本研究は, 再梗塞例を対象として, 前回梗塞から再梗塞までの期間に着目し, その長短に関連する要因を明らかにすることにより, 心筋梗塞における再梗塞発症に対する予防に資することを目的とした.対象は, 昭和56年1月から平成3年12.月までに昭和大学病院第三内科に再梗塞を発症して入院した, (1) 男性であること, (2) 前回梗塞から再梗塞までの期間が判明していること, の条件を満たす78例とした.これらの症例の前回梗塞から再梗塞までの期間の分布は, 平均67.0カ月, 標準偏差59.7カ月であり, 24カ月以内は23例, 25カ月以降60カ月以内は25例, 61カ月以降は30例であった.調査項目は, 性, 生年月日, 前回梗塞の年月日, 前回梗塞時の入院施設, 前回梗塞後の通院施設, 再梗塞の年月口, 仕事の有無, 血清総コレステロール値, 血清中性脂肪値, 肥満度, 高血圧の有無, 糖尿病の有無, 喫煙の有無, 高尿酸血症の有無および家族歴の有無である.解析方法として, 前記調査項目と前回梗塞から再梗塞までの期間との関連性は, CATDAP-02を用いて検討した.その結果, 前回梗塞から再梗塞までの期間に関連する要因は, 肥満度および血清総コレステロール値であった.肥満度は, +10%から+15%, 特に+13%において強い関連が認められ, 従来の基準である+20%では関連は弱かった.血清総コレステロール値は, 180mg/dlから200mg/dl, 特に180mg/dlにおいて強関連が認められ, 従来の基準である220mg/dlでは関連は認められなかった.なお, 血清中性脂肪値は, 80mg/dlにおいて関連が認められたが, 臨床的にかなり低い値であること, ならびに, 前後の値で連続的な関連は認められなかったことより, 今回確定するには至らなかった.これについてはさらに検討が必要であると考える.また, 喫煙, 家族歴, 糖尿病, 高血圧, 前回梗塞時年齢, 仕事および高尿酸血症には有意な関連は認められなかった.本研究の結果は, 再梗塞を発症した症例について, 前回梗塞から再梗塞までの期間に関連する要因を検討したものではあるが, 今後, 心筋梗塞患者に対しては, 肥満度および血清総コレステロール値を, 従来の基準より低い値で管理する必要性を示唆するものと考えられる.
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