昭和医学会雑誌
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AFP非産生ヒト未熟型肝芽腫樹立細胞株 (OHR株) における機能的分化度についての検討
―特にアルブミン産生能について―
飯島 忠
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1991 年 51 巻 4 号 p. 429-434

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抄録

角田らにより株化樹立されたAFP非産生未熟型肝芽腫由来のOHR株は, 肝芽腫中最も未熟な細胞と考えられている.今同, このOHR株を用い, この細胞の由来を免疫組織化学的 (ABC法) に証明し, さらに機能的分化度についてはコラーゲンの産生能, 特に1型および皿型についてプロコラーゲンの産生能についてもABC法を用いて検討した.また, OHR株が肝細胞由来性であることを証明するため, ABC法を用いて細胞のアルブミン産生能を定性的に確認し, Hy.drocortisone添加によるアルブミン産生能に対する影響についても, TIA法を用いて定量した.結果: 初回, 患者から摂取した細胞においては, α1-antitrypsin陽性, keratin陽性, IEMA陽性, vimfntin陰性, コラーゲンについては, I型, III型, IV型コラーゲンは陽性, V型は陰性であり, I型フロコラーゲン (PIC) は陰性, III型プロコラーゲン (pIIIP) 陽性であった.今回検討したOHR株単贋培養標本では, α1-antitrypsin陽1生, keratin陽性, EMA陽性, vimentin陰性であり, コラーゲンについてはI型, V型は陽性, III型, IV型が弱陽性で, PIC, PIIIPは陽性であった.またOHR cell block標本では, I型, III型, IV型コラーゲン陽性で, V型は弱陽性, PIC陰性, PIIIPは陽性であった.アルブミンについては組織標本, 単層培養標本, cell block標本のいずれにおいても胞体がアルブミン陽性に染色された.また, アルブミンの定量では, Hydrocortisone添加例では, 第3日, 7日ではアルブミン値2μg/ml以下であったが, 第15日で2frg/ml, 第33日で5Fcg/m1と増量した.一方, Hydrocortisone無添加例では, いずれの時期においても2fcg/ml以下であった.以上の結果から, OHR株は, その由来となったAFP非産生ヒト未熟型肝芽腫細胞と同じく上皮由来で, 少なくともI, III, IV型コラーゲンを産生するため, その増殖能および分化能を維持すべき条件を持つものと思われた.また, 肝細胞由来の細胞が持ちうるアルブミンの産生能を有し, かっこの機能がHydrocortisoneにより増幅されることが判明した.このことから, AFP非産生未熟型肝芽腫においては分化誘導法の応用が可能であることが示唆された.

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