとの一致率が高かった.このことからプリックテストの臨床有用性を高める上で, プリックテストの実施にあたっては従来より実施されている50%グリセリン生食液 (対照液) に加えて1mg/mlのヒスタミン溶液を対照液に置くことが望ましいと考えられた.しかし, コリンについては, アレルゲンエキス中に相当量を含むものがあり, 食物中のコリン濃度を知ることは臨床的に有用と考えられるが, プリックテストにおいては, コリン溶液を対照液に置いても反応が出現しない例が多く, また, ヒスタミン溶液ほどの有用性はないものと考えられた.
  • 第1編 膝十字靭帯の微細血行について
    竹政 敏彦
    1991 年 51 巻 4 号 p. 395-402
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    膝十字靱帯は膝関節を安定させる重要な靱帯で, 損傷すると再建術を必要とすることが多い.靱帯再建術に際して, biomechanicalな問題とともに, 再建靱帯の再生過程における血行再開という問題は, 再建法や再建材料を考える上で重要と思われる.ところが, 従来の解剖書には膝十字靱帯の微細血行について, 詳細の記載に乏しく不明の点も少なくないので, 今回若年者の切断肢を用いて墨汁法による微細血管造影により, 膝十字靱帯の観察を行い検討した.微細血管造影後, 膝関節内を観察すると, 前十字靱帯は, 大腿骨外顆部より発し脛骨顆問隆起部へ達し, 一部膝蓋下脂肪体へと続く滑膜に被われており, その滑膜は微細で豊富な毛細血管網を有していた.矢状面連続切片を作製し実体顕微鏡下に観察すると, 前および後十字靱帯表面は滑膜に被われ, その滑膜より微細な毛細血管が靱帯内へと進入しているが, 後十字靱帯はさらに後方の軟部組織からも血管が進入していた.いずれの靱帯も表層は血行に富んでいるが, 靱帯中央部の深層部や靱帯の大腿骨, 脛骨付着部での靱帯一骨移行部はhypovascularであり, 骨からの血行はほとんどみられなかった.諸家の報告によれば, 十字靱帯再建術後の移植靱帯の再生過程は, その材料によらずほぼ同様であり, 移植靱帯はまず滑膜に被われ, 正常靱帯に見られるのと同じくその滑膜内の毛細血管が靱帯内へと進入することによりおおむね20週程度でほぼ全域にわたって血行再開が認められるようである.正常靱帯の微細血行において, 靱帯周囲の軟部組織が重要であることと同様に, 靱帯再建術に際しても, 靱帯周囲の軟部組織をなるべく損傷しないよう温存し, 移植靱帯に膝蓋下脂肪体や滑膜を移行しておくことが有効であると思われた.
  • 第2編 膝前十字靭帯のMechanoreceptorについて
    竹政 敏彦
    1991 年 51 巻 4 号 p. 403-408
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 膝関節の求心性運動制御機構をつかさどると言われているmechanoreceptorの存在が注目されるようになってきた.しかし, その形態や分布などについては不明の点も少なくない.そこで, 今回手術時得られたヒト膝前十字靱帯 (新鮮断裂19例, 若年者切断肢1例, 陳旧性断裂13例, 変形性膝関節症3例, 靱帯再建術後3例) を検体とし, Gairns塩化金染色変法を用いてme.chanoreceptorの観察を行い, 比較検討した.ヒト膝前十字靱帯には痛みの受容器であるfreenerveendingの他に3種のmechanoreceptor (slowlyad apting receptorであるRuffini corpuscleとGolgi tendon organ, rapidly adapting receptorであるPacinian corpuscle) が存在した.いずれのmechanoreceptorも脛骨付着部付近の靱帯表層部に多く存在し, 靱帯中央部や深層部にはほとんど存在しなかった.変形性膝関節症例や陳旧性靱帯断裂例ではmechanoreceptor全体の減少がみられ, 加齢や長期にわたる靱帯の断裂といった変化は, degenerationによると思われるmechanoreceptorの減少をもたらし, 膝関節の求心性運動制御機構を減弱させると考えられた.また, 靱帯再建術後の再生靱帯にはmechanoreceptorは存在せず, このことは求心性運動制御機構を欠くこととなり, 靱帯再建術に際しては, 膝のmechanical stabilizerとしての機能だけでなく, physical feedback mechanismをも考慮した治療形態を考える必要があると思われた.
  • 西山 嘉信
    1991 年 51 巻 4 号 p. 409-418
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨折治癒過程において, 軸圧負荷が及ぼす影響を明らかにするために, 雑種成犬の大腿骨に作製した横骨折モデルを用いて, 組織学的並びに生体力学的立場から治癒状況の比較検討を行った.骨折モデルは, 創外固定器 (Orthofix, Dynamic Axial Fixator) を用いて, 比較的強固な初期固定を得た後, 骨切り後21日目に固定器本体部のtelescoping mechanismを利用して, 軸圧負荷 (axial dynamization) を加えた群 (D群) と, 実験終了まで初期固定を維持したコントロール群 (C群) に分けた.観察期間は, 骨切り後7週, 10週, 13週までとし, 屠殺3週前と4週前に, それぞれtetracyclineとCalSeinを投与した.摘出した資料を二分割して, 一方から脱灰標本を作製して, HE標本, Van Gieson標本, 骨切り部の皮質骨間部を対象とした骨形態計測を行って単位骨量 (tVsp) と分画形成面 (FrFS) を算出し, 残りの資料から非脱灰標本を作製して, 100μmでcontact microradiogram撮影, 20μmで螢光顕微鏡観察を行った.また, Orientec社製Tensilon捻り試験機を用いて, 単純捻り試験を行い, 負荷一変形曲線から各種パラメーターを算出した.組織学的観察によると, 7週から10週にかけて, D群の方が新生骨の形成が旺盛であった.tVspは, 経過とともに増加してゆき, 常にD群が上回っていた.7週では, C群32.8%, D群68.4%であり, 両群間に有意差がみられた (p<0.01) .また, 10週から13週にかけて, D群の新生骨の走行は骨軸方向に沿う傾向がみられ, 骨切り端と新生骨の境界は13週で不明瞭になった.この所見はCMRでより明かで, C群は骨軸と垂直方向の新生骨からなり石灰化も進んでいた.D群はハバース系の再造形が盛んで骨軸方向に沿った新生骨の添加がみられていた.FrFSは経過と供に減少していたが, D群では13週でもなお27.7%の高値を示していて, 再造形による骨添加を反映していた.7週と10週の捻り破断試験では, 最大トルク, 剛性ともにD群のほうがC群を上回っていて, 7週では正常骨に対し各々D群は46.0%, 50.3%, C群は17.6%, 32.6%であった.13週になると正常骨に類似した破断曲線を示したが, biomechanical stageは, C群はstageII, D群はstageIIIであった.つまり, 軸圧負荷は, 早期に新生骨の形成を促進し, さらに, ババース系による再造形を活発にして骨癒合を導き, 骨折治癒過程を促進することが明らかとなった.
  • 横川 京児, 河村 正敏, 新井 一成, 塩川 章, 太田 秀一
    1991 年 51 巻 4 号 p. 419-428
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    大腸癌の予後を左右する重要な因子に血行性転移があげられる.特に肝転移は予後に大きく関与しており, 静脈侵襲の程度を観察することにより, 肝転移の危険性を予測することが十分可能であると考えられる.今回著者らは, 進行大腸癌治癒切除症例における静脈侵襲状況をVictria blue-H・E染色を用い観察し, 静脈侵襲の有無, 侵襲程度, 侵襲部位および侵襲静脈径を検索し, これらの肝転移への関与, ならびにその臨床病理学的意義を検討した.対象は, 教室における過去8年間 (1981.1~1988.12) の初発大腸進行癌切除症例378例中単発大腸癌治癒切除症例220例である.静脈侵襲陽性は141例 (64.1%) であり, これらの静脈侵襲頻度をv1; 1~2個, v2; 3~6個, v3; 7個以上, に分け, また, 侵襲静脈径を各症例の最も太い静脈径によりS・M・L群に分類し検討した.侵襲頻度別にみるとv1: 80例 (56.7%) , v2: 48例 (34.0%) , v3: 13例 (9.3%) , 侵襲径ではS群: 18例 (12.8%) , M群: 95例 (67.4%) , L群: 28例 (19.9%) であり, 両者の問に相関関係がみられ, 侵襲頻度が多いものほど, 侵襲径の大きい群に属した.v (+) 例では中分化癌, a2+Sが有意に高率であった.静脈侵襲頻度, 侵襲静脈径と占居部位, 組織型, 深達度およびリンパ節転移との問に相関をみられなかったが, リンパ管侵襲のうち1y3とに相関関係を認めた.予後の検討では, v (-) , v (+) 症例の5生率はそれぞれ84.2%, 58.6%と有意差がみられ, 静脈侵襲頻度が高い症例ほど, また静脈侵襲径が太いほど予後不良であった.肝再発は17例 (7.7%) にみられ, うち16例がv (+) であった.静脈侵襲頻度別にみると, v0: 1.2%, v1: 5.0%, v2: 12.5%, v3: 46.2%, 侵襲静脈径別では, S群: 5.6%, M群: 7.4%, L群: 28.6%, また, 漿膜下層静脈侵襲の有無で比較すると, ssv (+) : 16.3%, ssv (-) : 3.6%であり, 静脈侵襲頻度の高いもの, 侵襲静脈径の太いもの, ssv (+) で有意に肝再発がみられた (p<0.05) .また, 占居部位, 組織型, リンパ管侵襲およびリンパ節転移では相関関係がみられず, 深達度のみに肝再発との相関関係を認めた.以上, 大腸癌における静脈侵襲状況は術後肝再発を予測するうえできわめて重要であり, これらの危険因子の大きい症例では治癒切除症例であっても厳重な経過観察が必要であると考えられた.
  • ―特にアルブミン産生能について―
    飯島 忠
    1991 年 51 巻 4 号 p. 429-434
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    角田らにより株化樹立されたAFP非産生未熟型肝芽腫由来のOHR株は, 肝芽腫中最も未熟な細胞と考えられている.今同, このOHR株を用い, この細胞の由来を免疫組織化学的 (ABC法) に証明し, さらに機能的分化度についてはコラーゲンの産生能, 特に1型および皿型についてプロコラーゲンの産生能についてもABC法を用いて検討した.また, OHR株が肝細胞由来性であることを証明するため, ABC法を用いて細胞のアルブミン産生能を定性的に確認し, Hy.drocortisone添加によるアルブミン産生能に対する影響についても, TIA法を用いて定量した.結果: 初回, 患者から摂取した細胞においては, α1-antitrypsin陽性, keratin陽性, IEMA陽性, vimfntin陰性, コラーゲンについては, I型, III型, IV型コラーゲンは陽性, V型は陰性であり, I型フロコラーゲン (PIC) は陰性, III型プロコラーゲン (pIIIP) 陽性であった.今回検討したOHR株単贋培養標本では, α1-antitrypsin陽1生, keratin陽性, EMA陽性, vimentin陰性であり, コラーゲンについてはI型, V型は陽性, III型, IV型が弱陽性で, PIC, PIIIPは陽性であった.またOHR cell block標本では, I型, III型, IV型コラーゲン陽性で, V型は弱陽性, PIC陰性, PIIIPは陽性であった.アルブミンについては組織標本, 単層培養標本, cell block標本のいずれにおいても胞体がアルブミン陽性に染色された.また, アルブミンの定量では, Hydrocortisone添加例では, 第3日, 7日ではアルブミン値2μg/ml以下であったが, 第15日で2frg/ml, 第33日で5Fcg/m1と増量した.一方, Hydrocortisone無添加例では, いずれの時期においても2fcg/ml以下であった.以上の結果から, OHR株は, その由来となったAFP非産生ヒト未熟型肝芽腫細胞と同じく上皮由来で, 少なくともI, III, IV型コラーゲンを産生するため, その増殖能および分化能を維持すべき条件を持つものと思われた.また, 肝細胞由来の細胞が持ちうるアルブミンの産生能を有し, かっこの機能がHydrocortisoneにより増幅されることが判明した.このことから, AFP非産生未熟型肝芽腫においては分化誘導法の応用が可能であることが示唆された.
  • 甲田 基夫, 猪口 清一郎, 伊藤 純治, 鈴木 雅隆, 熊倉 博雄
    1991 年 51 巻 4 号 p. 435-441
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    生体の体幹ならびに上, 下肢帯における骨格筋発達の諸相を明らかにする一環としてErdheim12高 (恥骨結合上縁高) におけるCT写真について, 観察された諸筋の断面を計測, 相互に比較して個体差の検討を行った.研究対象は30歳代から70歳代にわたる健康な成人99名 (男性: 50, 女性: 49) で, 30歳代から70歳代までの5年齢段階と, ローレル指数によるA, C, D3体型に区分した.観察した筋は大腿筋膜張筋, 大殿筋, 中殿筋, 内閉鎖筋, 双子筋, 腸腰筋, 大腿直筋, 縫工筋, 恥骨筋および錐体筋の10筋で, それぞれについて, CT写真をトレースして断面積を計測, 性別, 年齢別, 体型別に比較検討した.結果: 1.各筋の断面積を比較すると, 筋総断面積7349.2mm2に対して大殿筋が, 47.8%を占め最も大, 腸腰筋, 内閉鎖筋, 双子筋および中殿筋がそれぞれ9%前後でこれにつぎ, 以下, 恥骨筋と大腿筋膜張筋が4%台, 大腿直筋と縫工筋が3%前後, 錐体筋が1.2%で最も小であった.2.性別的には一般に男性が女性よりも大であったが, 外寛骨筋群では特に著明なものが多かった.しかし相対的には大殿筋と内閉鎖筋は女性の方が男性よりも優る傾向が認められた.3.年齢的には筋総断面積は男性では40歳代から, 女性では50歳代からそれぞれ減少, 男女とも70歳代が最も小であった.各筋については一般に男性では, 内外寛骨筋群と大腿伸筋群で加齢減少の傾向がみられ, 内閉鎖筋に著明で, 中殿筋と双子筋がこれについでいたが, 女性では内閉鎖筋と大殿筋においてのみ男性と同様の傾向が認められた.4.体型別には著明な差が認められたのは殿筋群のみで, D体型は男性では中殿筋が, 女性では大殿筋が, C体型は男性では内閉鎖筋が特に大であった.以上のことから, 性別的には男女による下肢帯筋の発達の相違, 年齢的には股関節屈曲運動と下肢支持機能の減退, 肥満者における股関節の伸展および外転運動への負荷の増大傾向等が考えられた.
  • 佐藤 康雄, 佐田 博, 舩冨 等
    1991 年 51 巻 4 号 p. 442-448
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    残胃の吻合部に粘膜ヒダの限局性肥厚を認め, 組織学的に腺窩上皮の過形成と嚢胞形成が隆起の主体を成すgastritis cystica polyposa (以下GCP) につき検討した.2/3部分切除後の良性残胃112例を対象とし, GCP発生頻度を手術術式, 術後経過年数と比較するとともに早朝空腹時残胃内の胆汁酸濃度及びトリプシン濃度を測定し, また残胃吻合・縫合部の胃生検材料を用いて胃粘膜内ヘキソサミン量を測定した.GCPは, Billroth-II法 (Bill-II法) 残胃に好発するといわれているが, Billroth-I法 (Bill-I法) にも比較的高率に認められた.また, 十二指腸潰瘍で胃切除された残胃では, 術後年数を経るに従いGCP発生頻度は増加傾向にあるのに対し, 胃疾患で切除された場合には差を認めなかった.両群間での切除時の年齢を比較すると十二指腸潰瘍群では平均年齢として12.9歳若く, GCP発生母地として胃粘膜の萎縮性変化が推定された.さらに, GCP発症要因についてみると, トリプシン, 胃粘膜内ヘキソサミン量は, GCPの有無による差は認めなかったが, 胆汁酸分析では, GCP群でCDCA, CA濃度が高く, これらの胆汁酸におけるグリシン/タウリン抱合比 (G/T比) は低下し, いずれも有意であり, GCP発症に関与しているものと考えられた.しかし, Bill-II法によるGCPを認めない群でも, Bill-I法のGCPを認める群に比べ濃度は高く, 胆汁酸のみでGCP発症を説明することは困難と思われた.すなわち, Bill-I法およびBill-II法において, ともに複数の発症要因があり, それぞれのかかわる程度がI, II法で異なるものと考えられた.
  • 稲垣 昌博, 中山 貞男, 上條 由美, 呉 育興, 桜井 淑子, 小口 勝司
    1991 年 51 巻 4 号 p. 449-454
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    コレステロール飼料飼育による若齢ラットの実験的高脂血症に対するシクロアルテノールフェルラ酸 (CAF) とβ-シクロデキストリン (β-CyD) との包接体CAF-β-CyDの作用を検討した.動物は5週齢SD系雄性ラットを用い, 1群6匹とした.CAF 300mg/kg, CAF-β-CyD180, 600, 1800mg/kg, β-CyD 1500mg/kgを0.5%コレステロール飼料 (HCD) 飼育下に, 1日1回12日間経口投与し, 投与6, 12日間後に血清を採取し, 各脂質の測定を行なった.HCD飼育により血清の総コレステロール (TC) , リン脂質 (PL) , 遊離コレステロール (FC) , 中性脂肪 (TG) は著明な増加を示し, 高密度リポ蛋白中のコレステロール (HDL-C) は6日間飼育では減少, 12日間飼育で増加傾向を示した.これに対しCAF-β-CyDは, TC, FC, TGの増加を抑制し, HDL-Cの減少を抑制した.CAFはPL, TCの増加を抑制した.これらの結果から, CAF-β-CyDの抗高脂血症作用はCAFに比べて強いものと思われる.
  • 伊藤 正吾, 赤木 太郎, 内田 潤, 山本 純, 佐藤 滋, 杉崎 徹三
    1991 年 51 巻 4 号 p. 455-459
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    組織障害における活性酸素の関与につき種々の検討がなされている.活性酸素による組織障害の機序として, 細胞膜構成成分である脂質の不飽和脂肪酸に活性酸素のラジカルが結合し, 以後次々とラジカルがチェーン反応を起こすことにより脂質を過酸化し組織障害を惹起すると説明されている.そこで本実験では活性酸素により惹起される腎障害として, ピュウロマイシン (PA) 投与による腎症を作製し, 膜脂質の過酸化を抑制する抗酸化剤をラットに投与し蛋白尿の改善を検討した.また, 鉄イオンの介在にてH2O2からOHラジカルが生成するが, そのOHラジカルのPA腎症への関与を検討するため鉄のキレート剤であるデフェロキサミン (DF) をラットに投与し検討した.ラットは抗酸化剤のα-トコフェロール (VE) 欠乏食もしくは添加食にて長期飼育した後, PAを静注投与した.その結果, VE添加食にて飼育したラットに蛋白尿の減少傾向を認めた.過酸化脂質の測定はTBA法にて施行したが, 腎組織のTBAはVE添加飼料にて飼育したラットに比べVE欠乏飼料にて飼育したラットに高値を認め, また蛋白尿のみられたラットに高値を認めた.一方, DFを投与したPA腎症ラットでは, 投与しなかったラットに比べ多量の蛋白尿を認めた.以上の結果より, 腎組織での過酸化脂質の増加が組織障害そして蛋白尿の増悪に関係があると思われ, その過酸化脂質の生成, 増加に活性酸素が関係すると思われた.また, VE添加飼料にて飼育したラットでは腎のTBAは低値であり, PA投与にて出現した蛋自尿の量も低値であったことから, 抗酸化剤の腎疾患への投与は脂質の過酸化を抑制し, 蛋白尿の改善につながると思われ, ヒト腎症の治療の一助となることが期待された.しかし, OHラジカルのPA腎症への関与は今回の実験結果からは不明であり, 今後さらに詳細な検討が必要と思われた.
  • 森谷 聡男
    1991 年 51 巻 4 号 p. 460-463
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    冠血管拡張薬, 抗血小板作用薬として開発されたジピリダモール (ペルサンチン) には, 近年, in vitroにおける活性酸素のスカベンジャー作用や脂質の過酸化抑制作用のあることが報告されており, ジピリダモールにも放射線防護作用が期待し得る.今回はマウスを用いてジピリダモールの放射線防護効果の有無を検討した.60Co-γ線8.0Gy全身照射30日後のジピリダモール非投与群の致死率89%に対し, 照射1hr前, 0.5mg, 1.0mg腹腔内投与群で56% (P<0.05) , 2.0mg, 4.0mg投与群では33% (p<0.01) で有意な放射線防護効果が認められた.ジピリダモール2.0mg腹腔内投与において60Co-γ線を6.0-10.OGy照射時では, 7.0, 8.0, 9.0Gy照射時にジピリダモール投与群の致死率が有意に減少した.30日後の50%致死率 (LD50/30) の線量をlogistic analysisにより求めたところペルサンチン投与群では7.65Gy, 非投与群では6.63Gyとなり1Gy以上の差が得られ, 線量減弱率DRF (dose reduction factor) は1.15 (x2検定p<0.01) となった.マウス全身照射によるin vivoでのジピリダモールの放射線防護効果が認められた.さらに臨床例における放射線防護作用を乳癌患者の縦隔照射例で末梢血中の血小板数, 白血球数を指標に検討したが, ジピリダモール150mg/日経口投与群と非投与群との間で有意差は見られなかった.骨髄に対する防護効果以外の要因が推察された.
  • 国村 利明, 諸星 利男, 吉田 悦子, 浜本 鉄也, 神田 実喜男, 永山 剛久
    1991 年 51 巻 4 号 p. 464-468
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    十二指腸平滑筋肉腫は比較的稀な腫瘍ではあるが最近報告例も増加している.しかし臨床的に, 膵頭部に発育する症例では膵腫瘍とくに嚢胞性膵腫瘍との鑑別が問題となる場合がある.今回われわれは十二指腸平滑筋肉腫の一切除例を経験した.症例は41歳, 女性で右季肋部腫瘤の精査にて入院し, 血清検査上著変を認めなかったが, 画像診断上膵頭部に径7cm程度の内腔に不正な隆起を認めるcystic tumorが認められた.臨床的に嚢胞性膵腫瘍が疑われ膵頭十二指腸切除術が施行された.切除標本にて膵頭部を置換するようにCystic tumorの発育がみられ, 割面の検索にて中心壊死傾向を伴い偽嚢胞の形成がみられた.組織学的に紡錘形の腫瘍細胞が錯綜して増殖し核分割像も目立ち, 免疫組織学的にvimentin, actinに陽性を示し, 更に電顕的にfocal densityを含むアクチン線維が確認されたことより平滑筋肉腫と診断された.
  • 佐藤 暢夫, 安本 和正, 桑迫 勇登, 細山田 明義
    1991 年 51 巻 4 号 p. 469-471
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    気道確保の新しい方法として近年注目されているラリンジャルマスクのサイズ2の使用時に挿入位置が不適切であったため, 換気障害をきたした10カ月女児の一症例を経験した.終末呼気炭酸ガス分圧が60mmHgを越えていたことより換気障害を発見した.用手的換気補助によりPaCO2は40mmHg前後まで下降し, 無事手術は終了した.捻れによる挿入位置異常を示唆するチューブ部分のラインマークは, 先端部分の状況を必ずしも正確に表さなかった.
  • 小笹 潔, 石川 昌澄, 石川 義昌, 五十嵐 隆一, 菱田 豊彦
    1991 年 51 巻 4 号 p. 472-475
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    直腸に血管腫様病変を伴ったKlippel-Trenaunay-Weber症候群の1例を報告する.症例は, 20歳, 男性.幼少時より体幹および上肢の母斑, 右手左足の肥大, 両下肢の静脈瘤が認められ, 15歳の時, 本症候群と診断された.健康診断にて便潜血反応陽性を指摘され, 大腸内視鏡にて精査する.肛門側より15cm, 6時の方向に, 全周が淡紅色の表面平滑で軟らかい血管腫が認められた.現在経過観察中である.本症は先天性の血管形成異常のため発生すると考えられ, 腹腔臓器にも種々の血管性病変が存在する可能性が高い.下血や血尿などの症状が伴わなくとも腹腔内臓器の血管性病変を疑い, 大腸内視鏡などの精密検査を行なえば, 高率に血管性病変を認められると思われる.
  • ―上部および下部消化管良性病変の比較検討―
    石川 昌澄, 小笹 潔, 石川 義昌, 五十嵐 隆一, 菱田 豊彦
    1991 年 51 巻 4 号 p. 476-480
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    平成1年より平成2年までの2年間に, 受診した帯状疱疹患者25症例に, 上部消化管内視鏡検査を施行し, 異常所見が10症例に認められた.病変はすべてが良性の胃病変であり, その内訳は, 胃潰瘍および胃びらんであり, 胃潰瘍の陥凹面は浅いという特徴を有していた.またその25症例中12症例に対して大腸内視鏡検査を施行した.びらんおよび潰瘍性病変を1例ずつ認め, その潰瘍性病変は, 胃潰瘍に類似して陥凹面が浅いという特徴を有していた.
  • 北川 行夫, 深沢 千秋, 流石 恵子, 庄 貞行, 安藤 治憲, 川瀬 紀夫, 塩川 章, 太田 秀一, 風間 和男, 保阪 善昭, 藤澤 ...
    1991 年 51 巻 4 号 p. 481-486
    発行日: 1991/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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