抄録
16歳男性の脛骨に発症した骨肉腫および50歳男性の大腿骨に発症した軟骨肉腫より細胞を分離して, それぞれをSASY-4およびSASY-1とした.これらの培養細胞株の性状を解析し, すでに樹立されている4種類のヒト骨肉腫細胞株 (Saos-2, Mg63, HOS, YR-2) およびヒト線維肉腫細胞 (HT1080) の性状と比較検討した.各細胞株の倍加時間は, SASY-1が84時間で一番長く, 次いでSASY-4が54時間で, 他の細胞株では33から16時間であった.各細胞株のアルカリフォスファターゼ (ALP) 活性を組織化学的および免疫組織化学的に検討したところ, Saos-2, YR-2, SASY-4ではALP強陽性細胞が多数認められ, SASY-1では少数の陽性細胞がみられた.しかし, Mg63, HOS, HT1080では陽性細胞はほとんど認められなかった.酵素化学的測定でもALP活性は, Saos-2, YR-2で非常に高く, 次いでSASY-4, SASY-1の順で, Mg63, HOSの活性は非常に弱くHT1080と同程度であった.各細胞株の上皮小体ホルモン (PTH) 応答性を検討したところ, YR-2とSaos-2ではPTH添加で細胞内cAMPの産生が著明に上昇し, SASY-1とSASY-4では軽度に上昇したが, 他の細胞株ではPTHを添加しても有意にcAMPの産生が促進されなかった.すべての細胞株が免疫組織化学的にI型コラーゲンを産生しており, 軟骨肉腫由来のSASY-1だけがII型コラーゲンも産生していた.通常の培養条件ではすべての細胞株がオステオカルシンを産生しなかったが, 1, 25 (OH) 2D3を添加するとMg63だけがオステオカルシンを産生した.以上の結果よりヒト骨肉腫細胞は細胞株により骨芽細胞の表現形質の発現状態が異なることが明らかとなった.今後, 種々の骨芽細胞の表現形質の発現状態と骨肉腫の予後や各種抗癌剤に対する応答性の相関を検討することが重要と考えられた.また, 軟骨肉腫由来の細胞を骨肉腫由来細胞と区別するにはII型コラーゲンの産生能が簡便な識別マーカーと考えられた.