昭和医学会雑誌
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軟部腫瘍切除症例の病理組織学的検討
―特に悪性軟部腫瘍の臨床病理像および免疫組織化学的所見について―
堀之内 達郎佐藤 正邦諸星 利男国村 利明神田 実喜男藤巻 悦夫永山 剛久
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1993 年 53 巻 5 号 p. 455-464

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抄録

昭和大学第一病理学教室および関連病院において最近10年間に外科的切除された軟部腫瘍752例についてWHO分類に準じて組織分類し, また発生母地別に区別し臨床病理学的検索を加えた.さらに, 悪性腫瘍を中心に一部の症例については, 電顕的, 免疫組織化学的に検索を行い, 病理形態学的考察を加えた.発生母地別には脂肪組織由来が390例 (52%) (内脂肪腫380例) で, 次いで末梢神経由来が88例 (12%) (内神経鞘腫65例, 神経線維腫21例) で, 血管由来が66例 (9%) (内血管腫51例, グロームス腫瘍10例) で, 線維組織由来が56例 (7%) (内線維腫23例, 皮膚線維腫21例) で, 筋組織由来が40例 (5%) (内血管平滑筋腫22例, 平滑筋腫12例) であり, 軟部の非腫瘍性あるいは腫瘍としては疑わしい病変としてガングリオンが54例, 腱鞘巨細胞腫および色素絨毛性結節性滑膜炎が23例, 線維黄色腫が17例みられたが, その他の組織由来の腫瘍は, かなり稀であった.また, 発生母地性差はやや女性に多く, 神経組織由来のものでは男性に好発する傾向がみられた.また, 発生母地別発生年齢は神経組織由来のものは比較的高齢者に, 血管由来のものは比較的若年者に好発する傾向がみられた.悪性軟部腫瘍は計31例 (4%) 含まれており, その内訳は脂肪肉腫が6例, 悪性線維性組織球症が5例, 平滑筋肉腫および滑膜肉腫が4例, 線維肉腫, 横紋筋肉腫, 悪性神経鞘腫, 骨外性Ewing肉腫が2例, 明細胞肉腫, 血管肉腫, 胞巣状軟部肉腫, 脊索腫がそれぞれ1例であった.悪性例は光顕的に分化方向の不明な症例も少なくなく, これらについては電顕および免疫組織化学的染色が補助的診断として極めて有効であると理解された.

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